89 / 992
八十九話 倒したドラゴンの名は
しおりを挟む
「おらッ!!!!!」
現在ロックゴーレムと戦闘中のアラッドはフールに言われた通り、鋼鉄の剛剣ではなく素手を使って戦っている。
ゴーレムよりワンランク上のCランクモンスターであるロックゴーレムだが、ゴーレムと同じく基本的なステータスは攻撃力と防御力が高く、素早さが低い。
ワンランク上がったCランクモンスターとはいえ、ロックゴーレムの素早さでは強化系スキルを使ったアラッドとクロの速さには追いつけない。
動きは鈍いが堅い。
こういった敵との戦いも悪くない。
だが、ここでアラッドも騎士たちと同じ疑問を抱いた。
(なんか、モンスターと遭遇する回数がちょっと多いような気がするんだが……気のせいか?)
森の中でモンスターを探索している時よりも、遭遇する回数が多い。
偶々という可能性もあるが、普段と比べて多いのは確かだった。
Dランクのアイアンアントやコボルトの上位種。
Eランクのバインドスネークやサックバットにコボルトの通常種。
明らかに遭遇したモンスターの数は多い……が、全てきっちり倒している。
(騎士や父さんを見てビビッて逃げるような個体がいても良いと思うんだが……それにこっちはブラックウルフのクロがいるんだ。モフモフしてて可愛いところもあるが、Cランクのモンスターだ。Eランクのコボルトとかバインドスネークは逃げたりするのが普通だと思うんだけどな)
何事にも例外は存在する。
単純に襲ってきたモンスターたちが力の差を見抜けない間抜けだった場合もある。
遭遇してきたモンスターが全て襲ってくるというのはアラッドの経験上、決して珍しくない。
しかし襲ってきた数と好戦的な様子を見て、やはり疑問を抱かざるを得なかった。
(偶々か……もしくはモンスターを操ってる特別な個体がいるとか? どっちの可能性も否定出来ないけど……まっ、もう考えても仕方ないよな)
ついにアラッドたちはオーアルドラゴンの前に到着した。
(ッ!!!!! な、なんて迫力なんだ!!?? このドラゴンの威圧感に比べれば、俺が今まで戦ってきたモンスターたちは全て三流四流がいいところだ……ただ座っているだけで人にここまで迫力を感じさせるのか……生まれながらの強者ってやつなのか?)
オーアルドラゴンは特に威圧感を出したり、殺気や敵意を放っているつもりはない。
だが、生まれ持ったオーラや外見による迫力がアラッドたちに襲い掛かる。
しかしこの中で一人、フールだけが表情を崩さずに立っていた。
「……ふむ、我の前に立つ資格はあるようだな」
「ッ!!!」
目の前のドラゴンが人の言葉を喋った。
人語や人化のスキルを習得しているという話は事前に聞いていた。
だが、実際にモンスターの言葉を話す個体とは初めて遭遇した。
「初めまして、オーアルドラゴン。私はこの辺り一帯を治める領主、フール・パーシブルと申します」
完全に会話が出来る個体だと分かり、フールは失礼がないようにこちらから自己紹介を行う。
「ほぅ……人族にしてはまともな態度だな。しかしフール・パーシブル……どこかで聞いた名だな。しばし待て」
フール・パーシブル。
この名はオーアルドラゴンはどこかで聞いたことがある。
一分ほどじっくり思い出すことに集中し、やっとその名をどこで聞いたのかを思い出す。
「ふむ、思い出した。思えは確か少し前に暴風竜、ボレアスをソロで倒した人間か」
「ッ!!!! ドラゴンに名を知られているとは、光栄です」
暴風竜ボレアス。
Bランクの風竜の上位種にあたる風属性のドラゴン。
フールが副騎士団長時代、騎士団に討伐命令が下されたが最終的にはフール一人で倒すという状況になり、一躍フールの名を広めることになった一件。
この一頭と一人の戦いを離れた場所から観ていた一体のドラゴンがいた。
「轟雷竜、ボルディーアスがお主らの戦いを観ておってな。その戦いぶりを聞かされた。あやつが誰かを褒めるのは非常に珍しい……そして、実際に目にすると解る。人間の中でもずば抜けて強いな」
「まだまだ若輩のみです」
「謙遜する必要はない。あやつは戦うことが至高と考えているバトル馬鹿だが、実力は確かなものだった。それをたかだが二十数年しか生きていない者が倒すのは快挙と言えるだろう……お主の子供であろうそやつがその歳で強いのも頷ける」
オーアルドラゴンの意識がフールからアラッドに変更され、心臓を掴まれた様な感覚に襲われた。
現在ロックゴーレムと戦闘中のアラッドはフールに言われた通り、鋼鉄の剛剣ではなく素手を使って戦っている。
ゴーレムよりワンランク上のCランクモンスターであるロックゴーレムだが、ゴーレムと同じく基本的なステータスは攻撃力と防御力が高く、素早さが低い。
ワンランク上がったCランクモンスターとはいえ、ロックゴーレムの素早さでは強化系スキルを使ったアラッドとクロの速さには追いつけない。
動きは鈍いが堅い。
こういった敵との戦いも悪くない。
だが、ここでアラッドも騎士たちと同じ疑問を抱いた。
(なんか、モンスターと遭遇する回数がちょっと多いような気がするんだが……気のせいか?)
