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百十七話 絶対ではない可能性
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「…………」
「アラッド、大丈夫かい?」
「えっ? いや、まぁ……はい、大丈夫です」
決して大丈夫ではなかった。
お見合い話の多くを断ってくれ、残った重要なお見合い話を一度に纏めてくれた。
それに関してアラッドは父親であるフールに感謝している。
だが、それでも完全に面倒だと思わない訳ではない。
「もしかしてお尻が痛いのか?」
「それは大丈夫ですよ」
完全に揺れがないわけではないが、それでもフールがそれなりに大金を使って専門職の者に作ってもらった馬車。
他の馬車と比べて外装や内装だけではなく、揺れによる振動も軽減している。
「何と言いますか……やはり上手くやれるかちょっと心配で」
「はっはっは! アラッドは心配性だね」
「心配にもなりますよ。一応お茶会って体ですけど、実質四人の令嬢が俺を狙ってるってことですよね」
「うん、そうだね」
あっさりとフールはその通りだと答えた。
(父さん……そんな良い笑顔で答えなくても)
全開のパーティーでは弟のドラングにそれらを押し付け、まともに同年代の令息との婚約を狙う令嬢たちを相手にしなかった。
(あの時、ぶっちゃけ美味い飯に超夢中だったから結構適当にあしらってしまったかもしれない……確か令嬢側に公爵家がいるんだよな……言葉遣い、ちゃんとしないとな)
そもそも同年代と喋る機会が少ない。
バークたちとは一緒に訓練を行ったりするので喋る機会は多いが、平民ということもあって言葉遣いは普段通り。
(はぁ、こんなとこでパーティーに参加してなかったツケが回ってくるとは……だからといって、積極的にパーティーに参加したいとは思わないが)
かれこれ、前回参加したパーティーから時間が経っているが、それから一度もパーティーに参加していない。
「でも、面子だけでいえばアラッド以外に参加する令息たちも負けてないよ」
「それはそうかもしれないですけど……」
伯爵、辺境伯、侯爵。
それぞれの家から一人ずつ今回のお茶会に参加する。
三つの家はどれもパーシブル家に負けていない名家。
しかし、参加する令息の知名度だけで言えばアラッドの方が高い。
元副騎士団長であり、実質的にソロで上位のドラゴンを討伐して勲章を貰ったドラゴンスレイヤーが手放しで褒めるほどの逸材。
だが、とあるパーティーまで全く社交場に現れることはなかった。
そして遂に社交場へ現れたと思ったら、令嬢からの声掛けを全て弟のドラングに丸投げ。
本人はテーブルに並べられている料理を綺麗に食べるだけだった。
ある意味アラッドが実行した奇行の影響もあり、知名度は更に広がってしまった。
「俺としては、平和に終わってくれればそれで良いんですけどね」
特に問題を起こしたくない。
適当に令嬢や令息たちと会話をして、美味い料理を食べて翌日には自領に帰る。
それが今回、アラッドに課せられたミッション。
「確かに平和が一番だね。でも、本当に心の底からアラッドに恋した令嬢がいたら……どうするんだい」
返答を間違えれば罰が下るような質問ではない。
ただ、あまり恋愛には興味がないアラッドがこの質問にどう回答するのか、純粋に興味がある。
「どうと言われても……のらりくらりと交わすだけですね。十五を越えれば冒険者として活動する訳ですし……煌びやかで安定した生活を捨てて俺と一緒に冒険者になるというのなら……ちょっとは考えますけど」
貴族という安定して、大抵の我儘が通る……そんな生活を捨てられるのか?
