76 / 1,023
七十六話 指名された騎士は……
しおりを挟む
「ほぅ……そういえばフール殿がパーティーでよく自慢していると聞いたことがあるが……その話が事実ということか」
「勿論事実よ。この子は既に特別許可を貰ってモンスターと戦ってるのよ」
アリサはフールと同じ様な態度と表情でアラッドの凄さを堂々と自慢した。
訓練を一旦中断した女性騎士たちがアラッドを見た第一印象として、弱そうには見えなかった。
なんなら、同年代の中ではトップクラスだろうとも感じた。
「確かま七歳だったか? その歳で既にモンスターと戦っているのは確かに凄いと言わざるをえない」
「森の中を探索する時は護衛と、仲間であるブラックウルフのクロがいるので、特に不安を感じることなく戦えています」
謙虚な姿勢を崩さず、事実を伝える。
最近はDランクやCランクのモンスターと戦うことが増えてきているが、それでも何かあった時……兵士やメイジたちの力は十分に通じる。
だが、女性騎士たちはアラッドの謙虚さではなくブラックウルフを従えていることに驚いた。
「……アラッド君はもしやテイマーの才能があるのか?」
「いや、どうでしょうか? クロを従魔にできたのは偶々なので、その辺りはちょっと……」
「そうか。中々持てる才能ではないからな……さて、うちの騎士団のメンバーと模擬戦を行うという話だったな」
「アラッドは強いわよ~~」
アリサは楽しそうな表情を全く崩さない。
それに対して、女性騎士はアリサが若干子煩悩過ぎるのではと思っていた。
アリサの知人であるディーネもアラッドがどれほど強いのか、正確には解っていない。
だが、アリサが自分の息子を贔屓し過ぎるとも思えない。
「……よし」
団員のステータスは頭の中に入っており、適当な人物を選んだ。
「モーナ、お前がアラッド君の相手をしてくれ」
「わ、分かりました」
ディーネに指名された女性騎士、モーナは昨年騎士になった騎士歴二年目。
しかし男に勝るとも劣らない身体能力を持ち、新人騎士の中でも頭一つ抜けた実力を持つ。
(……ず、随分と小さないのにデカい人だな)
アラッドの前に現れた騎士の身長は百五十センチジャスト。
女性騎士の中でもかなり低い。
だが、男を虜にする部分だけは突出していた。
(皮鎧の上からでも大きいのが分かる……F、G? いや、Hカップか?)
ロリ巨乳という名が相応しい体型を持つディーネだが、その実力は本物。
だが、アリサは一つだけアラッドに伝えた。
「糸は攻撃に使ったら駄目だからね」
「勿論、分かってます」
小声でのやり取り故、他の団員には聞こえていない。
他の団員たちは応援の言葉でも伝えたのだろうと思っていたが、実際は手札の制約を命された。
「よろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!!」
アラッドはいつも通り平常心。
だが、モーナは侯爵家の令息だと知っているので、なるべく角が立たないように戦おうと考えている。
「それでは私が審判を務めさせてもらう。それでは……始め!!!」
合図が下ったタイミングでまずは様子見とばかりアラッドの方が攻め始めた。
「えっ!?」
まだ特にスキルは使っていない。
だが、見た目からは考えられない素の身体能力に驚かされていた。
既にモンスターと戦っているという話はしっかりと聞いていたので、レベルが一でないことは分かっていた。
しかし実際に剣を打ち込んできたアラッドのスピードやパワーを考えれば、まだまだ子供という考えは一気に吹き飛んだ。
「ふぅーーー、本当にびっくりしました」
「それはどうも」
これ以上は押し込めないと判断し、鍔迫り合いを止めるとグラストから教わった基本的な打ち込みを繰り返す。
基礎的な上段、中段、下段からの斬撃を打ち込もうとするが、全てを受け止められてしまう。
(やっぱり騎士になるだけあって、俺よりレベルが高いのは当然だよな。もしかしたら最初の一発で一撃KOとかできるかも、ってちょっと思ってたけど受け止めれたし)
(こ、この子レベルいくつなんですか!? どう考えても十は超えてますよね!! 七歳の子供がこんなに早く斬撃を打ち込めるなんて……もしかしてパーシブル侯爵家の子供たちは皆これぐらい強いんですか!!!??)
