スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
122 / 1,058

百二十二話 数年後かな

しおりを挟む
「アラッド様、あまりお気に召した物はないのですか?」

「別にそういう訳じゃないんだが……今買うべきではないと思ってな」

武器や防具を見るのは楽しい。
だが、アラッドはあまり自身の武器や防具を買おうとしない。

現在はナックル、オープンフィンガーグローブなどは購入を検討しているが、メインウェポンである鋼鉄の剛剣は今でも十分使えるので、新しい武器が早急に必要だとは思わない。

「今の俺には父さんから貰った鋼鉄の剛剣があるからな……新しい武器、剣を買うにしても数年後かな」

「……そうですか」

護衛の騎士たちはアラッドが父親であるフールから貰った鋼鉄の剛剣を大切に扱いたいという気持ちは理解出来る。
自身もそのような過去がある。

だが、物はいつか壊れてしまう。
再生や自己修復の効果などが付与されていれば話は別だが、その様な効果が付与されていない武器はどれだけ丁寧に扱っていたとしても、使用不可能となる日は訪れてしまう。

(アラッド様の剣は今だ十分に扱える……それだけアラッド様の技術が高いということだな。いや、そもそも剣以外でモンスターを倒すこともあるらしいな)

五歳の誕生日に授かったスキル、糸。
そして魔法の腕も並ではない。

その二つを腐らせない為にも、実戦で扱っているので鋼鉄の剛剣の出番が少ない日もある。

(アラッド様の腕前であれば、もっと相応しい剣があると思うが……本人が特に変える気がないのであれば、私たちから言う意味はないか)

鋼鉄の剛剣もそれなりに質の高い剣ではあるが、騎士たちはもっとアラッドに相応しい剣があると、護衛の三人は同じ事を考えていた。

ただ、鋼鉄の剛剣も七歳の子供が持つには過ぎた一品なのだ。
それ以上の武器を持たせるのは……例え剣の才能を持つ子供であったとしても、現段階では宝の持ち腐れになってしまう。

「ん? ギルッド……か?」

「その声は! ザックじゃないか」

すれ違った人物に見覚えがあり、護衛の一人であるザックは思わず振り返り、声を出してしまった。

(……向こうの騎士も、ザックと同じ護衛の騎士って感じか)

ギルッドを含めて二人の騎士の傍に、一人の令嬢が立っていた。

(あんまりパーティーに参加してないが、なんとなく解る。多分、爵位が高い貴族の令嬢だ)

ギルッドがアラッドたちの方向に振り替えると、令嬢も一緒に振り返った。
体から溢れる高貴さを感じ、もしかしたら令嬢の父親は自分と同じぐらいの爵位を持つ人物かもしれない。

そう思うと、自然と背筋が伸びた。

「アラッド様、こちらの騎士は自分と同期の騎士です。ギルッド、こちらはパーシブル家の三男であるアラッド様だ」

「初めまして、アラッド様。ギルッド・バルボと申します。ザックに紹介していただいた通り、彼とは同期の騎士です。以後お見知りおきを」

ザックと同期であるギルッドは深々と頭を下げた。
現在は騎士ではあるが、それでも貴族の一員。

アラッドの噂は耳に入っていた。
とはいっても、アラッドが何かやらかした話ではなく、父親のフールがパーティーで自慢していた噂話。

中には「本当にそんなことが出来る子供がいるのか?」と思う内容もあるが、ギルッドは目の前の生アラッドを見て、本当にただの令息ではないことを察した。

そしてギルッドは自身が護衛をしている令嬢のことを軽く紹介しようとしたが、その前に令嬢が一歩前に出てアラッドの間に現れた。

「…………」

アラッドはいきなり目の前にやって来た令嬢に対し、どう対応すれば良いのか困惑し、上手く言葉が出なかった。
だが、アラッドが何かを話すよりも先に令嬢が言葉を発した。

「あなたは、魔法使い?」

「えっ? いや……個人的には剣士だと、思ってます」

目の前の令嬢がどの家の者かは分からないが、それでもとりあえず敬語で返した。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...