スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
184 / 1,058

百八十四話 剣が選ぶ?

しおりを挟む
アラッドがレイ嬢に髪留めをプレゼントした後、二人はレナルトの武器屋と向かった。

デートの場所に武器屋とは、中々にアウトな場所かもしれないが……二人とも武器に感心があるので、全く問題はなかった。

寧ろ、今のレイ嬢はアラッドからプレゼントを貰ったことで、非常に上機嫌。
故にアラッドが何処に向かおうと、その態度が変わることはない……かもしれない。

そして通行人にレナルトに存在する有名どころの武器屋を教えてもらい、二人で武器屋巡り。

アラッドの愛剣は変わらず、フールから誕生日のプレゼントとして貰った鋼鉄の剛剣。
今でもその斬れ味が衰えることはないが、鋼鉄の剛剣はフールがアラッドに合うように、鍛冶師に特注で造ってもらった一品。

いずれ体格的に合わなくなる日が来てもおかしくない。

(今日、ここで買うのも悪くはない、か……だが、リンが造ってくれる武器も悪くはない……それを考えると、次の愛剣はリンが渾身の一作が出来上がるまで待つべきか?)

ハーフドワーフであるリンは、アラッドの狩りに同行する時以外は作ってもらった鍛冶場で何かしらの武器や防具を
使っている。

素材はアラッドが狩って倒すモンスターの牙や爪、骨があり……鉱石に関してはアラッドが定期的に購入しているので問題無い。
リンが造り上げた武器はアラッドではなく、同じ奴隷のメンバーであるガルシアやレオナも使用している。

ただ、それでも今日武器屋を見て回り、気になる武器があれば買おうと思っている。
それは事実だった。

(ここには、なさそうだな)

しかし、アラッドが気に入る武器などそう簡単に見つかるものではない。

男女の子供が店に入ってきた時点で、店員……店主としては冷やかしかと思ってしまう。
それでもアラッドとレイ嬢が身に着けている服装を見て、貴族の令息や令嬢だと見抜けぬほど目は腐っていない。

なので二人が落胆するような眼をしても、怒鳴って追い返すことは出来ない。

二人としてはなるべく失礼な態度を取らない様に心がけているつもりだが、ところどころで落胆の目が出てしまう。
そして客商売を何年もしていれば、そういった目の変化で客がどういった心境なのか気付いてしまう。

「アラッド、中々お目当ての武器は見つからないか?」

「そうですね。まぁ、自分の体がまだまだ大きくないので、体に見合う武器がないというのが正しいですが」

アラッドが視た武器たちが、全て宜しくない出来だったというわけではない。
ただ単純にアラッドの今すぐにでも買いたいという直感が動くことはなかった。

しかし二人が五店舗目の店を訪れると……樽の中に入った一つの剣がアラッドの目に留まった。

「……」

何か驚きの言葉を発することはなく、無言で剣が入った樽へと近づき……一本の剣を手に取った。

「ほぅ……坊主、中々腕力があるな」

「ど、どうも」

「先に言っておくが、買う気がないならその剣に自分の魔力を込めるなよ」

「……人の魔力を餌とする魔剣、ということですか?」

カウンターの中に座る店主の言葉通り、剣に魔力は込めない。
ただ、魔力を込めればどうなるのかは気になる。

「餌って表現は違うな……その剣が、魔力を込めた者を主と認めるんだよ」

「なるほど。であれば、迂闊に魔力を込められませんね」

「まぁ、そんな簡単な話じゃないんだけどな」

「それは……いったいどういうことですか」

店主の話が気になり、レイ嬢も店に置かれてる武器を眺めるのを一旦止め、店主の話を集中して聞き始めた。

「そいつは、持ち主を選ぶ剣なんだよ。ダンジョンの宝箱から手に入った品だ。俺が冒険者をやってた時代に手に入れたんだが、仲間の剣士はどうやら持ち主にふさわしくないって認定されちまったんでな」

「店を構えるようになって、相応しい持ち主が現れるまで持っている……ということで合っていますか」

「あぁ、その通りだよ。冷やかしが嫌なんで……買う前に、魔力を込められるのが試したいなら、先に金貨十枚を払ってもらうぜ」

ちょっと高くないか?
と思ったアラッドだが、それでも興味がある一品ということもあり、素直に店主に金貨十枚を渡した。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

処理中です...