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七十五話 パーティーを抜け出して
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「ふぅーーーーー、さすがに腹一杯になってきたな」
それなりに食べる方であるアラッドだが、体はまだまだ子供。
胃袋に入る量は多くない。
少量ずつ食べて多くの料理を食べようとしていたが、限界が来てしまった。
(……パーティーはまだまだ続きそうだな)
退屈、その一言に限る。
特に友達をつくろうとも考えていないので、パーティー会場ですることが完全になくなってしまった。
パーティーが終了するまでどうしようか……呆然としてるアラッドにアリサが声を掛けた。
「ふふ、随分と暇そうだねアラッド」
「母さん……他の婦人たちとの話し合いに参加しなくて良いんですか」
「そういうアラッドこそ、同年代の男の子に声を掛けて友達をつくらなくても良いの?」
「友達は冒険者になってからでいいですよ」
実家を出て冒険者になるまで、同じ令息の友達をつくる気は欠片もない。
「アラッドらしい考え方だね~~~。でも、これから十五歳になるまで全くパーティーに参加しないなんてことはあり得ないよ」
「……えっ!?」
今回のパーティーに参加すれば、もう参加する必要はない。
そう考えていたアラッドにとっては完全に予想外の言葉。
いや、強制的に退屈を味わなければいけない宣告だった。
「アラッドは同年代の令息や令嬢に興味はないかもしれないけど、フールがあなたのことを自慢してるから、あなたに興味を持つ人は多い。だから、侯爵家より上の存在がアラッドに実際に会ってみたいという理由でパーティーを開催することもあるの」
「……無駄過ぎるのでは???」
「それがそんなことないのよ」
アラッドにその辺りの細かい事情は分からない。
だが、アリサの言う通り一人の少年に会ってみたい。
そんな理由でパーティーを開催しても、大貴族からすれば開催費用など大した痛手ではない。
「だから同じ令息の友達もつくっておいた方が良いと思うよ」
「……だとしても、自分からつくろうとは思わないかな。学園に入学するわけでもないし」
今後パーティーに参加することはあっても、美味い飯を食べること以外に興味はない。
そんな息子を見て小さく笑った後、アリサを手を繋いでアラッドと一緒にパーティーから抜け出した。
「か、母さん。抜け出しても良かったんですか?」
「えぇ、特に問題を起こして抜け出すわけではないから、フールに迷惑が掛かることもない。それより面白い場所に行きましょう」
アラッド一人だけで王城を動けば怪しいと思われるかもしれないが、アリサと同伴であればその様に考える者はいない。
王城に働く者にとって、アリサは良くも悪くも有名だった。
平民から侯爵夫人に成り上がった元冒険者。
副騎士団長をたぶらかした魔性の女など、当時王城では様々な話が飛び交っていた。
「母さん、何処に行くんですか」
「アラッドがきっと楽しいと思える場所よ。少なくとも、パーティー会場よりは楽しい場所ね」
言われるがままに母に付いて行くと、一つの訓練場に連れてこられた。
そこには騎士たちが……性格には、女性の騎士たちだけが訓練を行っていた。
「おっ、丁度良いわね」
「えっと……何が丁度良いんですか?」
「今訓練を行っている騎士たちのリーダーと知り合いなの。ほら、行くよ」
二人が訓練場に入ると、一人の女性騎士が視線を向ける。
先程まで厳しかった目がアリサを見つけると急に柔らかくなった。
「アリサじゃないか、急にどうしたんだ? 来てくれたことは勿論嬉しいが」
「フールと一緒にパーティーに参加してたけど、退屈だから息子と一緒に抜け出したの」
「むっ、その子供がアリサとフール殿の子供か……なるほど、確かに激情となったフール殿と似ているな」
先程と同じ事を言われ、アラッドは再度自分がそういう顔をてるのだと認識した。
ただ、強面な顔を決してアラッドは嫌っていなかった。
自分に強者である父と似ている部分がある。
それが分かるだけで自分の容姿が誇らしいと感じる。
「でしょ。そしてまだ七歳だけど超強いのだからさ……退屈を潰すために丁度良さそうな子とアラッドを戦わせてあげてくれない?」
騎士との模擬戦。
アラッドにとって現状、これ以上無い暇つぶし。
それなりに食べる方であるアラッドだが、体はまだまだ子供。
胃袋に入る量は多くない。
少量ずつ食べて多くの料理を食べようとしていたが、限界が来てしまった。
(……パーティーはまだまだ続きそうだな)
退屈、その一言に限る。
特に友達をつくろうとも考えていないので、パーティー会場ですることが完全になくなってしまった。
パーティーが終了するまでどうしようか……呆然としてるアラッドにアリサが声を掛けた。
「ふふ、随分と暇そうだねアラッド」
「母さん……他の婦人たちとの話し合いに参加しなくて良いんですか」
「そういうアラッドこそ、同年代の男の子に声を掛けて友達をつくらなくても良いの?」
「友達は冒険者になってからでいいですよ」
実家を出て冒険者になるまで、同じ令息の友達をつくる気は欠片もない。
「アラッドらしい考え方だね~~~。でも、これから十五歳になるまで全くパーティーに参加しないなんてことはあり得ないよ」
「……えっ!?」
今回のパーティーに参加すれば、もう参加する必要はない。
そう考えていたアラッドにとっては完全に予想外の言葉。
いや、強制的に退屈を味わなければいけない宣告だった。
「アラッドは同年代の令息や令嬢に興味はないかもしれないけど、フールがあなたのことを自慢してるから、あなたに興味を持つ人は多い。だから、侯爵家より上の存在がアラッドに実際に会ってみたいという理由でパーティーを開催することもあるの」
「……無駄過ぎるのでは???」
「それがそんなことないのよ」
アラッドにその辺りの細かい事情は分からない。
だが、アリサの言う通り一人の少年に会ってみたい。
そんな理由でパーティーを開催しても、大貴族からすれば開催費用など大した痛手ではない。
「だから同じ令息の友達もつくっておいた方が良いと思うよ」
「……だとしても、自分からつくろうとは思わないかな。学園に入学するわけでもないし」
今後パーティーに参加することはあっても、美味い飯を食べること以外に興味はない。
そんな息子を見て小さく笑った後、アリサを手を繋いでアラッドと一緒にパーティーから抜け出した。
「か、母さん。抜け出しても良かったんですか?」
「えぇ、特に問題を起こして抜け出すわけではないから、フールに迷惑が掛かることもない。それより面白い場所に行きましょう」
アラッド一人だけで王城を動けば怪しいと思われるかもしれないが、アリサと同伴であればその様に考える者はいない。
王城に働く者にとって、アリサは良くも悪くも有名だった。
平民から侯爵夫人に成り上がった元冒険者。
副騎士団長をたぶらかした魔性の女など、当時王城では様々な話が飛び交っていた。
「母さん、何処に行くんですか」
「アラッドがきっと楽しいと思える場所よ。少なくとも、パーティー会場よりは楽しい場所ね」
言われるがままに母に付いて行くと、一つの訓練場に連れてこられた。
そこには騎士たちが……性格には、女性の騎士たちだけが訓練を行っていた。
「おっ、丁度良いわね」
「えっと……何が丁度良いんですか?」
「今訓練を行っている騎士たちのリーダーと知り合いなの。ほら、行くよ」
二人が訓練場に入ると、一人の女性騎士が視線を向ける。
先程まで厳しかった目がアリサを見つけると急に柔らかくなった。
「アリサじゃないか、急にどうしたんだ? 来てくれたことは勿論嬉しいが」
「フールと一緒にパーティーに参加してたけど、退屈だから息子と一緒に抜け出したの」
「むっ、その子供がアリサとフール殿の子供か……なるほど、確かに激情となったフール殿と似ているな」
先程と同じ事を言われ、アラッドは再度自分がそういう顔をてるのだと認識した。
ただ、強面な顔を決してアラッドは嫌っていなかった。
自分に強者である父と似ている部分がある。
それが分かるだけで自分の容姿が誇らしいと感じる。
「でしょ。そしてまだ七歳だけど超強いのだからさ……退屈を潰すために丁度良さそうな子とアラッドを戦わせてあげてくれない?」
騎士との模擬戦。
アラッドにとって現状、これ以上無い暇つぶし。
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