66 / 1,012
六十六話 兵は案外大したことない
しおりを挟む
「……とにかく大きいな」
初めて王都にやって来たアラッドの感想はその一言だった。
(父さんが治める領地の外壁も大きいけど、王都は完全にそれよりも大きい……まっ、この国で一番重要な都市なんだから当たり前か)
門に入る際、取り調べなどを行う兵士たちのレベルもそれなりに高い……とは感じなかった。
(もしかしてうちの兵士たちと同じぐらいか? 王都の門兵なんだからもっと強いかと思ってたけど、案外そんなことはないんだな)
王都に向かってモンスターが襲って来るということは殆どなく、一定の基準を満たせば兵士として雇われる。
だが、パーシブル家に仕える兵士たちは訓練だけではなく、狩りも行っているので少しずつだから確実にレベルを上げている。
(あれぐらいの兵士なら俺一人でも倒せそうだな)
絶対にそんなことはしないが、予想していたよりも兵の強さを感じなかったアラッドは思わずそんなことを考えてしまった。
「中もこれまた凄いな」
フールが治めている街も領地も負けていない。
そう思いたいところだが、色々と規模が違う。
この世界に来て魔法や武器など以外で、同じぐらいの驚きを感じた。
ただ、ここにやって来たのはパーティーに参加するためだということを思い出すと、湧き上がったテンションが直ぐに下がった。
(パーティーなぁ……楽しくないと思ってるから楽しくないのかもしれないけど、面倒な腹の探り合いとか絶対に向いてないんだよな)
まだ七歳児の令嬢や令息は腹の探り合いなど、基本的に情報戦は起こらない。
しかし権力者の子供だからこそ、マウントの取り合いはしょっちゅう行われている。
そういったやり取りをあまり気持ちいとは感じていないので、先日宣言した通り美味い料理だけ食べていたい。
(やっぱり楽しむのは無理だろうな……大人しく飯だけ食べて、権力や繋がり目当てでやって来るかもしれない令嬢は全てドラングに押し付けよう)
多くの異性かモテるのは、さぞかし気分が良いことだろう。
前世では特にモテた経験はないアラッドはそういった心地良さに憧れたことはあるが、パーティーなどで自分に寄って来る相手は大抵侯爵家と縁が結べと親から言われた令嬢たちのみ。
自分の外見だけで来られるのも嫌。
中身を知ろうともしない者と縁を結びたくない。
そう思ってしまうのは仕方ない。
そして……何よりもアラッドの中身は立派な大人。
七歳児やその辺りの女の子にモテたところで、これっぽっちも嬉しくない。
(ドラングはそれなりに同年代の異性に興味があるようだし、押し付けといて全く問題無いよな)
ドラングは騎士の道に進もうとしているので、婚約を結んでも相手の令嬢や家に迷惑を掛けることはない。
だが、アラッドの行く先は冒険者と決まっている。
そんな危険や泥臭さが待っている職業に就きたくないと思っている令嬢は多く、親も娘がそんな危険な職に就くことを望んでいない。
つまり、令嬢にとって……他家としてもドラングとの縁を結びたい。
その点に関して初めてドラングはアラッドから勝ちを奪ったと言えるだろう。
しかしそれをそもそもアラッドが望んでいないので、結局は虚しい勝利かもしれない。
「さて、夕方まで自由行動にしよう」
高級宿に到着し、宿で夕食を食べる時間まで自由に行動して良いよと言われたアラッドは母のアリサと、数人の騎士と一緒に初めて訪れた王都の散策を始めた。
「……バカみたいに大きいな」
宿を出て母と一緒に移動しようと思ったところで、思わずそんな言葉が漏れてしまった。
アラッドの視線の先に移るのは王城。
王族たちが住まう城だ。
王都に入った時、直ぐに他を圧倒する存在を確認したが、もう一度見てもデカいとつい口に出してしまう。
「王城は国の象徴でもあります。故に、他のなにより大きく偉大な存在でなければならないのですよ」
護衛として同行する騎士の一人が丁寧に説明し、それを聞いたアラッドは直ぐに納得した。
だが、直ぐに興味を失って母と一緒に興味津々である武器屋などを目指して歩き始めた。
初めて王都にやって来たアラッドの感想はその一言だった。
