スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
58 / 1,051

五十八話 つまらない暴言なんて出てこない

しおりを挟む
「さて、とりあえず……バークとダイアは俺と模擬戦しようか」

約束通り、アラッドはバークたちに一瞬間に一度、訓練を行うことにした。

「まずはバークからだな」

「は、はい! よろしくお願いします!!」

言い終わると同時に駆け出し、上段から木剣を振り下ろす。

(思い切りの良い斬撃だな)

あっさり躱されてしまうが、振り下ろした勢いのまま崩れることなく、連続で木剣を振る。
時には突きを混ぜながらスタミナが続くまで永遠に振って振って突きまくる。

「ま、マジかよ……」

普段からバークと自分たちなりに素振りや模擬戦を行っているダイアにとって、信じられない光景だった。

(お、俺よりちょっとだけ強いバークの剣がか、掠りもしないなんて)

二人の表情を見ると、更にその差が分かる。
バークは何十回、百回近く木剣を振っているせいで息が上がっていが、対するアラッドは息一つ切れていない。

「ほい、終わりだ」

「はぁ、はぁ、あ、ありがとう、ございました」

木剣が地面に付いた瞬間を狙って優しく頭に剣先を乗せる。
力量差が十分過ぎるほど解かる一戦だった。

「次はダイアだな。遠慮せずに掛かって来い」

「う、うっす!!!」

手に持つ木斧に力を入れ、バークと同じく全力でアラッドに当てようと振りまくるが、当たる気配がしない。
頭を使ってフェイントを入れても全く引っ掛からない。

(す、すげぇ……本当に強ぇ)

逃げてばかりじゃねぇか!!! なんて言葉は出てこない。
仮にアラッドが本気で攻めれば、簡単に急所へ剣先が突き付けられてしまう。

そんな未来が分かってしまった。

結果、ダイアもバークと同じく何も出来ず頭に剣先を優しく置かれ、模擬戦は終了。

(二人とも戦闘系のスキルを授かっただけあって、かなり動けてるな。変な癖みたなところは我流で鍛えたからかな? それを正せばオーケー。素質はあるな……うん、多分ある筈だ)

決して神ではないので、二人に才能があって未来は明るいと断言は出来ない。

「あ、あの……私たちも模擬戦をした方が良いのでしょうか」

「え? あぁ~~……そうだなぁ。二人とも授かったスキルが魔法系だし、今は良いよ。ただ、後衛だからって全く接近戦で戦えなくて良いって訳じゃないからな。杖で突いたり払ったり……あと短剣も扱えると便利だな。他には鞭やフレイル、モーニングスターとか使えると敵に近づかれても対処出来る」

長所があるなら長所を重点的に鍛えるべき!!!
その意見が決して間違っていると思っている訳ではない。

ただ、アラッドとしては万が一を考えないと後で後悔するという思いの方が強かった。

「旅立つまでまだまだ時間はあるから、自分に合う武器を選んだら良いよ。フレイルとモーニングスターは今ないけど」

短剣の木製は大量にあり、鞭も少しだがある。
しかし当たり前だが木製ではないので、当たるとかなり痛い。

モーニングスターも使う者がいないので、発注しなければならない。

「あっ、あとバークとダイアも盾を使えるようになった方が良いな。あるとないとじゃ全然違うと思うから」

まだ盾の扱いは学んでいない。
だが、狩りの際に一緒に行動する兵士たちは偶にどれだけ盾が重要なのか力説する。

そしてその力説は決して間違っていない。

「ダイアは……大盾を持った方が良いかもな」

「タンクってやつですか?」

「あぁ、多分一番線が太くなりそうだからな。他三人を敵から守るのは一番お前が適してる」

敵から仲間を守る。
その言葉を気に入ったダイアのテンションは加速した。

「今すぐ訓練に入ろう!!!!」

「待て、盾に関して俺もペーペーだから教えられることがない。そっちはまた今度専門の騎士に頼む。今日はとりあえず基本的な攻撃方法と間合いの取り方。そこら辺を教える」

魔法に関してはあまり知識を外に漏らしたくないゆえ、アミットとエレナの指導はメイジの一人に任せた。
そしてアラッドはこのまま続ければ確実に戦えるようになる、といった素振りなどを教えて後はひたすら模擬戦をしながら注意点を伝えた。

(つまらないと思うかもしれないけど、基本的な動きができないと実戦で上手く動けないんだ……だから腐らず頑張れよ)

初めてドラングのあばらに一発入れたあの動きは、地道に反復を行ったからだと……そこは断言できた。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄をされ、処刑された悪役令嬢が召喚獣として帰ってきた

朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
中央から黒い煙が渦を巻くように上がるとその中からそれは美しい女性が現れた ざわざわと周囲にざわめきが上がる ストレートの黒髪に赤い目、耳の上には羊の角のようなまがった黒い角が生えていた、グラマラスな躯体は、それは色気が凄まじかった、背に大きな槍を担いでいた 「あー思い出した、悪役令嬢にそっくりなんだ」 *************** 誤字修正しました

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

処理中です...