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百四十話 再び連行
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「さぁ、ゆっくり話してちょうだい」
「わ、分かりました」
アリサにお茶会で何が起こったか、どんな令嬢がいたのか。
それらについて色々と話した後、今度は姉であるルリナに連行されたアラッド。
まだ夕食の時間まで時間はあるので構わない。
構わないのだが、まさかルリナにまでお茶会について内容を尋ねられるとは予想していなかった。
(ルリナ姉さんも女の子だし、やっぱり恋バナは好きなんだな)
その通り。
今のところ気になっている令息がいないルリナだが、それでも恋バナは楽しいと感じるタイプなので、令嬢同士のそういった会話も問題無い。
そして弟の恋愛事情など、当然気になる。
「なるほどね……随分と特殊なお茶会だったみたいね」
「初めてのお茶会だったから、他がどういった内容なのかは分からないけど、多分その通りなんだと思います」
先日のあれが、初めてのお茶会だったという言葉に嘘はない。
それはルリナも知っている。
(お茶会で模擬戦が行われるなんて、一度も聞いたことがないわ)
探せば同じ例があるかもしれないが、少なくともルリナは全く聞いたことがない。
「それで、気になる子はいたの?」
「特にいませんでした」
もう全く隠すことなく、ストレートに言葉にした。
「え、嘘でしょ。アラッドが参加した令嬢たちはこう……選りすぐりの令嬢たちでしょ」
言葉に迷ったが、ルリナの考えは一ミリも間違っていない。
立場も容姿も中身もハイレベルな令嬢たちがお茶会に参加した。
並みの令息がお茶会に参加すれば、圧倒されて上手く言葉が出ない……という状況に追い込まれるかもしれない程に、レベルが高い令嬢の四人。
「そうかもしれないですけど、俺は今のところ恋愛とかあまり興味ないので」
「……はぁ~~~~、そういえばそうだったわね。すっかり忘れていたわ」
弟が普段からモンスターを狩るか錬金術の練度を高めるか。
それらに熱中していることをうっかり忘れていた。
だが、まだまあだ尋問タイムは続く。
「だとしてもよ! 一人ぐらい気になった子はいるでしょ。例えば……模擬戦を申し込んできた女のことか」
「レイ嬢ですか。気になるかどうかは置いといて、良い人だとは思います」
「アラッドの好みのタイプということね」
「え? えっと…………そ、そうかもしれませんね」
レイ・イグリシアスがどういった人物なのか思い出した結果、曖昧な言葉が零れた。
「確か自分よりも強くて、気に入った人としか婚約したくない……迫ってきた令息と戦ってボコボコにした令嬢でしょ」
「……良く知ってますね。ルリナ姉さん」
「アラッドがそういった話に興味無さ過ぎるのよ」
全くもって否定出来ない。
お茶会に関わるまでそんな話があったと知らず、一ミリも耳に入ってこなかった。
「で、アラッドはイグリシアス家の令嬢に勝ったわけだ」
「そうですね。お互いに全力ではありませんでしたけど、勝ちました」
「ふ~~~ん……それで、やっぱり強かった?」
「はい、強かったです」
アラッドはルリナの問いに即答した。
(おそらくそうであろう特異体質を抜きにしても、レイ嬢は強い。特異体質がなくとも磨いた才と積み重ねた鍛錬で、同じ様に迫る令息を倒すだろう。攻撃スタイルは違うかもしれないが)
実際の剣を交えたアラッドはレイが今まで積み重ねてきた努力、想いを確かに感じ取った。
「アラッドが即答するほど強いのね……でも、模擬戦に勝ったのはアラッドのわけでしょ。それを考えると……アラッド、惚れられたんじゃないの」
「冗談でも止めてください」
「冗談な訳ないでしょ」
真剣に返した言葉を、更に真剣な表情で返され、少しの間沈黙が続いた。
そして先にルリナが沈黙を破る。
「話を聞く限り、その子はアラッドが冒険者の道を進むにしても、レイさんなら付いてきてくれそうじゃない」
「それは……やはりご両親が許さないかと」
「むっ…………それは否定出来ないわね」
女っ気がない弟に、なるべく早く婚約者かそういった関係を見据えたパートナーができて欲しいと願う姉だが、弟の言葉通り……アラッドが我が道を貫くのであれば難しい問題が残っていた。
