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百七十二話 口を出すべきではない。それは分かっている
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「さぁ、やろうか!!」
「はい、やりましょう」
レイ嬢のテンションは非常に高いが、対するアラッドはいたって冷静に対応。
(……とりあえず前と同じで、ロングソードでいっか)
冒険者ギルドの訓練場に置いてある子供用の木剣を取り出し、前回と同じように構え……いざ尋常に勝負。
審判はイグリシアス家の騎士が務めており、危ないと思ったら即座に止めようと考えている。
騎士の家系に仕える騎士は当然ぼんくらではなく、最初からアラッドに違和感を感じており……模擬戦が始まると直ぐにその違和感が正しいと確信した。
(レイお嬢様とあそこまで対等に斬り合えるとは……パーシブル家の三男の……アラッド様も子供ながらに圧倒的な身体能力を持っているのか)
レイ嬢とは中身が違うが、騎士が考えていることはあながち間違いではない。
そして前回とは少し違い、身体能力に関しては一気に全開まで上げて斬りかかるレイ嬢。
アラッドもレイ嬢の本気はおおよそこれぐらい、という目安があったので初激で思いっきり吹き飛ばされることはなかった。
剣技スキルのスラッシュや剣圧、バッシュなどは使わずに純粋な身体能力と剣技の腕前だけでぶつかり合う二人。
レイ嬢は自慢の身体能力の高さを生かし、一撃一撃を緩めることなく全力で斬り潰そうとする。
相手によっては、もう少し力を抜いてスピード重視に変えた方が良いかもしれない……なんてことを考える頭は持っている。
ただ、自分よりも確実に強いと解っているアラッドを相手に小手先の技を考える余裕はなく、全ての斬撃を一撃必殺にするつもりで動き続ける。
(……これはどう考えても、バークやダイアよりも強いな)
年齢だけならアラッドの数少ない友人である二人の方が上だが、身体能力の高さはあっさりと上をいかれていた。
しかし体力が回復したとはいえ、万全の状態ではない。
本気で動き続ければ体力は直ぐに消耗し、身体強化のスキルを使用し続ければ魔力は減っていく。
アラッドは的確にレイ嬢の斬撃を防ぎ、受け流し……躱し続けた。
最後にベストなタイミングでレイ嬢の喉元に剣先を突き付け、模擬戦を終わらせた。
「ッ……ふぅーーーー。また私の負けだな」
「今のレイ嬢は体力が回復したとはいえ、万全な状態ではありません。それに対して、俺は今戦い始めたばかりです」
「慰めは必要ない。例え万全な状態であったとしても、まだまだアラッドに勝てるイメージは浮かばない。もう一度戦って、それが良く分かった」
「……どうも」
模擬戦といえど、負ければ悔しい。
バイアードやアラッドといった明らかな格上との戦いであったとしても、レイ嬢の心には確かな悔しいという思いが溢れる。
だが、レイ嬢にはその思いを受け入れて飲み込める強さがあった。
「……素晴らしいな」
二人の模擬戦を初めて観戦していたバイアードは、無意識の内に組んでいた腕の力を強めていた。
(あれがまだ十二もなっていない子供の実力か……いかんな。気持ちが昂ってしまう。ああいった才気溢れる者を見てしまうと……後十年、二十年遅く生まれていればと思ってしまうな)
バイアードは肉体的にはもう、自分は全盛期を過ぎていると自覚している。
だからこそ、もっと自分が若ければ数年後……十年後に全盛期が来るかもしれない者たち全力で戦えたかもしれない。
と、いつも思ってしまう。
ただ……アラッドの実力はバイアードにそれ以上の衝撃を与えていた。
(加えて…………この感情は、絶対に抑えなければならないな。非常に惜しいとは思うが、彼の人生は……道は、彼が決めるべきもの。私の様な老騎士や親が口を出すべきではない)
バイアードは自分の立場を解っているからこそ、不用意にアラッドに対して騎士団に来ないか……とは言えない。
しかしその気持ちは、実際にアラッドの模擬戦の光景を見て爆発的に燃え上がっていた。
「はい、やりましょう」
レイ嬢のテンションは非常に高いが、対するアラッドはいたって冷静に対応。
(……とりあえず前と同じで、ロングソードでいっか)
冒険者ギルドの訓練場に置いてある子供用の木剣を取り出し、前回と同じように構え……いざ尋常に勝負。
審判はイグリシアス家の騎士が務めており、危ないと思ったら即座に止めようと考えている。
騎士の家系に仕える騎士は当然ぼんくらではなく、最初からアラッドに違和感を感じており……模擬戦が始まると直ぐにその違和感が正しいと確信した。
(レイお嬢様とあそこまで対等に斬り合えるとは……パーシブル家の三男の……アラッド様も子供ながらに圧倒的な身体能力を持っているのか)
レイ嬢とは中身が違うが、騎士が考えていることはあながち間違いではない。
そして前回とは少し違い、身体能力に関しては一気に全開まで上げて斬りかかるレイ嬢。
アラッドもレイ嬢の本気はおおよそこれぐらい、という目安があったので初激で思いっきり吹き飛ばされることはなかった。
剣技スキルのスラッシュや剣圧、バッシュなどは使わずに純粋な身体能力と剣技の腕前だけでぶつかり合う二人。
レイ嬢は自慢の身体能力の高さを生かし、一撃一撃を緩めることなく全力で斬り潰そうとする。
相手によっては、もう少し力を抜いてスピード重視に変えた方が良いかもしれない……なんてことを考える頭は持っている。
ただ、自分よりも確実に強いと解っているアラッドを相手に小手先の技を考える余裕はなく、全ての斬撃を一撃必殺にするつもりで動き続ける。
(……これはどう考えても、バークやダイアよりも強いな)
年齢だけならアラッドの数少ない友人である二人の方が上だが、身体能力の高さはあっさりと上をいかれていた。
しかし体力が回復したとはいえ、万全の状態ではない。
本気で動き続ければ体力は直ぐに消耗し、身体強化のスキルを使用し続ければ魔力は減っていく。
アラッドは的確にレイ嬢の斬撃を防ぎ、受け流し……躱し続けた。
最後にベストなタイミングでレイ嬢の喉元に剣先を突き付け、模擬戦を終わらせた。
「ッ……ふぅーーーー。また私の負けだな」
「今のレイ嬢は体力が回復したとはいえ、万全な状態ではありません。それに対して、俺は今戦い始めたばかりです」
「慰めは必要ない。例え万全な状態であったとしても、まだまだアラッドに勝てるイメージは浮かばない。もう一度戦って、それが良く分かった」
「……どうも」
模擬戦といえど、負ければ悔しい。
バイアードやアラッドといった明らかな格上との戦いであったとしても、レイ嬢の心には確かな悔しいという思いが溢れる。
だが、レイ嬢にはその思いを受け入れて飲み込める強さがあった。
「……素晴らしいな」
二人の模擬戦を初めて観戦していたバイアードは、無意識の内に組んでいた腕の力を強めていた。
(あれがまだ十二もなっていない子供の実力か……いかんな。気持ちが昂ってしまう。ああいった才気溢れる者を見てしまうと……後十年、二十年遅く生まれていればと思ってしまうな)
バイアードは肉体的にはもう、自分は全盛期を過ぎていると自覚している。
だからこそ、もっと自分が若ければ数年後……十年後に全盛期が来るかもしれない者たち全力で戦えたかもしれない。
と、いつも思ってしまう。
ただ……アラッドの実力はバイアードにそれ以上の衝撃を与えていた。
(加えて…………この感情は、絶対に抑えなければならないな。非常に惜しいとは思うが、彼の人生は……道は、彼が決めるべきもの。私の様な老騎士や親が口を出すべきではない)
バイアードは自分の立場を解っているからこそ、不用意にアラッドに対して騎士団に来ないか……とは言えない。
しかしその気持ちは、実際にアラッドの模擬戦の光景を見て爆発的に燃え上がっていた。
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