54 / 1,054
五十四話 その数秒で溜まった
しおりを挟む
「凄いとは分かっていたが、本当に凄い方だな」
「あぁ、そうだな。この世にアラッド様以外にCランクのモンスターと渡り合える六歳児が他にいると思うか?」
「おそらく過去に遡ってもいないと思います。ブラックウルフのクロと一緒に戦っているとはいえ、あそこまで自分のペースで戦えるのは未来永劫、アラッド様だけかと」
状況としては二対一だが、ブラックウルフの子供と人族の子供。
どう考えてもメタルリザードの方が有利だろう。
スピードではクロの方が上回っていても、爪撃では鱗を切り裂けても中身まで届かない。
しかしメタルリザードの尾や爪、ブレスはどれもクロに大ダメージを与える。
だが、そんな強靭な肉たちと鱗を持つメタルリザードが徐々に追い詰められていた。
「グゥオオオオァアアアアッ!!!!」
「それはっ、食らいたくないな」
魔力を纏った鋭いテイルアタック。
尾に毒などは塗られていないが、当たれば鉄の鞭が体内に激痛を与える。
それを二人はバックステップで躱し、弱点である腹の部分から斬り裂こうとする。
下から斬り上げられる斬撃に対し、メタルリザードはその巨体からは考えられないジャンプでギリギリ躱す。
「マジか……今のは決まったと思ったんだけどな」
「ワゥッ!!!!」
しかしクロはメタルリザードの動きを完全に読み、いつの間にか後方へ移動し、見事尻尾を自慢の爪で斬り裂いた。
「ッ!!!!」
これでメタルリザードの武器が一つ消えた。
ドラゴンの中には再生のスキルを有している個体がいるが、メタルリザードは得ていなかった。
だが、斬られた尾の部分から流れる血の量はそこまで多くなく、まだまだ動ける。
「ふっ、やっ!! おらッ!!!!」
今まで安全に戦ってきたが、そろそろ仕留めようと決めたアラッドのスピードが一段階アップ。
四足歩行のメタルリザードには攻撃手段が少ない。
尾は斬られ、残るは咬みつきに爪と体当たり。
しかしこれらは現在の状況で放つには少々隙が大きい。
メタルリザード一体に対し、クロとアラッドが攻める。
アラッドがまだ子供だからこそ、的が小さい。
的が小さいくせに、動きだけは自分を翻弄する速さと力を持っている。
一番の武器はブレス。
これさえ決まれば絶対に勝てるという自信がメタルリザードにはあった。
だが、ブレスを放つには少しの為が必要になる。
その隙を溜める時間を戦っている一人と一体が許すのか? 許すはずがない。
そして仮にブレスを放てたとしても、アラッドとクロが直線状にいなければ手痛いカウンターを食らってしまう。
以上の理由から、メタルリザードは渾身のブレスを放つことが出来ない。
しかしメタルリザードには爪と尾、咬みつきに体当たり以外にも放てる技があった。
あるのだが、苦手だという意識があってあまり実戦では使ってこなかった。
今放っても失敗するかもしれない。
だが……そんなことを考えてる余裕はない。
「ガァアアアアァァアアアアアアッ!!!!」
上半身を起こし、思いっきり地面に叩きつける。
その瞬間、無数の鉄の槍が地面から生える。
「おわっ!? あ、あっぶな」
後ろに下がっていたアラッドとクロはギリギリのタイミングで上空に跳び、アイアンランスを回避。
あと一歩遅ければ足が貫かれて機動力を失っていたかもしれない。
しかし!! 寸でのところで回避に成功。
そして空中で体を捻って鉄の槍を酒て着地。
一気に終わらせる……そう思った瞬間、二人に背筋が凍る寒気が襲った。
「クロ! 俺の後ろに下がれ」
「ワゥ!」
アラッドたちが空中に跳び、そして着地。
その数秒の間にメタルリザードの溜が完了した。
(上等! 叩き斬ってやる!!!)
