スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
147 / 1,058

百四十七話 本人の意図は?

しおりを挟む
「……………………ふぅーーーー」

「だ、大丈夫ですか。アラッド様」

「えぇ、大丈夫です。ただ……俺にとっては面倒な内容だったので、少し気が重いです」

手紙にはざっくり説明すると、今度一緒にモンスターを狩りに行きましょう……という内容だった。

(レイ嬢らしい内容といえば内容だな)

ただ、手紙にはレイだけではなく……レイとっては祖父であり、フールにとっては大先輩にあたる人物、バイアード・イグリシアも一緒に狩りができるのであれば参加すると書かれていた。

(イグリシア家は父さん的には縁談を受けてほしい家。そしてバイアード・イグリシアさんは父さんが騎士時代の大先輩……これはあれだよな、どう考えても断ったらダメなお誘いだよな)

レイが意図してバイアードに参加してほしいと頼んだのではなく、レイがアラッドに手紙を送ると聞き、いったいどんな内容を送るのかと尋ねた。
そして狩りを行うのであれば、自分も参加したいと提案。

祖父と仲が良いレイはそれを悩むことなく承諾。

この時、またアラッドと出会ってみたいと思ったバイアードにアラッドの逃げ道を塞ごう……なんて考えは一ミリも無かった。

ただ、それはアラッドもなんとなくではあるが分かっていた。

(二人ともそんなことを考える性格じゃないからな……偶々だよな。ただ……日にちは指定していないみたいだな)

レイからの手紙には、いつ一緒に狩りを行いとは書かれていなかった。
いつ頃までには、という言葉も書かれていない。

アホな考えではあるが、何年先でも構わない。
そうすることも解釈できる。

だが、そんなことが出来ないことはアラッドも重々承知。

(絶対に一週間以内返事を書いて、仮を行う日は……最低でも二か月後以内じゃないと駄目か)

もうアラッドの頭では断るという選択肢が消えている。
毎日どのような予定を送るかは決めているが、特別な予定はない。

日課の狩りや錬金術の鍛錬やチェス、リバーシのプレミア品制作が二日や三日出来なくなったとしても、なんら支障はない。

(この日に指定……特にオークションが開催される前の日を指定されなくて良かった。できればこのままワクワク気分でオークションを楽しみたい。いや、待てよ………結局レイ嬢からの誘いは受けなければならないのだし、後回しにする方が辛いのでは?)

どちらにせよ、レイの誘いをあと十日の間に消化するのを不可能。

「あ、アラッド様。物凄く悩ましい表情になっていますが……もしや、縁談なのですか?」

従者たちはアラッドが他家の令嬢との縁談に全く乗り気でないことを知っているので、従者はアラッドの表情からもしや手紙には縁談について書かれているのかと推測。

「そういった内容ではない……ん? もしかしたらそれに近いかもしれない、かもしれません」

レイはイグリシア家がアラッドの婚約者としてどうですかと提案してきた令嬢。
そんな相手から一緒に狩りをしないかというお誘い。

これは仲を深めさせて、上手く縁談に持ち込もうという作戦……といった感じに解釈することも出来る。

(もしかしたら令嬢のご両親が誘いの手紙でも送ったらどうかと提案してきたのか? レイ嬢はあまり深い意図でこの手紙を書いたとは思えないし……だめだ、考え過ぎると頭が痛くなるな)

現状ではいったいどのような考えでレイがアラッド宛てに手紙を書いたのかは分からない。

アラッドは送られてきた手紙について深く考えるのを止めた。

「えっと、お返事のお手紙を用意しましょうか?」

「……お願いします」

今日は錬金術の鍛錬に時間を使うつもりだったが、後回しにするのは良くないと判断し、今日中に書いてしまおうと決めた。

そして普段手紙など書かないアラッドは数時間ほどしっかり言葉を選び、ようやく手紙を書き終えた。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...