94 / 984
九十四話 何度も失敗
しおりを挟む
「ふぅ、こんな感じで良いかな」
オーアルドラゴンとの交渉に成功し、パーシブル家の屋敷からオーアルドラゴンの住処まで一本道の通路が開通されてからそれなりに月日が経ったが、未だにアラッドは鉱山内を探索できていない。
一応フールにクロと二人で探索しても良いかと尋ねたが、さすがに却下された。
その場にはアリサもいたが、息子の成長を嬉しく思うアリサでも流石に苦い表情になった。
二人とも本人にアラッドの強さは良く解かっていると伝えるが、それでもまだ早いと伝えられた。
だが、アラッドは多分却下されるだろうと分かっていたので、特に落ち込むことはなかった。
しかし鉱石の扱いに慣れたいと思い、冒険者ギルドに鉱石の採掘依頼はちょこちょこ頼んでいた。
勿論、依頼達成金額はアラッドの懐から出している。
そしてアラッドが普段通りの生活を送っている中、リバーシによる国内大会が行われた。
優勝賞金は白金貨十枚とアラッド自ら作ったトロフィーが送られた。
その大会に関してアラッドは殆ど関わっていない。
しかし大会は不正や裏での暗躍などが行われることなく、無事に終了した。
白金貨十枚というのは大貴族からすれば大した金額ではないかもしれないが、一般市民や貴族の子息や令嬢にとっては決して低くない。
この世で初めて生み出されたゲームということもあり、人生経験が長い大人の方が有利ということはない。
考える力は上かもしれないが、ある程度の場数を踏めばその差もなくなる。
事実、大会の優勝者は伯爵家の令息、歳は十七。
国内最大の大会初代優勝者が十七歳の令息に決まり、開催された王都はお祭り騒ぎ状態となった。
そしてリグラットを中心にリバーシを職業にしようという動きがあり、一度アラッドの元に尋ねてきた。
実はリバーシを職業にしたい……そんな願いを聞き、アラッドは少しも考える素振りをせずに承諾した。
恩を返すため、自分の懐を温めるため。
色々と理由はあったが、リバーシというボードゲームが職業になるのは嬉しく思った。
ただ、ここでリグラットに一つ条件を加えてほしいと頼んだ。
現在新しいボードゲームを制作している。
国王には国王だけの特別な物を用意しようと考えている。
その特別な物を贈呈する代わりに、これから行われる試合や大会で不正が発覚した場合。
もしくは協会の人間になるために裏で暗躍し、正規のルートを踏まずに地位を得た者は即座に罰して欲しいと頼んだ。
本音のところは即刻死刑でも良いのではと思ったが、さすがにやり過ぎかと思って言葉には出さなかった。
リグラットはアラッドが現在新しく制作しているボードゲームに興味を惹かれたが、一旦頭から切り離して絶対に国王に伝え、ルールを定めると宣言した。
そんな話し合いがあってから数か月後、アラッドはようやく新しいボードゲームを作り終えた。
「まぁ、こんなところだよな」
リバーシに続いて有名なボードゲーム、チェス。
これに関しては制作するのにかなり時間が掛かった。
何故なら、単純にリバーシと違って制作する駒が複雑だから。
幸いにもルールなどは覚えていたので、人に伝えるのは全く問題無い。
ただ、完璧な駒を作るには当初の予定より遥かに時間を必要になった。
途中で何度も作りかけの駒を破壊してしまうこともあった。
しかし完全に作り終えるのに予定より大幅な時間が掛かったのは、もう一つ理由がある。
それは国王に贈呈する特別な駒を用意するためだった。
チェスには特別な駒が存在する。
特別になればどう動くのか、そういった細かい内容は覚えていない。
しかし、そういった駒が存在するというのは覚えていたので、通常の駒を作り終えたアラッドはそちらの作業に没頭。
他の駒と差別化を図る為に細かく作りこもうとしたが、何度も何度も破壊してしまう。
一度同じ駒を作れたとしても、二度目は一瞬のミスで理想通りの駒にならない……なんてことが何度も起こった。
「これなら……十分国王様用の駒、って言えるよな」
アラッドの目の前には自信作と言える十六個の駒がボードの上に並べられていた。