アラッドとしては、そんな酔狂な令嬢はほぼほぼいないと思いたい。
そもそも少しぐらいは年頃の男らしい日々を送りたい。
しかしそんなセリフを七歳の男の子が吐くのはおかしいので、消して口には出さない。
「そうだね。普通に考えてそういった生活を捨てて冒険者になる令嬢は珍しいかもしれないね」
今回のお見合いに参加する令嬢たちの中で、特にお金に困っている家はない。
貴族の中には大して豪華な生活をしておらず、これなら冒険者として必死に頑張った方が良い生活を送れる。
そんな状況の家もあるにはある。
参加する令嬢たちの家は財政的に全く困っていないが……世の中には絶対と断言出来ないこともある。
「アラッド、大丈夫かい?」
「えっ? いや、まぁ……はい、大丈夫です」
決して大丈夫ではなかった。
お見合い話の多くを断ってくれ、残った重要なお見合い話を一度に纏めてくれた。
それに関してアラッドは父親であるフールに感謝している。
だが、それでも完全に面倒だと思わない訳ではない。
「もしかしてお尻が痛いのか?」
「それは大丈夫ですよ」
完全に揺れがないわけではないが、それでもフールがそれなりに大金を使って専門職の者に作ってもらった馬車。
他の馬車と比べて外装や内装だけではなく、揺れによる振動も軽減している。
「何と言いますか……やはり上手くやれるかちょっと心配で」
「はっはっは! アラッドは心配性だね」
「心配にもなりますよ。一応お茶会って体ですけど、実質四人の令嬢が俺を狙ってるってことですよね」
「うん、そうだね」
あっさりとフールはその通りだと答えた。
(父さん……そんな良い笑顔で答えなくても)
全開のパーティーでは弟のドラングにそれらを押し付け、まともに同年代の令息との婚約を狙う令嬢たちを相手にしなかった。
(あの時、ぶっちゃけ美味い飯に超夢中だったから結構適当にあしらってしまったかもしれない……確か令嬢側に公爵家がいるんだよな……言葉遣い、ちゃんとしないとな)
そもそも同年代と喋る機会が少ない。
バークたちとは一緒に訓練を行ったりするので喋る機会は多いが、平民ということもあって言葉遣いは普段通り。
(はぁ、こんなとこでパーティーに参加してなかったツケが回ってくるとは……だからといって、積極的にパーティーに参加したいとは思わないが)
かれこれ、前回参加したパーティーから時間が経っているが、それから一度もパーティーに参加していない。
「でも、面子だけでいえばアラッド以外に参加する令息たちも負けてないよ」
「それはそうかもしれないですけど……」
伯爵、辺境伯、侯爵。
それぞれの家から一人ずつ今回のお茶会に参加する。
三つの家はどれもパーシブル家に負けていない名家。
しかし、参加する令息の知名度だけで言えばアラッドの方が高い。
元副騎士団長であり、実質的にソロで上位のドラゴンを討伐して勲章を貰ったドラゴンスレイヤーが手放しで褒めるほどの逸材。
だが、とあるパーティーまで全く社交場に現れることはなかった。
そして遂に社交場へ現れたと思ったら、令嬢からの声掛けを全て弟のドラングに丸投げ。
本人はテーブルに並べられている料理を綺麗に食べるだけだった。
ある意味アラッドが実行した奇行の影響もあり、知名度は更に広がってしまった。
「俺としては、平和に終わってくれればそれで良いんですけどね」
特に問題を起こしたくない。
適当に令嬢や令息たちと会話をして、美味い料理を食べて翌日には自領に帰る。
それが今回、アラッドに課せられたミッション。
「確かに平和が一番だね。でも、本当に心の底からアラッドに恋した令嬢がいたら……どうするんだい」
返答を間違えれば罰が下るような質問ではない。
ただ、あまり恋愛には興味がないアラッドがこの質問にどう回答するのか、純粋に興味がある。
「どうと言われても……のらりくらりと交わすだけですね。十五を越えれば冒険者として活動する訳ですし……煌びやかで安定した生活を捨てて俺と一緒に冒険者になるというのなら……ちょっとは考えますけど」
貴族という安定して、大抵の我儘が通る……そんな生活を捨てられるのか?
アラッドとしては、そんな酔狂な令嬢はほぼほぼいないと思いたい。
そもそも少しぐらいは年頃の男らしい日々を送りたい。
しかしそんなセリフを七歳の男の子が吐くのはおかしいので、消して口には出さない。
「そうだね。普通に考えてそういった生活を捨てて冒険者になる令嬢は珍しいかもしれないね」
今回のお見合いに参加する令嬢たちの中で、特にお金に困っている家はない。
貴族の中には大して豪華な生活をしておらず、これなら冒険者として必死に頑張った方が良い生活を送れる。
そんな状況の家もあるにはある。
参加する令嬢たちの家は財政的に全く困っていないが……世の中には絶対と断言出来ないこともある。
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