143 / 1,023
百四十三話 それはそれで恐ろしい
しおりを挟む
「な、なぁ……なんか、サイクロプスの動きが鈍くなってないか?」
「た、確かにそうだな」
アラッドとクロがサイクロプスとの戦闘を始めてから約三分ほどが経った。
幸いにも他のモンスターが乱入することはなく、アラッドとクロはサイクロプスとの戦いに集中出来ている。
(やっぱりこうなるよな)
ある程度戦い続ければ、目の前の様な光景になる。
それは戦い始めてから直ぐに予測できた。
サイクロプスもモンスターなので、人よりもスタミナの量は遥かに多い。
だが、血の量には当然限界がある。
(判断速度が速くても、モンスターがそこまで気を付けて戦う訳ないか)
出血の量が多くなればなるほど、動きは当然鈍くなる。
「あ、アラッド様。もしかしてこうなることが解ってて戦っていたんですか」
兵士の一人が戦闘中だと分かっていながら、アラッドに真相を尋ねた。
「はい。血を流せば流すほど動きが鈍くなる……そして判断速度も遅くなって、まともに食らう攻撃も多くなる」
戦いが始まってから全く表情を崩さなかったアラッドの考えがようやく分かった。
兵士たちも死線を一つや二つ越えてきたので、血を流せば思ったように動けなくなる感覚は知っている。
だが、それ利用した作戦を実行しようとは中々思えない。
(Cランクのモンスターを相手にそこを考えて戦うのか……やっぱり頭の出来が違うな。そりゃブラックウルフのクロが一緒に戦ってるんだから、ある程度やりやすいのかもしれないけど……動きが鈍くなり出してから、アラッド様の糸も決まりやすくなってきたよな)
戦い始めた頃は少しでも体に違和感があれば全力で引き千切っていたが、今では脚に糸を引っかければ顔面から地面に転び、腕に引っかければ直ぐには振りほどけず、クロがクリティカルヒットを与える。
高速治癒の効果は未だに機能しているが、いくら高性能スキルである高速治癒であっても、失った血までは回復することは出来ない。
「血液制作、なんてスキルがあったらこんな戦法は取れませんけど、サイクロプスがそんなスキルを持っているとは思えませんし……多分、そんなスキルはヴァンパイアとかじゃないと持ってないかと」
「そう、ですね…………そういったスキルが存在するとは思いますが、特定のモンスターしか持ってなさそうですね」
実際に魔力を消費して血液をつくりだすというスキルは存在するが、兵士の言う通り特定のモンスターしか持っていない。
「そろそろ終わりそうですね……よっと」
「ッ!!?? グ、ガ……」
アラッドはマリオネットという技を使い、サイクロプスの左腕を操って自身の顔面を殴らせた。
「ガゥッ!!!!!」
おそらく主人であるアラッドが何かしたのだろうと判断し。大きな隙を逃さず魔力を纏った爪でサイクロプスの首を切断。
頭が無くなった体は力なく倒れ、戦闘は終了した。
「よし、早速解体するか」
「あ、アラッド様。あの……いったい、最後何をしたんですか」
「最後のって言うと……サイクロプスの腕を操ったやつですか?」
「そ、そうです。それです!! って、操ったんですか!!??」
アラッドから飛び出てきた言葉に思わず三人とも驚き固まった。
「ち、力の流れをコントロールしたとか、ではなく?」
「はい、文字通り操りました。マリオネットという技です。そりゃ達人みたいに相手の力をコントロールして返すなんて技術は将来的に出来るようになりたいと思ってますけど、今はまだそんなことできませんよ」
相手の力をコントロールし、そのまま敵に返す。
それはそれで恐ろしい技術だが、兵士たちにとっては敵の体を操るアラッドのマリオネットという技も十分に恐ろしいと感じた。
(最初から使わなかったのを考えると、全快の相手には使えないのかもしれないが……いやはや、糸というスキルは本当に恐ろしいな)
そのスキルを自裁に操るアラッドの力量に感服しながら、兵士たちはクロに周囲の監視を任せて解体を手伝い始めた。
「た、確かにそうだな」
アラッドとクロがサイクロプスとの戦闘を始めてから約三分ほどが経った。
幸いにも他のモンスターが乱入することはなく、アラッドとクロはサイクロプスとの戦いに集中出来ている。
(やっぱりこうなるよな)
