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百三十一話 今日はお茶会

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「なっ、私はまだ戦える!!!」

「それは分かっている。だが、今日はお茶会をしに来たんだ」

お茶会はまだまだ始まったばかり。
アラッドの中ではあらら、うふふと喋って終わると思っていたが、仕方なくレイの我儘に付き合う流れとなった。

それなりに楽しいと感じたので、結果的にレイと模擬戦を行って悪くないと思ったが、それでも本日の流れを崩すつもりはない。

というか、アラッドとしてはなるべく平和な形で終わらせたいという思いが強かった。

「ッ……そうだったな。少し、熱くなり過ぎていた」

「いや、それは仕方ないだろう。俺もレイ嬢と剣を交えれて楽しかった」

世辞ではなく本心。
だが、二人に差があるのは歴然だったので、レイとしては慰めの言葉にすらならなかった。

(楽しかった、か……もし次の機会があれば、少しでもあの余裕そうな顔を焦らせたいな)

流した汗を拭き、元のドレスに着替えるためにレイは一旦退出し、アラッドたちはお茶会を行う場所へと戻った。

ヴェーラやエリザとしては、せっかくの機会なのでアラッドの魔法の腕も知りたかった。

(本当は私も魔法だけで模擬戦を行いたかったけど……今日の本来の目的を忘れては駄目ね。まだこれから時間はいくらでもある……そうね、今度は私が彼の領地に行って会いに行くのもありかしら)

(あのレイが押し負けるのは驚きでしたわね……あそこまで剣の才能があるなら、もしや魔法の才もかなりの物なのかしら? それは一度見てみたいわ)

エリザも魔法に関しては高い才を持っており、ヴェーラ程ではないがアラッドの魔力量の多さに勘付いていた。
だが、二人ともアラッドの言葉を思い出し、模擬戦が終わってから「今度は魔法を使っての模擬戦をしませんか」とは発言しなかった。

「いや~~~、驚いたぜ。まさかレイを剣で圧倒するなんてな!」

「有難う。ただ、彼女も本気ではなかった」

「それはアラッドも同じでしょう。二人が本気を出しても、結果は変わらないと思いますよ」

本気を出していないという言葉が、スキルを使用していないという内容を指していることにベルは直ぐに気が付いた。

確かに例は身体強化のスキルを五歳の誕生日に授かり、他の者たちと比べて身体強化の質が違う。
だが、仮に二人がスキルを使って本当の意味で本気を出したとしても、ベルはレイがアラッドに勝てるとは思えない。

「見事な戦いぶりでしたわ。まさに噂通りの実力」

「えぇ、本当に驚かされました。アラッドさんはあまりパーティーに参加していないので知らないかもしれませんが、レイさんは求婚してきた令息の方々を全員倒しているのですよ」

「ッ!? そう、だったんですね」

マリアから驚きの情報を聞かされ、紅茶が気管に入りそうになった。

(気が強い性格……ではなさそうだが、気に入った相手でなければ婚約したくないと思っているのかもしれないな。確かに実力、父親の立場も考えればレイ嬢は基本的に相手を選ぶ立場か)

アラッドの考えは見事に的中しており、イグリシアス侯爵もそこら辺は娘の自由にさせている。

「……アラッド、少し踏み入った質問したいんだけど良いかな」

「あぁ、別に構わないぞ。ベル」

「有難う……アラッドは、いったいどんなスキルを授かったんだい」

ベルの質問に、他五人の表情が強張る。
貴族界ではそこまで踏み入った質問ではなく、比較的気軽に行われている。

だが、アラッドは今まで色々と噂だけが飛び交ってきた人物。
今日まで貴族の子供たちにとって、知らないことが多すぎた。

(純粋に剣技かもしれないけど……もしかしたら他のスキルかもしれない)

先程の模擬戦を観て、ベルは自分より剣技の腕はアラッドの方が上だと感じた。
ただ、あまりにもっ自分たちと隔絶した腕前……という訳ではなかったので、他のスキルかもしれないと予想。

いったいどんなスキルなのかは分からないが、それでも気になって気になって仕方ない内容。

そしてその問いに対して、アラッドはこの場にいる者たちになら伝えても構わないだろうと思い、五歳の日に授かったスキルを口にした。
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