森の中でモンスターを探索している時よりも、遭遇する回数が多い。
偶々という可能性もあるが、普段と比べて多いのは確かだった。
Dランクのアイアンアントやコボルトの上位種。
Eランクのバインドスネークやサックバットにコボルトの通常種。
明らかに遭遇したモンスターの数は多い……が、全てきっちり倒している。
(騎士や父さんを見てビビッて逃げるような個体がいても良いと思うんだが……それにこっちはブラックウルフのクロがいるんだ。モフモフしてて可愛いところもあるが、Cランクのモンスターだ。Eランクのコボルトとかバインドスネークは逃げたりするのが普通だと思うんだけどな)
何事にも例外は存在する。
単純に襲ってきたモンスターたちが力の差を見抜けない間抜けだった場合もある。
遭遇してきたモンスターが全て襲ってくるというのはアラッドの経験上、決して珍しくない。
しかし襲ってきた数と好戦的な様子を見て、やはり疑問を抱かざるを得なかった。
(偶々か……もしくはモンスターを操ってる特別な個体がいるとか? どっちの可能性も否定出来ないけど……まっ、もう考えても仕方ないよな)
ついにアラッドたちはオーアルドラゴンの前に到着した。
(ッ!!!!! な、なんて迫力なんだ!!?? このドラゴンの威圧感に比べれば、俺が今まで戦ってきたモンスターたちは全て三流四流がいいところだ……ただ座っているだけで人にここまで迫力を感じさせるのか……生まれながらの強者ってやつなのか?)
オーアルドラゴンは特に威圧感を出したり、殺気や敵意を放っているつもりはない。
だが、生まれ持ったオーラや外見による迫力がアラッドたちに襲い掛かる。
しかしこの中で一人、フールだけが表情を崩さずに立っていた。
「……ふむ、我の前に立つ資格はあるようだな」
「ッ!!!」
目の前のドラゴンが人の言葉を喋った。
人語や人化のスキルを習得しているという話は事前に聞いていた。
だが、実際にモンスターの言葉を話す個体とは初めて遭遇した。
「初めまして、オーアルドラゴン。私はこの辺り一帯を治める領主、フール・パーシブルと申します」
完全に会話が出来る個体だと分かり、フールは失礼がないようにこちらから自己紹介を行う。
「ほぅ……人族にしてはまともな態度だな。しかしフール・パーシブル……どこかで聞いた名だな。しばし待て」
フール・パーシブル。
この名はオーアルドラゴンはどこかで聞いたことがある。
一分ほどじっくり思い出すことに集中し、やっとその名をどこで聞いたのかを思い出す。
「ふむ、思い出した。思えは確か少し前に暴風竜、ボレアスをソロで倒した人間か」
「ッ!!!! ドラゴンに名を知られているとは、光栄です」
暴風竜ボレアス。
Bランクの風竜の上位種にあたる風属性のドラゴン。
フールが副騎士団長時代、騎士団に討伐命令が下されたが最終的にはフール一人で倒すという状況になり、一躍フールの名を広めることになった一件。
この一頭と一人の戦いを離れた場所から観ていた一体のドラゴンがいた。
「轟雷竜、ボルディーアスがお主らの戦いを観ておってな。その戦いぶりを聞かされた。あやつが誰かを褒めるのは非常に珍しい……そして、実際に目にすると解る。人間の中でもずば抜けて強いな」
「まだまだ若輩のみです」
「謙遜する必要はない。あやつは戦うことが至高と考えているバトル馬鹿だが、実力は確かなものだった。それをたかだが二十数年しか生きていない者が倒すのは快挙と言えるだろう……お主の子供であろうそやつがその歳で強いのも頷ける」
オーアルドラゴンの意識がフールからアラッドに変更され、心臓を掴まれた様な感覚に襲われた。
247
お気に入りに追加
6,090
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる