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百二十三話 揺らいだ表情
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「……それは、本当?」
ヴェーラ・グスタフの表情が揺らいだ。
それを見た護衛の騎士たちは驚いた。
ヴェーラは口数が少なく、基本的に無表情。
そんなヴェーラがアラッドからの答えに対し、疑問を抱き、それが感情に現れた。
(ヴェーラ様が表情に出すほど驚くとは……しかし、おそらくアラッド様の答えは間違っていないだろう)
アラッドが少し前のパーティーに出席した際、途中で母のアリサと一緒に抜け出して第三王女の護衛騎士であるモーナと模擬戦を行い、勝利したという噂がある。
そして剣を扱う騎士であるギルッドから視ても、アラッドは剣を扱うタイプに思える。
しかしヴェーラ五歳の誕生日に魔力操作のスキルを授かった。
魔法の扱いにはグスタフ公爵家に仕える魔法使いたちも驚かされている。
ヴェーラは魔力の感知技術も優れており、ほぼ百パーセントの確信を持ってアラッドに「あなたは魔法使いですか?」と尋ねた。
だが、返ってきた答えは魔法使いではなく剣士。
その答えが間違っていないと思いつつも、ヴェーラの考えや直感を信じるのならば、アラッドには剣の才能だけではなく、ヴェーラが勘違いしてしまほう程の魔法の才も有していることになる。
「えぇ、本当です。毎日欠かさず剣の稽古を行っています」
一応まだ相手の親の爵位が分からない為、敬語で対応する。
そこでギルッドは送れながらもヴェーラの紹介を始めた。
「努力を怠らぬ姿勢、流石でございます。アラッド様、こちらはグスタフ公爵家の令嬢であるヴェーラ様でございます」
「そうでしたか。わざわざ今回のお茶会の場を用意して頂き、誠にありがとうございます」
相手が公爵家の娘だと分かり、敬語を使った自分にナイスと思いながら心の中でホッと一息ついた。
ただ、そんなアラッドをよそにヴェーラの護衛である三人の騎士は、アラッドのスラスラと口に出す言葉に少々驚いていた。
(強さだけではなく、対応まで一流とは……フール様はいったいどのような教育をされているのだろうか……少々気になるな)
パーシブル侯爵家の当主であるフールは特に教育はしていない。
アラッドが勝手に強くなってしまっただけである。
「……どういたしまして」
アラッドの言葉に対して、感謝されるのは自分ではなく父であるグスタフ公爵というのは分かっているが、礼を言われたので一応娘である自分が答えなければと思い、対応。
しかし今のヴェーラにとってそんなやり取りはどうでもよく、先程の回答が気になり続けていた。
(この子は、本当に……剣士なの?)
鑑定系のスキルや魔眼を持っていないので、ラッドがどのようなスキルを習得しているのかは分からない。
だが、それでもアラッドが体に秘める魔力の量はなんとなく感じ取れる。
それはがっつり魔法使いである自分より勝っていた。
(これだけの魔力量を纏っていて……剣士)
グスタフ家に当然、魔法使いだけではなく騎士の称号を持つ者たちも仕えている。
確かに目の前の令息は鋭い雰囲気を持ち、剣が得意というタイプに思えなくもない。
しかしヴェーラにはアラッドが剣士タイプではなく、魔法使い寄りの者だと直感が告げていた。
「……ギルッド。アラッドは、本当に剣士寄りなの?」
「えっと……噂ですが、アラッド様は新人女性騎士の者と模擬戦を行い、勝利したようです。その話を考えるに、やはりアラッド様は剣士寄りの方かと」
いったいその噂は本当なのか、ギルッドには分からない。
だが、相手の女性騎士がハンデ付きであればアラッドが勝利する可能性は決してゼロではないと感じる。
「あの模擬戦はお互いに全力を出していませんでした。それにモーナさんも自分がまだまだ子供だということで油断していましたから」
内容を考えるに、確かに相手の女性騎士は全力ではないのだろう。
だがそれでも、勝利したという部分は否定しなかった。
(ッ!!! あの噂は本当だったのか……末恐ろしい令息もいたものだ)
アラッドの表情を見る限り、とても嘘を言っているようには思えなかった。
ヴェーラ・グスタフの表情が揺らいだ。
それを見た護衛の騎士たちは驚いた。
ヴェーラは口数が少なく、基本的に無表情。
そんなヴェーラがアラッドからの答えに対し、疑問を抱き、それが感情に現れた。
(ヴェーラ様が表情に出すほど驚くとは……しかし、おそらくアラッド様の答えは間違っていないだろう)
アラッドが少し前のパーティーに出席した際、途中で母のアリサと一緒に抜け出して第三王女の護衛騎士であるモーナと模擬戦を行い、勝利したという噂がある。
そして剣を扱う騎士であるギルッドから視ても、アラッドは剣を扱うタイプに思える。
しかしヴェーラ五歳の誕生日に魔力操作のスキルを授かった。
魔法の扱いにはグスタフ公爵家に仕える魔法使いたちも驚かされている。
ヴェーラは魔力の感知技術も優れており、ほぼ百パーセントの確信を持ってアラッドに「あなたは魔法使いですか?」と尋ねた。
だが、返ってきた答えは魔法使いではなく剣士。
その答えが間違っていないと思いつつも、ヴェーラの考えや直感を信じるのならば、アラッドには剣の才能だけではなく、ヴェーラが勘違いしてしまほう程の魔法の才も有していることになる。
「えぇ、本当です。毎日欠かさず剣の稽古を行っています」
一応まだ相手の親の爵位が分からない為、敬語で対応する。
そこでギルッドは送れながらもヴェーラの紹介を始めた。
「努力を怠らぬ姿勢、流石でございます。アラッド様、こちらはグスタフ公爵家の令嬢であるヴェーラ様でございます」
「そうでしたか。わざわざ今回のお茶会の場を用意して頂き、誠にありがとうございます」
相手が公爵家の娘だと分かり、敬語を使った自分にナイスと思いながら心の中でホッと一息ついた。
ただ、そんなアラッドをよそにヴェーラの護衛である三人の騎士は、アラッドのスラスラと口に出す言葉に少々驚いていた。
(強さだけではなく、対応まで一流とは……フール様はいったいどのような教育をされているのだろうか……少々気になるな)
パーシブル侯爵家の当主であるフールは特に教育はしていない。
アラッドが勝手に強くなってしまっただけである。
「……どういたしまして」
アラッドの言葉に対して、感謝されるのは自分ではなく父であるグスタフ公爵というのは分かっているが、礼を言われたので一応娘である自分が答えなければと思い、対応。
しかし今のヴェーラにとってそんなやり取りはどうでもよく、先程の回答が気になり続けていた。
(この子は、本当に……剣士なの?)
鑑定系のスキルや魔眼を持っていないので、ラッドがどのようなスキルを習得しているのかは分からない。
だが、それでもアラッドが体に秘める魔力の量はなんとなく感じ取れる。
それはがっつり魔法使いである自分より勝っていた。
(これだけの魔力量を纏っていて……剣士)
グスタフ家に当然、魔法使いだけではなく騎士の称号を持つ者たちも仕えている。
確かに目の前の令息は鋭い雰囲気を持ち、剣が得意というタイプに思えなくもない。
しかしヴェーラにはアラッドが剣士タイプではなく、魔法使い寄りの者だと直感が告げていた。
「……ギルッド。アラッドは、本当に剣士寄りなの?」
「えっと……噂ですが、アラッド様は新人女性騎士の者と模擬戦を行い、勝利したようです。その話を考えるに、やはりアラッド様は剣士寄りの方かと」
いったいその噂は本当なのか、ギルッドには分からない。
だが、相手の女性騎士がハンデ付きであればアラッドが勝利する可能性は決してゼロではないと感じる。
「あの模擬戦はお互いに全力を出していませんでした。それにモーナさんも自分がまだまだ子供だということで油断していましたから」
内容を考えるに、確かに相手の女性騎士は全力ではないのだろう。
だがそれでも、勝利したという部分は否定しなかった。
(ッ!!! あの噂は本当だったのか……末恐ろしい令息もいたものだ)
アラッドの表情を見る限り、とても嘘を言っているようには思えなかった。
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