(父さんが治める領地の外壁も大きいけど、王都は完全にそれよりも大きい……まっ、この国で一番重要な都市なんだから当たり前か)
門に入る際、取り調べなどを行う兵士たちのレベルもそれなりに高い……とは感じなかった。
(もしかしてうちの兵士たちと同じぐらいか? 王都の門兵なんだからもっと強いかと思ってたけど、案外そんなことはないんだな)
王都に向かってモンスターが襲って来るということは殆どなく、一定の基準を満たせば兵士として雇われる。
だが、パーシブル家に仕える兵士たちは訓練だけではなく、狩りも行っているので少しずつだから確実にレベルを上げている。
(あれぐらいの兵士なら俺一人でも倒せそうだな)
絶対にそんなことはしないが、予想していたよりも兵の強さを感じなかったアラッドは思わずそんなことを考えてしまった。
「中もこれまた凄いな」
フールが治めている街も領地も負けていない。
そう思いたいところだが、色々と規模が違う。
この世界に来て魔法や武器など以外で、同じぐらいの驚きを感じた。
ただ、ここにやって来たのはパーティーに参加するためだということを思い出すと、湧き上がったテンションが直ぐに下がった。
(パーティーなぁ……楽しくないと思ってるから楽しくないのかもしれないけど、面倒な腹の探り合いとか絶対に向いてないんだよな)
まだ七歳児の令嬢や令息は腹の探り合いなど、基本的に情報戦は起こらない。
しかし権力者の子供だからこそ、マウントの取り合いはしょっちゅう行われている。
そういったやり取りをあまり気持ちいとは感じていないので、先日宣言した通り美味い料理だけ食べていたい。
(やっぱり楽しむのは無理だろうな……大人しく飯だけ食べて、権力や繋がり目当てでやって来るかもしれない令嬢は全てドラングに押し付けよう)
多くの異性かモテるのは、さぞかし気分が良いことだろう。
前世では特にモテた経験はないアラッドはそういった心地良さに憧れたことはあるが、パーティーなどで自分に寄って来る相手は大抵侯爵家と縁が結べと親から言われた令嬢たちのみ。
自分の外見だけで来られるのも嫌。
中身を知ろうともしない者と縁を結びたくない。
そう思ってしまうのは仕方ない。
そして……何よりもアラッドの中身は立派な大人。
七歳児やその辺りの女の子にモテたところで、これっぽっちも嬉しくない。
(ドラングはそれなりに同年代の異性に興味があるようだし、押し付けといて全く問題無いよな)
ドラングは騎士の道に進もうとしているので、婚約を結んでも相手の令嬢や家に迷惑を掛けることはない。
だが、アラッドの行く先は冒険者と決まっている。
そんな危険や泥臭さが待っている職業に就きたくないと思っている令嬢は多く、親も娘がそんな危険な職に就くことを望んでいない。
つまり、令嬢にとって……他家としてもドラングとの縁を結びたい。
その点に関して初めてドラングはアラッドから勝ちを奪ったと言えるだろう。
しかしそれをそもそもアラッドが望んでいないので、結局は虚しい勝利かもしれない。
「さて、夕方まで自由行動にしよう」
高級宿に到着し、宿で夕食を食べる時間まで自由に行動して良いよと言われたアラッドは母のアリサと、数人の騎士と一緒に初めて訪れた王都の散策を始めた。
「……バカみたいに大きいな」
宿を出て母と一緒に移動しようと思ったところで、思わずそんな言葉が漏れてしまった。
アラッドの視線の先に移るのは王城。
王族たちが住まう城だ。
王都に入った時、直ぐに他を圧倒する存在を確認したが、もう一度見てもデカいとつい口に出してしまう。
「王城は国の象徴でもあります。故に、他のなにより大きく偉大な存在でなければならないのですよ」
護衛として同行する騎士の一人が丁寧に説明し、それを聞いたアラッドは直ぐに納得した。
だが、直ぐに興味を失って母と一緒に興味津々である武器屋などを目指して歩き始めた。
260
お気に入りに追加
6,106
あなたにおすすめの小説
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる