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九十六話 七歳にしてブラック?

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「父さん、そろそろやめた方が良いんじゃない?」

「む、そうかい? 私としてはもう少しアラッドと戦いたいのだが」

「アラッド様の言う通りですよ、フール様。リバーシの時と同じ流れになっています」

初めてフールとチェスで対決した結果、現在アラッドの四勝二敗。
意外とフールが今のところ勝ち越せていなかった。

「ふぅーーーー。確かに、仕事を疎かにする訳にはいかないね。アラッド、これが国王陛下に献上する品ということで良いんだね」

「はい、そうです。リグラットさんを通して国王陛下に受け取ってもらおうと」

「分かった。絶対に他の者に垂れないよう、僕の方から伝えておくよ」

「よろしくお願いします」

アラッドはリグラットのことが決して嫌いではないが、会って話を始めるとついつい長くなってしまう。
その会話は会話で楽しいのだが、その日の内にやろうと思っていたことをする時間が消えてしまうので、会わないで済むならそれはそれでという気持ちが多少なりともあった。

「それにしても……こっちのポーンやナイトはやっぱりカッコいいね」

「そ、そうですか? そう言ってもらえると嬉しいです」

心の底から出た本音だった。
アラッドは日々の積み重ねにより、着々と錬金術……そして木工のスキル練度が上がってきている。

だが、創作センスはスキルレベルが上がったとしても、同時に上がるものではない。

「う~~~~ん……ねぇ、これって僕にも一つ造ってもらえないかな」

「それは……ダメですね」

ちょっとだけ悩んだが、直ぐに断った。
答えはフールも分かっていたので、物凄く落ち込むことはない……が、少々残念そうな顔をしている。

「そっか、そうだよね」

「はい。これは国王陛下専用のチェスですから」

国王陛下だけが持つ特別な駒と盤。
アラッドが直々に造ったプレミアム品、などとは価値が違う。

デッドソルジャー、ナイトライダー、グラスホッパー、バッファロー、クイーンスカーレッド、キング・オブ・キング。
これらはアラッドがわざわざ国王陛下の為だけに造った一品。

それは父親であるフールであっても、同じ物を持つことは出来ない。
盤にきっちりと発案者が造ったという証明の印が施されている。

「ふふ、国王陛下が羨ましいよ……二人ともそう思わないかい」

「そうですね。この世にたった一つしかない……発案者であるアラッド様が自らの手で造った至高の一品。そう考えると、カッコ良さなどは置いといて是非とも欲しいという欲は湧いてしまいますね」

「自分はフール様の気持ち、大変良く解ります! こちらの通常用の駒も素晴らしいですが、国王陛下専用の駒のカッコ良さ……是非とも欲しいと思ってしまいます」

この先、チェスが広がり始めれば国王陛下が持つアラッドと特性のチェスの価値は爆上がり必死。
そのチェスの為だけに王城へ侵入……なんてアホなことをする馬鹿が絶対に現れないとも言い切れない。

なにはともあれ、アラッドが作った国王陛下専用のチェスは好評だった。

「はぁ~~~~~~、疲れた」

特別な駒を作り終え、その後フールと頭を使って六戦もしたアラッドの体力と精神はギリギリの状態だった。

(やっぱり物を作るのって、対人戦やモンスターと戦うのとは別の疲労感があるよな……達成感もあるんだけどさ)

思い描いていたチェスが完成し、それを褒めてもらえた。
制作者としてこれほど喜ばしいことはない。

だが、リバーシ以外のボードゲームを作ってしまったアラッドに前回と同じく、大量に通常版のアラッド自身が作ったプレミア品を作らなければならなくなる。
しかもリバーシと違い、一つの商品を作るのにかなりの時間が掛かってしまう。

(……父さんに、国王陛下に送るのはもう少し後にしてもうように頼まないと)

品切れにならないように、早い段階でリグラットにこういった商品を作ったという説明はしなければならない。
ボードや駒の大きさに関しては正確に測ったメモが残っているので、他の職人が作るのには問題無い。

ただ、それでもプレミア品はアラッドが作った物でなければ意味がない。
アラッドはまだ七歳だが、少々忙しいブラックな生活を送ることになった。
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