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九十九話 提案するべきなのだが
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国王に専用のチェスを渡し終えたリグラットは数週間後にアラッドの元を訪れていた。
「どうも、アラッド様。この間ぶりですね」
「そうですね」
「えっと……もしや、最近寝れていませんか?」
一か月弱ぶりに会ったアラッドの表情を見て、思わずそんな言葉が零れた。
「いや、そんなことないですよ。ちゃんと寝れてますよ」
「そ、そうなのですか? やや疲れている様に見えますが」
「それはまぁ……そうですね。疲れてはいます」
最近はベッドに入れば本当に一瞬で夢の世界へとばされてしまう。
普段から一日を無駄にすることなく過ごしているので、ベッドに入れば数分程度で眠りにつく。
だが、最近は瞬で意識が消え……気付けばメイドに起こされるという日々が続いている。
「ただ、本当にちゃんと寝てはいるんで安心してください。単純にいつもと疲れる質が違うだけで、中々体の疲れが抜けてない……のかもしれません」
リバーシの一件で、プレミア品は作れるうちに作っておいた方が良い。
それは学習したので、実戦や日々の訓練に錬金術の継続。
これらを除いた時間の殆どはチェス作りに使っていた。
(お陰様で木工のスキルレベルが短期間で上がったな)
現在、アラッドの木工はスキルレベル三。
これも剣技や体技などと同じく、七歳の子供が習得出来る境地ではない。
「そ、そうですか。無茶を言って申し訳ありません」
「いえ、俺から進んでやったことなので」
今でも七歳の子供が持つには多すぎる大金が懐に入っているが、それでも大金が手に入るなら頑張って作ってしまう。
(なんだかんだで金という欲には弱いんだろうな……というか、せっかくお金には余裕があるんだし、もっと疲れが取れるベッドでも買おうかな)
パーシブル家の者たちが使っているベッドは全員一緒だが、勿論自身のお金で新しい物を買っても構わない。
だが、基本的に新しいベッドを買う者はいない。
それは……単純に用意されているベッドがそこら辺のベッドと比べて、快適に寝られる素材が使われているから。
アラッドは今までその性能に満足していたが、最近はあまり疲れが取れている気がしない。
ベッドの中にはマジックアイテムの様に安眠や疲労回復の効果が付与されている物がある。
かなりのお値段になるが、アラッドがリバーシや積み木で手に入れた金額を考えれば、財布に大したダメージは入らない。
「それで……どうでしたか。国王陛下は自分が作った専用の駒に満足されてましたか」
「えぇ、勿論です!!! 大絶賛されていましたよ!!」
「そう、ですか……はは、それは良かった」
リグラットの言葉に嘘はない。
国王はアラッドから自分だけの駒を受け取り、非常にそれらを気に入っていた。
現在、書類作業を行いながらも、机に置かれているボードの上に立っているデッドソルジャーたちを見ては、頬が緩む。
さすがにそれはリグラットも知らないが、国王が専用駒を大絶賛していたのは間違いなかった。
(はぁ~~~~~……良かった。いや、マジで本当に良かった)
頑張って作った駒が評価された。
それも嬉しいが、渡す相手が相手だったので無事ミッションコンプリートした気持ちになり、一気に肩の力が抜けた。
「だ、大丈夫ですか。アラッド様!!」
「はい、大丈夫です。良い報告が聞けてホッと一安心しました」
作った駒は国王から大絶賛された。
めでたしめでたし……という流れで終わることはなかった。
「それでですね、アラッド様。その……国王陛下から、アラッド様にお礼として叶えられる願いがあれば、なんでも叶えようと……これを必ず製作者に伝えてほしいと言われました」
リグラットはアラッドがいずれ騎士の道ではなく、冒険者の道に進みたいというのは知っている。
ただ、アラッドはチェスやリバーシを作った製作者として名を広めようとは思っておらず、それを知っているのは肉親のみ。
本来であれば、冒険者として活動する際に役立つ物を礼の品として提案するべきところなのだが、それを伝えてしまうと製作者がアラッドだという答えに近づいてしまう可能性が、非常に高くなる。
「どうも、アラッド様。この間ぶりですね」
「そうですね」
「えっと……もしや、最近寝れていませんか?」
一か月弱ぶりに会ったアラッドの表情を見て、思わずそんな言葉が零れた。
「いや、そんなことないですよ。ちゃんと寝れてますよ」
「そ、そうなのですか? やや疲れている様に見えますが」
「それはまぁ……そうですね。疲れてはいます」
最近はベッドに入れば本当に一瞬で夢の世界へとばされてしまう。
普段から一日を無駄にすることなく過ごしているので、ベッドに入れば数分程度で眠りにつく。
だが、最近は瞬で意識が消え……気付けばメイドに起こされるという日々が続いている。
「ただ、本当にちゃんと寝てはいるんで安心してください。単純にいつもと疲れる質が違うだけで、中々体の疲れが抜けてない……のかもしれません」
リバーシの一件で、プレミア品は作れるうちに作っておいた方が良い。
それは学習したので、実戦や日々の訓練に錬金術の継続。
これらを除いた時間の殆どはチェス作りに使っていた。
(お陰様で木工のスキルレベルが短期間で上がったな)
現在、アラッドの木工はスキルレベル三。
これも剣技や体技などと同じく、七歳の子供が習得出来る境地ではない。
「そ、そうですか。無茶を言って申し訳ありません」
「いえ、俺から進んでやったことなので」
今でも七歳の子供が持つには多すぎる大金が懐に入っているが、それでも大金が手に入るなら頑張って作ってしまう。
(なんだかんだで金という欲には弱いんだろうな……というか、せっかくお金には余裕があるんだし、もっと疲れが取れるベッドでも買おうかな)
パーシブル家の者たちが使っているベッドは全員一緒だが、勿論自身のお金で新しい物を買っても構わない。
だが、基本的に新しいベッドを買う者はいない。
それは……単純に用意されているベッドがそこら辺のベッドと比べて、快適に寝られる素材が使われているから。
アラッドは今までその性能に満足していたが、最近はあまり疲れが取れている気がしない。
ベッドの中にはマジックアイテムの様に安眠や疲労回復の効果が付与されている物がある。
かなりのお値段になるが、アラッドがリバーシや積み木で手に入れた金額を考えれば、財布に大したダメージは入らない。
「それで……どうでしたか。国王陛下は自分が作った専用の駒に満足されてましたか」
「えぇ、勿論です!!! 大絶賛されていましたよ!!」
「そう、ですか……はは、それは良かった」
リグラットの言葉に嘘はない。
国王はアラッドから自分だけの駒を受け取り、非常にそれらを気に入っていた。
現在、書類作業を行いながらも、机に置かれているボードの上に立っているデッドソルジャーたちを見ては、頬が緩む。
さすがにそれはリグラットも知らないが、国王が専用駒を大絶賛していたのは間違いなかった。
(はぁ~~~~~……良かった。いや、マジで本当に良かった)
頑張って作った駒が評価された。
それも嬉しいが、渡す相手が相手だったので無事ミッションコンプリートした気持ちになり、一気に肩の力が抜けた。
「だ、大丈夫ですか。アラッド様!!」
「はい、大丈夫です。良い報告が聞けてホッと一安心しました」
作った駒は国王から大絶賛された。
めでたしめでたし……という流れで終わることはなかった。
「それでですね、アラッド様。その……国王陛下から、アラッド様にお礼として叶えられる願いがあれば、なんでも叶えようと……これを必ず製作者に伝えてほしいと言われました」
リグラットはアラッドがいずれ騎士の道ではなく、冒険者の道に進みたいというのは知っている。
ただ、アラッドはチェスやリバーシを作った製作者として名を広めようとは思っておらず、それを知っているのは肉親のみ。
本来であれば、冒険者として活動する際に役立つ物を礼の品として提案するべきところなのだが、それを伝えてしまうと製作者がアラッドだという答えに近づいてしまう可能性が、非常に高くなる。
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