「わ、分かりました」
アリサにお茶会で何が起こったか、どんな令嬢がいたのか。
それらについて色々と話した後、今度は姉であるルリナに連行されたアラッド。
まだ夕食の時間まで時間はあるので構わない。
構わないのだが、まさかルリナにまでお茶会について内容を尋ねられるとは予想していなかった。
(ルリナ姉さんも女の子だし、やっぱり恋バナは好きなんだな)
その通り。
今のところ気になっている令息がいないルリナだが、それでも恋バナは楽しいと感じるタイプなので、令嬢同士のそういった会話も問題無い。
そして弟の恋愛事情など、当然気になる。
「なるほどね……随分と特殊なお茶会だったみたいね」
「初めてのお茶会だったから、他がどういった内容なのかは分からないけど、多分その通りなんだと思います」
先日のあれが、初めてのお茶会だったという言葉に嘘はない。
それはルリナも知っている。
(お茶会で模擬戦が行われるなんて、一度も聞いたことがないわ)
探せば同じ例があるかもしれないが、少なくともルリナは全く聞いたことがない。
「それで、気になる子はいたの?」
「特にいませんでした」
もう全く隠すことなく、ストレートに言葉にした。
「え、嘘でしょ。アラッドが参加した令嬢たちはこう……選りすぐりの令嬢たちでしょ」
言葉に迷ったが、ルリナの考えは一ミリも間違っていない。
立場も容姿も中身もハイレベルな令嬢たちがお茶会に参加した。
並みの令息がお茶会に参加すれば、圧倒されて上手く言葉が出ない……という状況に追い込まれるかもしれない程に、レベルが高い令嬢の四人。
「そうかもしれないですけど、俺は今のところ恋愛とかあまり興味ないので」
「……はぁ~~~~、そういえばそうだったわね。すっかり忘れていたわ」
弟が普段からモンスターを狩るか錬金術の練度を高めるか。
それらに熱中していることをうっかり忘れていた。
だが、まだまあだ尋問タイムは続く。
「だとしてもよ! 一人ぐらい気になった子はいるでしょ。例えば……模擬戦を申し込んできた女のことか」
「レイ嬢ですか。気になるかどうかは置いといて、良い人だとは思います」
「アラッドの好みのタイプということね」
「え? えっと…………そ、そうかもしれませんね」
レイ・イグリシアスがどういった人物なのか思い出した結果、曖昧な言葉が零れた。
「確か自分よりも強くて、気に入った人としか婚約したくない……迫ってきた令息と戦ってボコボコにした令嬢でしょ」
「……良く知ってますね。ルリナ姉さん」
「アラッドがそういった話に興味無さ過ぎるのよ」
全くもって否定出来ない。
お茶会に関わるまでそんな話があったと知らず、一ミリも耳に入ってこなかった。
「で、アラッドはイグリシアス家の令嬢に勝ったわけだ」
「そうですね。お互いに全力ではありませんでしたけど、勝ちました」
「ふ~~~ん……それで、やっぱり強かった?」
「はい、強かったです」
アラッドはルリナの問いに即答した。
(おそらくそうであろう特異体質を抜きにしても、レイ嬢は強い。特異体質がなくとも磨いた才と積み重ねた鍛錬で、同じ様に迫る令息を倒すだろう。攻撃スタイルは違うかもしれないが)
実際の剣を交えたアラッドはレイが今まで積み重ねてきた努力、想いを確かに感じ取った。
「アラッドが即答するほど強いのね……でも、模擬戦に勝ったのはアラッドのわけでしょ。それを考えると……アラッド、惚れられたんじゃないの」
「冗談でも止めてください」
「冗談な訳ないでしょ」
真剣に返した言葉を、更に真剣な表情で返され、少しの間沈黙が続いた。
そして先にルリナが沈黙を破る。
「話を聞く限り、その子はアラッドが冒険者の道を進むにしても、レイさんなら付いてきてくれそうじゃない」
「それは……やはりご両親が許さないかと」
「むっ…………それは否定出来ないわね」
女っ気がない弟に、なるべく早く婚約者かそういった関係を見据えたパートナーができて欲しいと願う姉だが、弟の言葉通り……アラッドが我が道を貫くのであれば難しい問題が残っていた。
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