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百二十四話 確かめる場所ではない

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(……この子が、アラッドが本当のことを言ってるのか気になる)

ヴェーラはアラッドがなんとなくではあるが、嘘をついていないということは感じ取っていた。

だが、それでも自分の直感や感知力で感じた感覚が間違っているとも思えない。

(どうすれば……それは、駄目ね)

アラッドが本当に剣士寄りの戦闘スタイルなのか、それともヴェーラが考えている通り攻撃魔法をメインに使って戦うタイプなのか。

それは実際に戦ってみれば分かると思った。
しかし現在、ヴェーラたちがいる場所は待ち中。

決していきなり戦闘を始めて良い場所ではない。

ヴェーラは頭の中に浮かんだ考えを即座に消した。
消したは良かったが、それでも真実はいったいどうなのか……非常に気になる。

ただ、そもそもここであまりアラッドと話し過ぎるのは良くないという事実を思い出した。

(真実が気になるところだけど……そろそろアラッドとは離れないといけないわね)

今回のお茶会に、アラッドの他にも三人の令息が参加する。
親の爵位……立場的にはヴェーラが一番上ではあるが、他の令息三人も決して低くはない。

しかしお茶会に参加するヴェーラを含めた四人の令嬢には、なるべくアラッド仲良くなる。
そしてあわよくば惚れさせろという当主からの頼みを託されている。

今回、ヴェーラは本当にたまたまアラッドと街中で出会ってしまった。
決して未来や運を予測できるマジックアイテムを使い、意図的にアラッドと出会った訳ではない。

しかしそれでも、他の三人の令嬢からすればフライングしたと思われる可能性が大きい。
故に、今あまり長時間アラッドと話し続けるのは得策ではない。

(明日、じっくり話すしかなさそうね)

明日のお茶会でそれとなくアラッドと多く会話をし、情報を引き出す。
そう決めたヴェーラはとりあえず、今日のところはここで別れると決めた。

「アラッドさん、貴重なお話をお聞かせいただき有難うございます。それでは、明日のお茶会で」

アラッドが新人女性騎士と一対一で模擬戦を行い、勝利したという話はそれなりに広まっている。
しかし本人の口からそれが事実だと聞いた。

まだ一度しかパーティーに参加したことがないアラッド本人の口からその話は事実だと聞けた。
それは確かに貴重な情報だといえる。

「えぇ、また明日のお茶会でお会いしましょう」

ヴェーラと別れ、直ぐに移動する訳にもいかないと思い、数秒ほどその背中を見送った。

「……なぁ、俺ってそんなに魔法使いっぽく見えるか?」

「い、いえ。どちらかといえばやはり剣士に見えるかと」

「そうだよな……まぁ、別にそんな気にする必要ないか」

それはアラッドも分かっていたが、それでも護衛の騎士たちに尋ねてしまった。

(なんか、同類を見つけた様な目をしていたように見えたが……確かにまぁまぁ魔法を使える方だとは思うが)

ガチの天才や努力に努力を重ねて限界突破した者たちと比べれば劣るが、それでも今のところ同性代の中でも成長が早いので魔法の扱いはトップクラスに位置する。

まだまだグスタフ公爵領の武器屋は回り切れていないので、アラッドは騎士たち三人と一緒に夕食の時間になるまで延々と武器屋や防具店を見て回り続けた。

そしてアラッドはヴェーラに尋ねられたことを頭の中から捨てて散策を楽しんでいたが、別れてからヴェーラの頭の中にはずっとアラッドの主な戦闘スタイルについての疑問が残り続けていた。

(雰囲気からして戦士や剣士というのは分からなくない……でも、あれだけの魔力量を持ちながら魔法メインで戦わないなんて……)

ヴェーラは決して武器を使って接近戦を行う者たちを見下してなどいない。
しかし、アラッドが属性魔法を一つも使えない、習得していないという話は一度も聞いたことがない。

この時点でヴェーラはまだアラッドに恋心は抱いていないものの、完全に興味を持つようになっていた。
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