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百七十五話 どう倒す?

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久しぶりにレイ嬢とバイアードに再会した翌日、さっそく予定通り朝食を食べ終えたら街を出て狩りへと向かった。

「……レイ嬢、緊張しているのか?」

「う、うむ。まだ……あまり慣れていないのでな」

「そうか。何かあれば、直ぐに俺が前に出る。だから、緊張しなくても大丈夫だ。クロもいるから、よっぽど強い敵が現れなければ、なんとかなる」

何かあれば、直ぐに俺が助ける。
どう考えても女子を落とす様なセリフであり、二人の後ろから付いて歩くグラストたちも、まさかこの展開は!? と、少し期待していた。

だが、アラッドには全くそんな気持ちはなく、感覚としてはバークたちが傍にいる感覚なので、ついそんな言葉を口にしてしまった。

「……そうか。それにしても……羨ましいな」

レイ嬢は羨ましそうな目でアラッドの隣を歩くクロを眺めた。

先日、クロという存在に惹かれたレイ嬢は満足するまでモフモフし続けた。
触り方が丁寧だったこともあり、クロはレイ嬢が満足するまでされるがままの状態を保った。

「申し訳ないが、先日伝えた通りクロとの出合いは……それなりに珍しいものだった。一般的なテイマーがモンスターを従魔にする方法とは違うので、あまり参考にはならない」

以前、お茶会でも伝えたが念のためにもう一度伝える。

アラッドとクロの出会いが珍しい状況と言うのは、レイ嬢もなんとなく理解出来ている。
そしてその内容を知っているバイアードも、孫娘が従魔を欲しいと思ってもその方法はリスクが高いので、真似させられない。

「ガウッ!!!」

「そうだな。さっそく現れたみたいだな」

ぞろぞろと現れたのはゴブリンとその上位種であるゴブリンナイトとゴブリンメイジだった。

(……ナイトとメイジだと、そこまで大きな体格差はないけど……いや、やっぱろDランクという点を考えれば、俺が相手をした方が良いか)

レイ嬢の力が、身体能力が一級品だということは理解している。
だが、それでもまだ経験数は多くない。

ゴブリンは狡猾な一面もあるので、上位種は自分が相手しようと決めた。

「レイ嬢。ゴブリンナイトとメイジは俺が相手をする。他のゴブリンは任せても構わないか?」

「あぁ、任せてくれ」

「シーリア、レイ嬢の援護を頼む」

「は、はい! かしこまりました!!」

クロやガルシアに頼むという選択肢もあったが、二人はあまりサポート役に向いていない。
今回はアラッドとレイ嬢がモンスターと戦うのがメイン。

というわけで、サポート役に向いているシーリアにレイ嬢の補佐を命じた。

上位種以外のゴブリンは六体と数は多いが、それでも碌な身体強化を使えないゴブリンなど、レイ嬢の一撃を食らえば確実に体が陥没してしまう。

そしてレイ嬢の隙を狙っているゴブリンをシーリアは威力が低い風の弾丸で体を弾き、殺さない程度のダメージを与える。

(さて……俺はどう戦えば良いんだろうな)

通常種を飛び越え、ナイトとメイジの前に着地したアラッドは目の前の二体をどう倒せば良いのか迷っていた。

レイ嬢の見本となる様な戦い方をすれば良いのか、それとも万が一が起こる前に瞬殺すれば良いのか……あれこれ考えている内に、ゴブリンナイトがアラッドのことを珍しく嘗めてかかることなく全力で殺しにいった。

(珍しいな。ゴブリンとかは結構俺が相手だと余裕そうな表情で殺しに来るんだが)

いつものゴブリンとちょっと違うな。
なんて考えながら全力の斬撃を鋼鉄の剛剣で受け止める。

当然、その一撃で終わる訳がなく、ゴブリンナイトは何度も何度もアラッドを本気で殺すつもりで斬りかかった。

(……意図してるのか知らないけど、もし意図してその顔ができて……気迫を出せてるなら凄いな)

アラッドは冷静に戦況を把握しており、後ろでゴブリンメイジが攻撃魔法の詠唱を行っている事に気付いていた。

そしてメイジがファイヤーボールを放った瞬間にナイトは射撃線上から離れ、火球はアラッドに飛んできた。

(森の中で火魔法を使うのは止めてほしいもんだ)

ロングソードに魔力を纏い、アラッドは飛んできたファイヤーボールを弾き返した。

「ギギャッ!?」

弾き返すという選択肢を予想していなかったメイジは、顔面にモロに受け……そのまま後ろにぶっ倒れた。

そして仲間がまさかの倒され方をして戸惑っている隙を狙い、首をロングソードで貫いた。

「レイ嬢たちは……どうやら、さすがにゴブリンぐらいじゃ大した経験にならないか」

後ろを振り返ると、既に六体のゴブリンは殲滅されていた。
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