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九十話 試していた
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「お主、名はなんという」
「アラッド・パーシブルです」
「アラッドか……実を言うとな、お主らがここまで来る力があるかどうか試していた」
オーアルドラゴンはゴーレム系のモンスターを支配し、敢えてアラッドたちを襲う様に仕向けていた。
ドラゴン系のモンスター全てがその様な能力を持つわけではないが、オーアルドラゴンは低ランクのモンスター……最大Cランクまでの鉱石や岩系のモンスターを支配することができる。
「なるほど。ここに来るまで襲ってくるモンスターの数が多かったのはそういった理由があったのですね」
伝えられた事実に対し、フールは特に怒った様子を見せない。
それはアラッドも同じだった。
襲ってくるモンスターが多いとは感じたが、倒せない敵ではない。
誰か負傷者や死者が出ることもなかった。
大惨事にするという考えがオーアルドラゴンから感じられないという事もあり、二人はその事実を素直に受け入れた。
二人を守護する存在である騎士たちはそんな理由があったのかと驚くが、憤慨することはなかった。
本日鉱山内で遭遇したモンスターは全て騎士一人でも対処できるこたいばかり。
そしてそんなモンスターを殆どアラッドとクロが仕留めたということもあり、オーアルドラゴンに対して怒りが湧くことはない。
「お主らは我が与えた試練を乗り越えた、ということだ……ここに来たのは、我になにか頼みがあるからなのだろう。それを叶えるかどうかはさておき、まずは話してみよ」
オーアルドラゴンの前には今まで多くの人族が訪れた。
ただ、その殆どが自身に対して敵意を持つ者ばかり。
出会い頭に強力な斬撃や刺突、凶悪な攻撃魔法をぶっ放してくる者が大半。
人はそういった者ばかりではないというのは分かっているが、オーアルドラゴンの素材欲しさに多くの戦闘職が訪れては攻撃して殺しに掛かる。
しかし目の前の人族たちからは敵意や殺意を全く感じられない。
アラッドの傍にいるクロだけは警戒し続けているが、それでも自分から襲い掛かろうとする意志は感じられなかったので、何かしら相談や頼み事があるのだろうと予想した。
「それでは……オーアルドラゴン殿、あなたには是非この鉱山を住処にして頂きたい」
「…………ん? ここに住んでいても良いのか?」
「はい、その通りです。あなたがここに住み始めてから、廃鉱となったこの鉱山が復活しました」
「……うむ。確かに我にはそのような特性がある」
オーアルドラゴンが滞在する地域で鉱石が生まれやすくなる。
仮に鉱山や岩山がない草原に長い間滞在したとしても、地面を掘れば鉱石が発掘される。
オーアルドラゴンが滅多に一目に触れる場所に現れないというのもあるが、この特性はあまり世間では知られていない。
故に、素材目当てで狩ろうとする者が多い。
仮にその特性を知っている者が近づこうとしても、権力者はドラゴンが危険な人物だと解っていながらも心のどこかで自分より下の存在として見ている。
相手の表情から何を考えているのか読むことができるドラゴンとしては、そんな相手と交渉する必要だと全く感じない。
だが、目の前の人物たちからは過去に遭遇してきた馬鹿や屑どもとは違う雰囲気を感じる。
「対価は用意しますので、是非この鉱山を拠点にしてください」
「ふむ、対価とな……それは気になるな。詳しく教えてもらっても良いか」
領地に住み着くドラゴンに対して我が身が大事という理由で一定期間ごとに生贄を捧げる地域もある。
ただ、ドラゴンの殆どは人の肉よりも他のモンスターの肉が美味いと感じている。
稀に人肉を好み、他の獲物よりも人を優先して食らおうとするモンスターは確かに存在するが、殆どのドラゴンは生きた人を捧げられても困るだけだった。
「アラッド・パーシブルです」
「アラッドか……実を言うとな、お主らがここまで来る力があるかどうか試していた」
オーアルドラゴンはゴーレム系のモンスターを支配し、敢えてアラッドたちを襲う様に仕向けていた。
ドラゴン系のモンスター全てがその様な能力を持つわけではないが、オーアルドラゴンは低ランクのモンスター……最大Cランクまでの鉱石や岩系のモンスターを支配することができる。
「なるほど。ここに来るまで襲ってくるモンスターの数が多かったのはそういった理由があったのですね」
伝えられた事実に対し、フールは特に怒った様子を見せない。
それはアラッドも同じだった。
襲ってくるモンスターが多いとは感じたが、倒せない敵ではない。
誰か負傷者や死者が出ることもなかった。
大惨事にするという考えがオーアルドラゴンから感じられないという事もあり、二人はその事実を素直に受け入れた。
二人を守護する存在である騎士たちはそんな理由があったのかと驚くが、憤慨することはなかった。
本日鉱山内で遭遇したモンスターは全て騎士一人でも対処できるこたいばかり。
そしてそんなモンスターを殆どアラッドとクロが仕留めたということもあり、オーアルドラゴンに対して怒りが湧くことはない。
「お主らは我が与えた試練を乗り越えた、ということだ……ここに来たのは、我になにか頼みがあるからなのだろう。それを叶えるかどうかはさておき、まずは話してみよ」
オーアルドラゴンの前には今まで多くの人族が訪れた。
ただ、その殆どが自身に対して敵意を持つ者ばかり。
出会い頭に強力な斬撃や刺突、凶悪な攻撃魔法をぶっ放してくる者が大半。
人はそういった者ばかりではないというのは分かっているが、オーアルドラゴンの素材欲しさに多くの戦闘職が訪れては攻撃して殺しに掛かる。
しかし目の前の人族たちからは敵意や殺意を全く感じられない。
アラッドの傍にいるクロだけは警戒し続けているが、それでも自分から襲い掛かろうとする意志は感じられなかったので、何かしら相談や頼み事があるのだろうと予想した。
「それでは……オーアルドラゴン殿、あなたには是非この鉱山を住処にして頂きたい」
「…………ん? ここに住んでいても良いのか?」
「はい、その通りです。あなたがここに住み始めてから、廃鉱となったこの鉱山が復活しました」
「……うむ。確かに我にはそのような特性がある」
オーアルドラゴンが滞在する地域で鉱石が生まれやすくなる。
仮に鉱山や岩山がない草原に長い間滞在したとしても、地面を掘れば鉱石が発掘される。
オーアルドラゴンが滅多に一目に触れる場所に現れないというのもあるが、この特性はあまり世間では知られていない。
故に、素材目当てで狩ろうとする者が多い。
仮にその特性を知っている者が近づこうとしても、権力者はドラゴンが危険な人物だと解っていながらも心のどこかで自分より下の存在として見ている。
相手の表情から何を考えているのか読むことができるドラゴンとしては、そんな相手と交渉する必要だと全く感じない。
だが、目の前の人物たちからは過去に遭遇してきた馬鹿や屑どもとは違う雰囲気を感じる。
「対価は用意しますので、是非この鉱山を拠点にしてください」
「ふむ、対価とな……それは気になるな。詳しく教えてもらっても良いか」
領地に住み着くドラゴンに対して我が身が大事という理由で一定期間ごとに生贄を捧げる地域もある。
ただ、ドラゴンの殆どは人の肉よりも他のモンスターの肉が美味いと感じている。
稀に人肉を好み、他の獲物よりも人を優先して食らおうとするモンスターは確かに存在するが、殆どのドラゴンは生きた人を捧げられても困るだけだった。
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