オーアルドラゴンとの交渉に成功し、パーシブル家の屋敷からオーアルドラゴンの住処まで一本道の通路が開通されてからそれなりに月日が経ったが、未だにアラッドは鉱山内を探索できていない。
一応フールにクロと二人で探索しても良いかと尋ねたが、さすがに却下された。
その場にはアリサもいたが、息子の成長を嬉しく思うアリサでも流石に苦い表情になった。
二人とも本人にアラッドの強さは良く解かっていると伝えるが、それでもまだ早いと伝えられた。
だが、アラッドは多分却下されるだろうと分かっていたので、特に落ち込むことはなかった。
しかし鉱石の扱いに慣れたいと思い、冒険者ギルドに鉱石の採掘依頼はちょこちょこ頼んでいた。
勿論、依頼達成金額はアラッドの懐から出している。
そしてアラッドが普段通りの生活を送っている中、リバーシによる国内大会が行われた。
優勝賞金は白金貨十枚とアラッド自ら作ったトロフィーが送られた。
その大会に関してアラッドは殆ど関わっていない。
しかし大会は不正や裏での暗躍などが行われることなく、無事に終了した。
白金貨十枚というのは大貴族からすれば大した金額ではないかもしれないが、一般市民や貴族の子息や令嬢にとっては決して低くない。
この世で初めて生み出されたゲームということもあり、人生経験が長い大人の方が有利ということはない。
考える力は上かもしれないが、ある程度の場数を踏めばその差もなくなる。
事実、大会の優勝者は伯爵家の令息、歳は十七。
国内最大の大会初代優勝者が十七歳の令息に決まり、開催された王都はお祭り騒ぎ状態となった。
そしてリグラットを中心にリバーシを職業にしようという動きがあり、一度アラッドの元に尋ねてきた。
実はリバーシを職業にしたい……そんな願いを聞き、アラッドは少しも考える素振りをせずに承諾した。
恩を返すため、自分の懐を温めるため。
色々と理由はあったが、リバーシというボードゲームが職業になるのは嬉しく思った。
ただ、ここでリグラットに一つ条件を加えてほしいと頼んだ。
現在新しいボードゲームを制作している。
国王には国王だけの特別な物を用意しようと考えている。
その特別な物を贈呈する代わりに、これから行われる試合や大会で不正が発覚した場合。
もしくは協会の人間になるために裏で暗躍し、正規のルートを踏まずに地位を得た者は即座に罰して欲しいと頼んだ。
本音のところは即刻死刑でも良いのではと思ったが、さすがにやり過ぎかと思って言葉には出さなかった。
リグラットはアラッドが現在新しく制作しているボードゲームに興味を惹かれたが、一旦頭から切り離して絶対に国王に伝え、ルールを定めると宣言した。
そんな話し合いがあってから数か月後、アラッドはようやく新しいボードゲームを作り終えた。
「まぁ、こんなところだよな」
リバーシに続いて有名なボードゲーム、チェス。
これに関しては制作するのにかなり時間が掛かった。
何故なら、単純にリバーシと違って制作する駒が複雑だから。
幸いにもルールなどは覚えていたので、人に伝えるのは全く問題無い。
ただ、完璧な駒を作るには当初の予定より遥かに時間を必要になった。
途中で何度も作りかけの駒を破壊してしまうこともあった。
しかし完全に作り終えるのに予定より大幅な時間が掛かったのは、もう一つ理由がある。
それは国王に贈呈する特別な駒を用意するためだった。
チェスには特別な駒が存在する。
特別になればどう動くのか、そういった細かい内容は覚えていない。
しかし、そういった駒が存在するというのは覚えていたので、通常の駒を作り終えたアラッドはそちらの作業に没頭。
他の駒と差別化を図る為に細かく作りこもうとしたが、何度も何度も破壊してしまう。
一度同じ駒を作れたとしても、二度目は一瞬のミスで理想通りの駒にならない……なんてことが何度も起こった。
「これなら……十分国王様用の駒、って言えるよな」
アラッドの目の前には自信作と言える十六個の駒がボードの上に並べられていた。
213
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる