スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
195 / 1,058

百九十五話 良く思わない者もいる

しおりを挟む
(暴走したモンスターに襲われた翌日にこんなことをしてて良いのか?)

人為的に暴走したレッドビートルに襲われてからも、アラッドとレイ嬢は日が暮れる手前までモンスターを狩り続け……着実にレベルアップを重ねた。

そして次の日……まだまだレイ嬢との狩りを続ける日にちはあるのだが、なんと数日前と同じく……アラッドは令嬢とデートをすることになった。

(まぁ、がっつり護衛はしてくれてるみたいだけどさ)

先日よりもガルシアたちの気配が強く感じられ、とても心強いとは思うが……だとしても、不安は全て消えるわけではない。

「アラッド、少し表情が暗い気がするが……大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫ですよ。ただ……先日の一件のせいで、街中を二人で歩いていることに不安を感じるといいますか」

いざとなれば、アラッドも全力でレイ嬢を守ろうと思っている。

ただ、それでも相手が殺しのプロとなれば……自分の全力がどこまで通じるか分からない、という不安がある。

「なるほど。確かに先日の一件は驚かされた……うん、本当に驚かされた」

レイ嬢としても暴走したモンスターと遭遇するのは初めてなので、いきなり飛んできたレッドビートルの突進には命の危機を感じた。

とはいえ、その衝撃よりも結局一人で暴走したレッドビートルをアラッドが一人で倒してしまったという内容の方が、レイ嬢としては衝撃が強かった。

(あのモンスターが、私を狙っていたかもしれないという可能性があるのは解る。アラッドは名前こそ貴族界隈で知られている方だが、殆ど社交場には出ていない)

堅苦しい空間が嫌いなアラッドは、本当に社交場に顔を出さない。
アラッド自身は、最低限顔は出そうかと思っているが……そう思ってからなんやかんやで一回も出席していない。

故に、父親であるフールは自慢げにアラッドの凄さを社交場で語るが、本人が殆ど社交場に出てこないこともあり……実際のところはどういった人物なのか、事実とは違う噂が飛び交っている。

(それを考えれば、アラッドが狙われる可能性は少ない……ただ、アラッドがパーティーに出席すれば、厄介な者たちに絡まれるかもしれないな)

父親であるフールがその凄さを社交場で話すが、実際にその凄さを目にした者は殆どいない。
その為、父親がわざと大袈裟に話している……なんて思っている者は少なくない。

アラッドに否定的な考え、思いを持つ者がいる一つの要因として……パーシブル家の四男であるドランクがアラッドのことについて質問されると、非常に否定的な答えを返す。

(そこまで悪いというか、他人を貶すのが好きなタイプとは思えないが……身内にこんな規格外がいれば、自分は負けてないと見栄を張る……もしくは否定したくなるものか)

レイ嬢の身内にも飛び抜けた実力、才を持つ者はいるが……レイ嬢もその者たちに負けない特別な力、そして飽くなき向上心がある。

ドランクも決して才がないわけではなく、向上心がない訳ではない。
寧ろ向上心は、同世代の中でトップクラスと言えるだろう。

だが……同じ世代に生まれた身内が、あまりにも化け物過ぎた。

「? レイ嬢、俺の顔に何か付いていますか」

「いや、何も付いていないぞ。少し考え込んでしまってな」

「そうですか……ところで、本日はどの様な店に行きますか?」

「……服を、見に行っても良いか」

「えぇ、勿論です」

前世の知識から、女の買い物は時間が掛かる。
それは分かっているが、精神年齢的に歳下であるレイ嬢からの頼みをアラッドが断る訳がなく、二人は先日のデートでは訪れなかった服屋へと向かった。

(……さて、とりあえずレイ嬢が気になる服を見つけるまで待つか)

訪れた服屋には男性物の服も当然あるが、アラッドは今のところ服が欲しいと思っていない。

現在の年齢を考えれば情けなくないが、今のところ私服なども母親であるアリサが主に選んでいた。
そして店に入ってから数十分後……ついにアラッドの仕事がやってきた。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...