上 下
135 / 1,032

百三十五話 それぞれの思い

しおりを挟む
太陽がかなり傾き、あと一時間も経てば夕食の時間となる。
そんな時間までアラッドたちは存分にお茶会を楽しんだ。

アラッドを除いたベルたちはヴェーラたち四人のうち、誰かと仲良くなって婚約にもっていければ良いと父親から言われていたが、令嬢たちと仲良くなることなどすっかり忘れて話し合いを楽しんでいた。

それはヴェーラたちも同じく、本来はアラッドになるべく興味を持ってもらう様に仕向け、あわよくば婚約関係を結んでほしい……そう言われていた四人だが、四人ともアラッドに興味を持ってもらうどころか自身がアラッドに強く興味を持つ状態となっていた。

(魔法の腕に関しては、次の機会に見せてもらうべきね)

(剣の腕前は素晴らしかったですが、魔法の腕前はどれほどのものなのか……やはり非常に気になりますわ。どうにかして上手く誘って……なるべく二人で話せる状況が良さそうですわね)

(魔法を使ってモンスターを倒すとも言ってたから……多分、魔法について興味はあるよね。できればゆっくり話し合いたいな)

ヴェーラ、エリザ、ルーフの魔法の才が高い組はどうにかしてアラッドの魔法の腕を確認したい。
そしてあわよくば、ゆっくり話してみたいと思っていた。

(同じ歳であれほどの力と技術……ふっふっふ。やはり一度だけというのは勿体ない。是非ともアラッドとは何度も剣を交えたい…………いっそ、彼の屋敷に訪れてみるか?)

今回のお茶会でアラッドに出会う前から関心を持っていたレイだが、実際に剣を交えて更にアラッドに対して関心を持つようになった。
恋愛的な感情……というよりも、友情や尊敬に近い感覚を抱いているかもしれないが、それでも本人は無意識に一気に距離を詰めようと考えていた。

(特殊なスキルを持ち、剣の技術……そして身体能力であのレイを上回っている)

マリアは細剣技のスキルを五歳の誕生日に授かっており、その技術は中々のもの。
技術という点においてはレイを上回っているが、身体能力に関してはレイが完全に勝っている。

そしてその身体能力は女子だけではなく、同年代の男子すら完全に越えている。
そんなレイと模擬戦を行って途中でアラッドが止めたが、内容はアラッドの圧勝だった。

(おそらく、魔法の腕に関しても並以上……加えて、錬金術という珍しい趣味を持っている……とんでもない方ですね)

マリアは同年代の中で自分が一番優れている存在などと思ってはいない。
自分よりも優れた能力を持つ者は多いと思っているが、決して自分が全体的に見て下にいる存在だとは思っていない。

だが、そんな自分より……自分より優れた存在よりも上の存在だと認識。
まだ恋愛的な感情こそ湧いていないが、全体的にアラッドが尊敬に値する人物だと感じた。

(……まさか、あんな力を持っているなんてね。糸か……なんとも恐ろしい能力だよ)

唯一、一人だけアラッドが糸というスキルを使ってどのような攻撃を行えるのか知ったベル。
その内容を思い返すだけで身震いしてしまう。

それでも決して喧嘩っ早かったり、狂暴な人物ではないと知れて一安心。
寧ろあの場では紳士寄りの男子だと感じた。

是非ともアラッドとは友好的な関係を持ち続けたい。
心の底からそう思える程、ベルから見たアラッドは敵に回したくない男。

(まさかあんなに凄げぇとはな……長男のギーラスさんよりも強いんじゃないか?)

ガルシアは実際にパーシブル家の長男であるギーラスが戦うところを観たことはないが、それでもかなり実力が高いという話は聞いている。
入学した学園でも既に強者としての地位を確立。

だが、今日……目の前で残念ながら身体能力ではまだ敵わないと思っていたレイを模擬戦で圧倒。
レイは模擬戦が終わると疲れた表情をしていたが、アラッドからはまだまだ強い相手と戦えるといった余裕を感じた。

(強いからといって自分より実力を低い奴を見下したりしないし、特に気取った奴じゃないし……仲良くしたやつではあるけど、そうするとドラングの機嫌が悪くなりそうだな)

ガルシアにとってドラングは決して悪くない友人なので、ドラングのことを考えるとおいそれとアラッドと仲良くはなれなかった。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?

青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。 魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。 ※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します) ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。 神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。 もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ 楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。 ※基本的に主人公視点で進んでいきます。 ※趣味作品ですので不定期投稿となります。 コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。

赤い流星 ―――ガチャを回したら最強の服が出た。でも永久にコスプレ生活って、地獄か!!

ほむらさん
ファンタジー
ヘルメット、マスク、そして赤い軍服。 幸か不幸か、偶然この服を手に入れたことにより、波乱な人生が幕を開けた。 これは、異世界で赤い流星の衣装を一生涯着続けることになった男の物語。 ※服は話の流れで比較的序盤に手に入れますが、しばらくは作業着生活です。 ※主人公は凄腕付与魔法使いです。 ※多種多様なヒロインが数多く登場します。 ※戦って内政してガチャしてラッキースケベしてと、バラエティー豊かな作品です。 ☆祝・100万文字達成!皆様に心よりの感謝を! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。  

処理中です...