鋼鉄の剛剣に最大火力を纏い、ブレスが飛んでくると同時に振り下ろす。
「フレイムバッシュ!!!!!」
刃に火の魔力を纏っての一撃。
そしてスキル技、バッシュを使っての一撃はメタルリザードに当ればその体を斬り裂くことができる。
だが、メタルブレスに対しては斬撃の勢いで少し押し返したが、それでは止まらなかった。
このままでは二人が危ない。
さすがにもう割って入らなければならい。
そう思った三人は技を放ち、ブレスを少しでも弾き飛ばそうと動き出した。
しかし……フレイムバッシュだけでは止められないと最初からアラッドは分かっていた。
「あぁ、そうだな。この世にアラッド様以外にCランクのモンスターと渡り合える六歳児が他にいると思うか?」
「おそらく過去に遡ってもいないと思います。ブラックウルフのクロと一緒に戦っているとはいえ、あそこまで自分のペースで戦えるのは未来永劫、アラッド様だけかと」
状況としては二対一だが、ブラックウルフの子供と人族の子供。
どう考えてもメタルリザードの方が有利だろう。
スピードではクロの方が上回っていても、爪撃では鱗を切り裂けても中身まで届かない。
しかしメタルリザードの尾や爪、ブレスはどれもクロに大ダメージを与える。
だが、そんな強靭な肉たちと鱗を持つメタルリザードが徐々に追い詰められていた。
「グゥオオオオァアアアアッ!!!!」
「それはっ、食らいたくないな」
魔力を纏った鋭いテイルアタック。
尾に毒などは塗られていないが、当たれば鉄の鞭が体内に激痛を与える。
それを二人はバックステップで躱し、弱点である腹の部分から斬り裂こうとする。
下から斬り上げられる斬撃に対し、メタルリザードはその巨体からは考えられないジャンプでギリギリ躱す。
「マジか……今のは決まったと思ったんだけどな」
「ワゥッ!!!!」
しかしクロはメタルリザードの動きを完全に読み、いつの間にか後方へ移動し、見事尻尾を自慢の爪で斬り裂いた。
「ッ!!!!」
これでメタルリザードの武器が一つ消えた。
ドラゴンの中には再生のスキルを有している個体がいるが、メタルリザードは得ていなかった。
だが、斬られた尾の部分から流れる血の量はそこまで多くなく、まだまだ動ける。
「ふっ、やっ!! おらッ!!!!」
今まで安全に戦ってきたが、そろそろ仕留めようと決めたアラッドのスピードが一段階アップ。
四足歩行のメタルリザードには攻撃手段が少ない。
尾は斬られ、残るは咬みつきに爪と体当たり。
しかしこれらは現在の状況で放つには少々隙が大きい。
メタルリザード一体に対し、クロとアラッドが攻める。
アラッドがまだ子供だからこそ、的が小さい。
的が小さいくせに、動きだけは自分を翻弄する速さと力を持っている。
一番の武器はブレス。
これさえ決まれば絶対に勝てるという自信がメタルリザードにはあった。
だが、ブレスを放つには少しの為が必要になる。
その隙を溜める時間を戦っている一人と一体が許すのか? 許すはずがない。
そして仮にブレスを放てたとしても、アラッドとクロが直線状にいなければ手痛いカウンターを食らってしまう。
以上の理由から、メタルリザードは渾身のブレスを放つことが出来ない。
しかしメタルリザードには爪と尾、咬みつきに体当たり以外にも放てる技があった。
あるのだが、苦手だという意識があってあまり実戦では使ってこなかった。
今放っても失敗するかもしれない。
だが……そんなことを考えてる余裕はない。
「ガァアアアアァァアアアアアアッ!!!!」
上半身を起こし、思いっきり地面に叩きつける。
その瞬間、無数の鉄の槍が地面から生える。
「おわっ!? あ、あっぶな」
後ろに下がっていたアラッドとクロはギリギリのタイミングで上空に跳び、アイアンランスを回避。
あと一歩遅ければ足が貫かれて機動力を失っていたかもしれない。
しかし!! 寸でのところで回避に成功。
そして空中で体を捻って鉄の槍を酒て着地。
一気に終わらせる……そう思った瞬間、二人に背筋が凍る寒気が襲った。
「クロ! 俺の後ろに下がれ」
「ワゥ!」
アラッドたちが空中に跳び、そして着地。
その数秒の間にメタルリザードの溜が完了した。
(上等! 叩き斬ってやる!!!)
鋼鉄の剛剣に最大火力を纏い、ブレスが飛んでくると同時に振り下ろす。
「フレイムバッシュ!!!!!」
刃に火の魔力を纏っての一撃。
そしてスキル技、バッシュを使っての一撃はメタルリザードに当ればその体を斬り裂くことができる。
だが、メタルブレスに対しては斬撃の勢いで少し押し返したが、それでは止まらなかった。
このままでは二人が危ない。
さすがにもう割って入らなければならい。
そう思った三人は技を放ち、ブレスを少しでも弾き飛ばそうと動き出した。
しかし……フレイムバッシュだけでは止められないと最初からアラッドは分かっていた。
273
お気に入りに追加
6,124
あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。


竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる