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六十九話 頼もしい相棒

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「……アラッド様はずいぶんお強いですね」

「暇の時はそれなりにやってるからな」

騎士に頼んで食べやすい軽食と飲み物を買ってきてもらい、第三王女とリバーシをしながら護衛たちが見つけてくれるのを待つ。

相手が第三王女なので、接待プレイをした方が良いのかと一緒思ったが、普段の態度で接してほしいと頼まれたので特に手加減することなく相手をしている。

だが、フィリアスもそれなりにリバーシで遊んでいるので、アラッドが一手間違えれば一気に逆転されてしまう場面が多い。

「私も良くリバーシで遊んでいますが、アラッド様は私以上に遊んでいるのですか?」

「……普段は鍛錬したり、モンスターを相手に戦っている。それ以外の時間は空いている者がいれば、リバーシの相手をしてもらうことが多い」

「まぁ! その歳で既にモンスターと戦っているのですね」

「父さんが特別に許可をくれてな。それに今ここにはいないが、クロという頼りになる相棒が俺にいる」

「クロ、ですか……もしかして従魔のお名前ですか?」

おそらく自分と年齢が大して変わらないであろう男の子がモンスターと戦っている。
その内容だけでも驚いた。

それに加えて、頼りになる従魔を得ている。
この事実に驚かずにはいられなかった。

「あぁ、ブラックウルフの子供だ。いや、もう子供ではないか? 最近は体が大きくなってきたからな」

「ブラックウルフの子供、ですか……大人しいのですか?」

「普段は大人しいぞ。妹と弟の遊び相手になってくれることもある。だが、戦いの場では頼れる相棒だ。その牙で敵を食い千切り、鋭い爪で引き裂く。さすがCランクのモンスターって感じだな」

「頼れる相棒……なんか良いですね、そういうの」

フィリアスはこれからモンスターと戦う予定などないが、それでもクロのような存在を持つアラッドが羨ましいと感じた。

「……フィリアスは従魔が欲しいのか?」

「えっと、そういうわけではないのですが……でも、可愛らしい従魔は欲しい、ですね」

従魔が欲しい。その言葉を聞いてドラングがフールにドラゴンの卵を欲しいと頼み込んだ話を思い出した。

(あ、あれはかなり笑えたよな。ドラゴンの卵って……今考えても本当になんてものを頼み込んだんだよ、あの馬鹿は)

確かに高ランクの冒険者にそういった依頼を頼み込めるだけの金はパーシブル家にある。
だが、アラッドが作ったリバーシのお陰で余裕があるという点が大きいので、フールはドラングの要求を呑むわけにはいかなかった。

「それなら、モンスターの卵を欲しいと頼んでみたらどうだ。卵から生まれたモンスターは初めて顔を見た者を親と認識しやすい。そうすれば、なるべくリスクが少ない状態で従魔を得られる」

卵を取ってくるにしても、それ相応の労力が必要になる。
しかし王族の財力なら、問題無く達成報酬金を払える。

「そ、そうなのですね……ちょっと考えてみます」

「一人で結論が出ないなら、他の信頼できる人に相談すれば良い」

王城という権力の闇が渦巻いているであろう場所に、そんな人物がいるのか?

相談すれば良いと言った本人がそこを疑問に感じた。

(……いや、一人や二人ぐらいは相談できる人ぐらいいるよな)

実際にフィリアスには専属のメイドや、彼女専属の騎士団もいるので、信頼出来る人物は周囲に多い。

「そうですね。一人で考えて答えが出なければ、誰かに相談してみます。そういえば、アラッド様はどういった御用で王都に来たのですか?」

「ちょっと親の事情関連で王都に来ることになったんだ」

元々冒険者として活動するまで、王都に来る予定など全くなかった。
そして来たいとも思っていなかった……だが、フールが他家が主催するパーティーに参加した時にペラペラとアラッドの自慢話をしたことで、半ば強制的に今回のパーティーに参加しなければならなくなった。

(全く、父さんには後でもう一度これ以上パーティーで俺の自慢話をしないでほしいと言っておかないとな)

王都に来て、普不満だらけではない。
だが、これから感じるであろう息苦しさを想像すると、貴族の令息としてもう一度来たいとは思えなかった。
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