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九十七話 疲労が溜まってきた
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「……はぁ~~~~、錬金術より木工の腕の方が上になりそうだな」
チェスをリグラットに伝えると、直ぐに制作作業に取り掛かると息巻いた。
そしてアラッドが国王陛下専用に作った特製の駒たちはハイレベルな力を持つ護衛たちに守られながら、無事に国王陛下の元に届けられた。
なので、まだチェスの販売は行っておらず、最低でも世間に存在が知れ渡るのは一か月後。
それまでの間にアラッドは制作者が作ったプレミア品を作り続けなければならない。
リバーシの方は最近落ち着いてきているが、チェスは作るのにかなり時間が必要なので、森に入ってモンスターを狩る日じゃない休日は朝から夜まで殆どチェス作りに時間を使っている。
お陰様で寝る時は直ぐに夢の中へ飛び立てる。
しかし……最近はかなり疲れていると自覚していた。
「別に訓練したりモンスターと戦う分には問題なさそう……だけど、さすがに疲労が溜まってきたかも」
珍しく大きな疲れを感じる。
だが、自身が駒とボードを作ることによって膨大な金額が懐に入ってくる。
既にリバーシのお陰で懐は熱々ではあるが、入ってくるならば作業を惜しまない。
徐々に社畜精神が身についてしまっていた。
「というか、もう国王陛下にデッドソルジャーたちが届いてるよな」
国王陛下専用の駒以外にも、普通のポーンたちも一緒に送ったので勝負することはできる。
「気に入ってもらえたか? 父さん達には好評だったから大丈夫だと思うんだが……」
専用の駒という時点で、プレミア品感満載なのは間違いない。
アラッドが必死に作った駒を受け取った国王はいったいどんな反応をしたのか……国王がリグラットからチェスを受け取ったのは二日前のことだった。
「国王陛下、こちらが国王陛下の為だけに作られた専用の駒でございます」
「ほぅ……俺専用、か」
ボードの上には通常の駒とは別に、文字通り国王専用の駒が置かれていた。
「こちらがデッドソルジャー、順にナイトライダー、グラスホッパー、バッファロー、クイーンスカーレッド。そして……キング・オブ・キングとなります」
「全て通常駒の上位版、といったところか」
国王はゆっくりと駒を手に取る。
そして通常の駒と自身専用の駒と見比べ、ニヤッと満足げな笑みを浮かべた。
「ふっふっふ、俺専用の駒……リグラットよ、俺専用の駒ということはチェスの制作者、俺以外にこの駒を作らないという訳か」
「えぇ、その通りでございます。製作者様は国王陛下に相応しい駒を作るために持てる力を全て振り絞ったとおっしゃっていました」
「そうかそうか……ふふ、リバーシの制作者にここまで特別扱いされるのは光栄だな」
公務の傍ら、空いた時間を使っては側近の者たちと勝負することが多い。
勝負に熱中し過ぎるあまり、書類仕事が溜まってしまうことも稀にある。
のちに作った積み木という主に子供が遊ぶ娯楽ではあるが、それを子供に遊ばせる意図には驚かせられた。
故に、国王はリバーシの制作者に敬意を持っていた。
「リグラットよ、ルールを教えてくれ」
「かしこまりました」
アラッドがルールを教えられ、洋紙にメモしているので一つも間違えることなく国王に伝え終ると、すぐさま一戦勝負しようという流れになった。
国王からの頼みということもあり、リグラットは勿論引き受けた。
相手が王族なので接待プレイをしなければならない……という考えにはならない。
ルールはアラッドに教えてもらったので頭の中に入っているが、王城に入るまで駒には全く触れていないんで、経験値を積んでいない。
リグラットはルールを知っていても素人と変わらないので、接待プレイもクソもなく国王と手探り状態で駒を動かし始めた。
そしてまずは一戦と言っていたが、気付けば時間は流れ……二人は三時間程チェスに熱中して駒を動かしていた。
チェスをリグラットに伝えると、直ぐに制作作業に取り掛かると息巻いた。
そしてアラッドが国王陛下専用に作った特製の駒たちはハイレベルな力を持つ護衛たちに守られながら、無事に国王陛下の元に届けられた。
なので、まだチェスの販売は行っておらず、最低でも世間に存在が知れ渡るのは一か月後。
それまでの間にアラッドは制作者が作ったプレミア品を作り続けなければならない。
リバーシの方は最近落ち着いてきているが、チェスは作るのにかなり時間が必要なので、森に入ってモンスターを狩る日じゃない休日は朝から夜まで殆どチェス作りに時間を使っている。
お陰様で寝る時は直ぐに夢の中へ飛び立てる。
しかし……最近はかなり疲れていると自覚していた。
「別に訓練したりモンスターと戦う分には問題なさそう……だけど、さすがに疲労が溜まってきたかも」
珍しく大きな疲れを感じる。
だが、自身が駒とボードを作ることによって膨大な金額が懐に入ってくる。
既にリバーシのお陰で懐は熱々ではあるが、入ってくるならば作業を惜しまない。
徐々に社畜精神が身についてしまっていた。
「というか、もう国王陛下にデッドソルジャーたちが届いてるよな」
国王陛下専用の駒以外にも、普通のポーンたちも一緒に送ったので勝負することはできる。
「気に入ってもらえたか? 父さん達には好評だったから大丈夫だと思うんだが……」
専用の駒という時点で、プレミア品感満載なのは間違いない。
アラッドが必死に作った駒を受け取った国王はいったいどんな反応をしたのか……国王がリグラットからチェスを受け取ったのは二日前のことだった。
「国王陛下、こちらが国王陛下の為だけに作られた専用の駒でございます」
「ほぅ……俺専用、か」
ボードの上には通常の駒とは別に、文字通り国王専用の駒が置かれていた。
「こちらがデッドソルジャー、順にナイトライダー、グラスホッパー、バッファロー、クイーンスカーレッド。そして……キング・オブ・キングとなります」
「全て通常駒の上位版、といったところか」
国王はゆっくりと駒を手に取る。
そして通常の駒と自身専用の駒と見比べ、ニヤッと満足げな笑みを浮かべた。
「ふっふっふ、俺専用の駒……リグラットよ、俺専用の駒ということはチェスの制作者、俺以外にこの駒を作らないという訳か」
「えぇ、その通りでございます。製作者様は国王陛下に相応しい駒を作るために持てる力を全て振り絞ったとおっしゃっていました」
「そうかそうか……ふふ、リバーシの制作者にここまで特別扱いされるのは光栄だな」
公務の傍ら、空いた時間を使っては側近の者たちと勝負することが多い。
勝負に熱中し過ぎるあまり、書類仕事が溜まってしまうことも稀にある。
のちに作った積み木という主に子供が遊ぶ娯楽ではあるが、それを子供に遊ばせる意図には驚かせられた。
故に、国王はリバーシの制作者に敬意を持っていた。
「リグラットよ、ルールを教えてくれ」
「かしこまりました」
アラッドがルールを教えられ、洋紙にメモしているので一つも間違えることなく国王に伝え終ると、すぐさま一戦勝負しようという流れになった。
国王からの頼みということもあり、リグラットは勿論引き受けた。
相手が王族なので接待プレイをしなければならない……という考えにはならない。
ルールはアラッドに教えてもらったので頭の中に入っているが、王城に入るまで駒には全く触れていないんで、経験値を積んでいない。
リグラットはルールを知っていても素人と変わらないので、接待プレイもクソもなく国王と手探り状態で駒を動かし始めた。
そしてまずは一戦と言っていたが、気付けば時間は流れ……二人は三時間程チェスに熱中して駒を動かしていた。
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