なんて恐ろしい一家なんだ!!! なんてアホな事をモーナは考えているが、色んな意味でアラッドが特別なだけだった。
「勿論事実よ。この子は既に特別許可を貰ってモンスターと戦ってるのよ」
アリサはフールと同じ様な態度と表情でアラッドの凄さを堂々と自慢した。
訓練を一旦中断した女性騎士たちがアラッドを見た第一印象として、弱そうには見えなかった。
なんなら、同年代の中ではトップクラスだろうとも感じた。
「確かま七歳だったか? その歳で既にモンスターと戦っているのは確かに凄いと言わざるをえない」
「森の中を探索する時は護衛と、仲間であるブラックウルフのクロがいるので、特に不安を感じることなく戦えています」
謙虚な姿勢を崩さず、事実を伝える。
最近はDランクやCランクのモンスターと戦うことが増えてきているが、それでも何かあった時……兵士やメイジたちの力は十分に通じる。
だが、女性騎士たちはアラッドの謙虚さではなくブラックウルフを従えていることに驚いた。
「……アラッド君はもしやテイマーの才能があるのか?」
「いや、どうでしょうか? クロを従魔にできたのは偶々なので、その辺りはちょっと……」
「そうか。中々持てる才能ではないからな……さて、うちの騎士団のメンバーと模擬戦を行うという話だったな」
「アラッドは強いわよ~~」
アリサは楽しそうな表情を全く崩さない。
それに対して、女性騎士はアリサが若干子煩悩過ぎるのではと思っていた。
アリサの知人であるディーネもアラッドがどれほど強いのか、正確には解っていない。
だが、アリサが自分の息子を贔屓し過ぎるとも思えない。
「……よし」
団員のステータスは頭の中に入っており、適当な人物を選んだ。
「モーナ、お前がアラッド君の相手をしてくれ」
「わ、分かりました」
ディーネに指名された女性騎士、モーナは昨年騎士になった騎士歴二年目。
しかし男に勝るとも劣らない身体能力を持ち、新人騎士の中でも頭一つ抜けた実力を持つ。
(……ず、随分と小さないのにデカい人だな)
アラッドの前に現れた騎士の身長は百五十センチジャスト。
女性騎士の中でもかなり低い。
だが、男を虜にする部分だけは突出していた。
(皮鎧の上からでも大きいのが分かる……F、G? いや、Hカップか?)
ロリ巨乳という名が相応しい体型を持つディーネだが、その実力は本物。
だが、アリサは一つだけアラッドに伝えた。
「糸は攻撃に使ったら駄目だからね」
「勿論、分かってます」
小声でのやり取り故、他の団員には聞こえていない。
他の団員たちは応援の言葉でも伝えたのだろうと思っていたが、実際は手札の制約を命された。
「よろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!!」
アラッドはいつも通り平常心。
だが、モーナは侯爵家の令息だと知っているので、なるべく角が立たないように戦おうと考えている。
「それでは私が審判を務めさせてもらう。それでは……始め!!!」
合図が下ったタイミングでまずは様子見とばかりアラッドの方が攻め始めた。
「えっ!?」
まだ特にスキルは使っていない。
だが、見た目からは考えられない素の身体能力に驚かされていた。
既にモンスターと戦っているという話はしっかりと聞いていたので、レベルが一でないことは分かっていた。
しかし実際に剣を打ち込んできたアラッドのスピードやパワーを考えれば、まだまだ子供という考えは一気に吹き飛んだ。
「ふぅーーー、本当にびっくりしました」
「それはどうも」
これ以上は押し込めないと判断し、鍔迫り合いを止めるとグラストから教わった基本的な打ち込みを繰り返す。
基礎的な上段、中段、下段からの斬撃を打ち込もうとするが、全てを受け止められてしまう。
(やっぱり騎士になるだけあって、俺よりレベルが高いのは当然だよな。もしかしたら最初の一発で一撃KOとかできるかも、ってちょっと思ってたけど受け止めれたし)
(こ、この子レベルいくつなんですか!? どう考えても十は超えてますよね!! 七歳の子供がこんなに早く斬撃を打ち込めるなんて……もしかしてパーシブル侯爵家の子供たちは皆これぐらい強いんですか!!!??)
なんて恐ろしい一家なんだ!!! なんてアホな事をモーナは考えているが、色んな意味でアラッドが特別なだけだった。
288
お気に入りに追加
6,108
あなたにおすすめの小説
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる