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百八十話 男は待つもの
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(はぁ~~~~……なあんでこんなことになったんだ?)
レイ嬢に複数の敵と戦う時の動き方を動きで教え、その後も前日と同じく自分の力で倒せそうなモンスターと遭遇すれば、己の力だけで倒す。
レイ嬢が勝てそうなモンスターであれば、レイ嬢に譲る。
自分たちだけでは倒すのに力量不足であろうモンスターと遭遇してしまったら、大人達に任せる。
そんな時間を送った日の翌日、アラッドは……レイ嬢と二人でレナルトを観光することになった。
(やっぱり、バイアード様としてはレイ嬢と俺を婚約させたいのか? 騎士の道に進むか、冒険者の道に進むかは俺の自由って言ってくれてるけど、本音としては俺に騎士の道に進んで欲しいってところか)
それとこれとは関係無いのだが、「どちらの道に進むのも君の意志次第だ」なんてことを言っておきながら、それでも心の中では「是非ともアラッド君には騎士の道に進んで欲しいものだ」と思っているのは事実だった。
ただ、今回のデートに関してはバイアードが考えていたのではなく、バイアードの息子であるイグリシアス家の現当主が考えていたプランだった。
いくら二人共訓練やモンスターとの実戦を好んでいるとはいえ、子供なのだからゆっくり過ごす時間も必要だ。
というのは建前で、娘のレイ嬢とパーシブル家の三男であるアラッドが婚約してほしい、という思いがあった。
(まさかこんな服を用意していたとは……父さんと母さんもこうなることが分かっていたのか?)
アラッドは普段通りの服装ではなく、いかにも貴族の令息が着るような黒色ベースの服を着ていた。
ただ、アラッドが派手過ぎるのは嫌いという思いを尊重しており、派手過ぎず……しかし高級感を感じさせる。
(父さんとしても……やっぱり俺が良いところの令嬢と婚約する方が良いと思ってるのか……いや、侯爵家の当主なんだから、そう考えるのは当然か)
貴族の一員であるならば、そう考えるのも仕方ない。
なんて一人で納得しようとしているアラッドだが、父親であるフールは全くそんなことは考えていなかった。
ただ単に、特別な服に関してはもしかしたらレイ嬢と二人っきりでデートをする機会があるかもしれないと思い、そんな機会に遭遇した時に恥をかかない為にグラストに渡していたのだ。
この場では確認しようがないが、断じてフールはアラッドとレイ嬢を絶対にくっつけようとは考えていない。
(さて、俺は後何分待てばいいことやら)
二人とも同じ宿に泊まっているので、一緒に出ればいいのだが……それではデートらしくないという事になり、アラッドが先にカップルが待ち合わせに選びやすい場所へと先に到着。
そしてレイ嬢が来るまで待つという流れになった。
この世界では前世の様に待ち合わせの時間を潰せる道具がなく、話す相手もいないので非常に退屈な時間が続く。
だが、そうこう考えている間にようやくレイ嬢がやって来た。
「すまない、アラッド。待たせたな」
「いえ、そんなことありませんよ。レイ嬢」
現れたレイ嬢は紅の髪と同じく、赤をベースとした服を着ており、下はスカートとなっており普段よりも女の子らしさが増していた。
(人は服装で印象が変わると言うが……これは、凄いな)
まだ、現段階ではアラッドがレイ嬢の姿や容姿にときめくことはない。
しかし……目の前のレイ嬢を見て、思わず綺麗だという感想が生まれた。
(普段も美しさがあるが、こういった服を着ると別の美しさが出てくるというか……うん、とにかく綺麗だ)
色々と考え込み、無言の時間が生まれてしまったことに気付いたアラッドは、慌てて礼儀として思った感想を言葉にした。
「レイ嬢、とても似合っていますね。あなたの髪と同じで……いつも綺麗ですが、今は更にその美しさに磨きがかかっています」
「そ、そうか……あ、ありがとう。えっと、その……アラッドも、普段と違う強さが溢れている、ぞ」
レイ嬢は今まで似た様な言葉を多く受け取ってきたが、その中でも数少ない……真の言葉をアラッドから受け取った感じ、思わず頬が赤くなってしまった。
「ふふ、有難うございます」
アラッドもお褒めの言葉を貰い、二人はひとまず賑やかな場所に向かって歩き出した。
レイ嬢に複数の敵と戦う時の動き方を動きで教え、その後も前日と同じく自分の力で倒せそうなモンスターと遭遇すれば、己の力だけで倒す。
レイ嬢が勝てそうなモンスターであれば、レイ嬢に譲る。
自分たちだけでは倒すのに力量不足であろうモンスターと遭遇してしまったら、大人達に任せる。
そんな時間を送った日の翌日、アラッドは……レイ嬢と二人でレナルトを観光することになった。
(やっぱり、バイアード様としてはレイ嬢と俺を婚約させたいのか? 騎士の道に進むか、冒険者の道に進むかは俺の自由って言ってくれてるけど、本音としては俺に騎士の道に進んで欲しいってところか)
それとこれとは関係無いのだが、「どちらの道に進むのも君の意志次第だ」なんてことを言っておきながら、それでも心の中では「是非ともアラッド君には騎士の道に進んで欲しいものだ」と思っているのは事実だった。
ただ、今回のデートに関してはバイアードが考えていたのではなく、バイアードの息子であるイグリシアス家の現当主が考えていたプランだった。
いくら二人共訓練やモンスターとの実戦を好んでいるとはいえ、子供なのだからゆっくり過ごす時間も必要だ。
というのは建前で、娘のレイ嬢とパーシブル家の三男であるアラッドが婚約してほしい、という思いがあった。
(まさかこんな服を用意していたとは……父さんと母さんもこうなることが分かっていたのか?)
アラッドは普段通りの服装ではなく、いかにも貴族の令息が着るような黒色ベースの服を着ていた。
ただ、アラッドが派手過ぎるのは嫌いという思いを尊重しており、派手過ぎず……しかし高級感を感じさせる。
(父さんとしても……やっぱり俺が良いところの令嬢と婚約する方が良いと思ってるのか……いや、侯爵家の当主なんだから、そう考えるのは当然か)
貴族の一員であるならば、そう考えるのも仕方ない。
なんて一人で納得しようとしているアラッドだが、父親であるフールは全くそんなことは考えていなかった。
ただ単に、特別な服に関してはもしかしたらレイ嬢と二人っきりでデートをする機会があるかもしれないと思い、そんな機会に遭遇した時に恥をかかない為にグラストに渡していたのだ。
この場では確認しようがないが、断じてフールはアラッドとレイ嬢を絶対にくっつけようとは考えていない。
(さて、俺は後何分待てばいいことやら)
二人とも同じ宿に泊まっているので、一緒に出ればいいのだが……それではデートらしくないという事になり、アラッドが先にカップルが待ち合わせに選びやすい場所へと先に到着。
そしてレイ嬢が来るまで待つという流れになった。
この世界では前世の様に待ち合わせの時間を潰せる道具がなく、話す相手もいないので非常に退屈な時間が続く。
だが、そうこう考えている間にようやくレイ嬢がやって来た。
「すまない、アラッド。待たせたな」
「いえ、そんなことありませんよ。レイ嬢」
現れたレイ嬢は紅の髪と同じく、赤をベースとした服を着ており、下はスカートとなっており普段よりも女の子らしさが増していた。
(人は服装で印象が変わると言うが……これは、凄いな)
まだ、現段階ではアラッドがレイ嬢の姿や容姿にときめくことはない。
しかし……目の前のレイ嬢を見て、思わず綺麗だという感想が生まれた。
(普段も美しさがあるが、こういった服を着ると別の美しさが出てくるというか……うん、とにかく綺麗だ)
色々と考え込み、無言の時間が生まれてしまったことに気付いたアラッドは、慌てて礼儀として思った感想を言葉にした。
「レイ嬢、とても似合っていますね。あなたの髪と同じで……いつも綺麗ですが、今は更にその美しさに磨きがかかっています」
「そ、そうか……あ、ありがとう。えっと、その……アラッドも、普段と違う強さが溢れている、ぞ」
レイ嬢は今まで似た様な言葉を多く受け取ってきたが、その中でも数少ない……真の言葉をアラッドから受け取った感じ、思わず頬が赤くなってしまった。
「ふふ、有難うございます」
アラッドもお褒めの言葉を貰い、二人はひとまず賑やかな場所に向かって歩き出した。
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