上 下
189 / 992

百八十九話 手のひらで躍らせる

しおりを挟む
「見事な戦いぶりだった」

「ありがとうございます。ただ、レイ嬢も素手での戦いに慣れれば、あれぐらいの動きは直ぐに出来るようになりますよ」

ゴブリンとの戦いを観た限り、素手による戦いにおいても、並ではない才能を持っていると感じた。

身体能力は抜群に高いので、後は敵の攻撃を冷静に見極められればフォレストモンキーと戦っていたアラッドの様に、一切傷を負うことなく倒すことが出来る。

(仮に俺と同じぐらいのレベルになれば、身体能力はかなりえげつなくなるよな……身体強化のスキルとか使わずとも、正拳一発で終わらせそうだ)

アラッドもレベルが上がりにくい代わりに、レベルアップ時の恩恵が大きいことを考えれば、他者よりも同レベルであれば身体能力は上。

だが、レイ嬢の超人体質を考えると……いずれ身体能力では負けてもおかしくない、と思えた。

「ふむ、慣れか。やはりそこが重要なのだな」

「そうですね。どんなモンスターが相手でも……武器を使っていても、慣れれば……考えるより先に体が動く。的な感じになると思います」

「「「ッ!」」」

アラッドの言葉を聞いたバイアードやグラストを含む騎士たちは、全員大なり小なり表情に驚きが出ていた。

(まだ七歳という歳で、既にその意気に達しているのか……いや、常時それが行えるという雰囲気ではなさそうだが……いやはや、全くも恐ろしい)

お世辞ではなく、冗談抜きでバイアードはアラッドのことを心の底から良い意味で恐ろしいと感じた。

(アラッド様の経験値を考えれば……いざという場面で、咄嗟に体が正解に動いてもおかしくはない……おかしくはない、が……やはり凄いというか、圧倒的に飛び抜けていますね)

アラッドが毎日どれだけ濃密な訓練を積み、実戦を行っているのかを知っているからこそ、バイアードはアラッドが見栄を張った内容を話しているのではないと理解している。

その後の戦いもアラッドはメイン武器であるロングソードや、多彩な技がある糸を使わずに体術だけで遭遇するモンスターを倒し続けた。

遭遇したモンスターの中には勿論、ゴブリンやフォレストモンキーなどの人型以外もいたが、そんな相手とも戦い慣れているアラッドは慌てることなく、レイ嬢の手本になるような動きで全て撃破。
そしていつも通り、慣れた動作で解体まできっちり行う。

(いや~~~~~、流石アラッド様っすね。本当に慣れていらっしゃる)

レイ嬢の見本となる様に戦ったアラッドの動きにダイアは心底感心していた。

(多分っすけど、今日遭遇したモンスターは今まで戦ってきたことがあるんでしょうね)

騎士であるダイアはアラッドの護衛として普段は森の中に同行しないが、実際に目の前で戦うアラッドの様子を見て、そこは確信できた。

事実として、アラッドは本日出会ったモンスターは過去に倒したことがあった。
モンスターと戦い始めたばかりの時は、初めて出会うモンスターはなるべく全力で……速攻で倒していたが、今ではそれなりにレベルも上がり、命懸けの戦いにも慣れた。

といった感じである程度余裕があるので、最近では色々と試しながらも戦うことが多い。
普段は使わない大剣や双剣、槍などを使って戦う……もしくは糸とその他の武器を併用して扱い、相手を手のひらで躍らせるような戦いを行う。

相手の動きを見てから動くことも多いので、一度ゆっくり戦ったことがあるモンスターであれば、次にどういった動きをするのかある程度把握出来る。

(ッ!!?? なんだ、この感じ……)

ある程度モンスターと戦い続け、昼食を食べ終えてから数十分後……アラッドは明確に自分たちに向かって殺意を向けている存在に気付いた。

「アラッド様……」

「分かっています。どうやら……主? 的な存在の縄張りに入ったのかもしれませんね」

アラッドの言葉通り……かもしれないと思ったバイアードだが、周囲の木々に爪痕がないのに気付き、その可能性は低いと判断。

(主の様なモンスターがいるかどうかは分らぬが……この感じ、覚えがある)

バイアードが何かに気付いた瞬間、一体のモンスターが猛スピードでアラッドたちに近づいてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

処理中です...