ある程度戦い続ければ、目の前の様な光景になる。
それは戦い始めてから直ぐに予測できた。
サイクロプスもモンスターなので、人よりもスタミナの量は遥かに多い。
だが、血の量には当然限界がある。
(判断速度が速くても、モンスターがそこまで気を付けて戦う訳ないか)
出血の量が多くなればなるほど、動きは当然鈍くなる。
「あ、アラッド様。もしかしてこうなることが解ってて戦っていたんですか」
兵士の一人が戦闘中だと分かっていながら、アラッドに真相を尋ねた。
「はい。血を流せば流すほど動きが鈍くなる……そして判断速度も遅くなって、まともに食らう攻撃も多くなる」
戦いが始まってから全く表情を崩さなかったアラッドの考えがようやく分かった。
兵士たちも死線を一つや二つ越えてきたので、血を流せば思ったように動けなくなる感覚は知っている。
だが、それ利用した作戦を実行しようとは中々思えない。
(Cランクのモンスターを相手にそこを考えて戦うのか……やっぱり頭の出来が違うな。そりゃブラックウルフのクロが一緒に戦ってるんだから、ある程度やりやすいのかもしれないけど……動きが鈍くなり出してから、アラッド様の糸も決まりやすくなってきたよな)
戦い始めた頃は少しでも体に違和感があれば全力で引き千切っていたが、今では脚に糸を引っかければ顔面から地面に転び、腕に引っかければ直ぐには振りほどけず、クロがクリティカルヒットを与える。
高速治癒の効果は未だに機能しているが、いくら高性能スキルである高速治癒であっても、失った血までは回復することは出来ない。
「血液制作、なんてスキルがあったらこんな戦法は取れませんけど、サイクロプスがそんなスキルを持っているとは思えませんし……多分、そんなスキルはヴァンパイアとかじゃないと持ってないかと」
「そう、ですね…………そういったスキルが存在するとは思いますが、特定のモンスターしか持ってなさそうですね」
実際に魔力を消費して血液をつくりだすというスキルは存在するが、兵士の言う通り特定のモンスターしか持っていない。
「そろそろ終わりそうですね……よっと」
「ッ!!?? グ、ガ……」
アラッドはマリオネットという技を使い、サイクロプスの左腕を操って自身の顔面を殴らせた。
「ガゥッ!!!!!」
おそらく主人であるアラッドが何かしたのだろうと判断し。大きな隙を逃さず魔力を纏った爪でサイクロプスの首を切断。
頭が無くなった体は力なく倒れ、戦闘は終了した。
「よし、早速解体するか」
「あ、アラッド様。あの……いったい、最後何をしたんですか」
「最後のって言うと……サイクロプスの腕を操ったやつですか?」
「そ、そうです。それです!! って、操ったんですか!!??」
アラッドから飛び出てきた言葉に思わず三人とも驚き固まった。
「ち、力の流れをコントロールしたとか、ではなく?」
「はい、文字通り操りました。マリオネットという技です。そりゃ達人みたいに相手の力をコントロールして返すなんて技術は将来的に出来るようになりたいと思ってますけど、今はまだそんなことできませんよ」
相手の力をコントロールし、そのまま敵に返す。
それはそれで恐ろしい技術だが、兵士たちにとっては敵の体を操るアラッドのマリオネットという技も十分に恐ろしいと感じた。
(最初から使わなかったのを考えると、全快の相手には使えないのかもしれないが……いやはや、糸というスキルは本当に恐ろしいな)
そのスキルを自裁に操るアラッドの力量に感服しながら、兵士たちはクロに周囲の監視を任せて解体を手伝い始めた。
240
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する
清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。
たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。
神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。
悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる