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五十四話 その数秒で溜まった

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「凄いとは分かっていたが、本当に凄い方だな」

「あぁ、そうだな。この世にアラッド様以外にCランクのモンスターと渡り合える六歳児が他にいると思うか?」

「おそらく過去に遡ってもいないと思います。ブラックウルフのクロと一緒に戦っているとはいえ、あそこまで自分のペースで戦えるのは未来永劫、アラッド様だけかと」

状況としては二対一だが、ブラックウルフの子供と人族の子供。
どう考えてもメタルリザードの方が有利だろう。

スピードではクロの方が上回っていても、爪撃では鱗を切り裂けても中身まで届かない。
しかしメタルリザードの尾や爪、ブレスはどれもクロに大ダメージを与える。

だが、そんな強靭な肉たちと鱗を持つメタルリザードが徐々に追い詰められていた。

「グゥオオオオァアアアアッ!!!!」

「それはっ、食らいたくないな」

魔力を纏った鋭いテイルアタック。
尾に毒などは塗られていないが、当たれば鉄の鞭が体内に激痛を与える。

それを二人はバックステップで躱し、弱点である腹の部分から斬り裂こうとする。

下から斬り上げられる斬撃に対し、メタルリザードはその巨体からは考えられないジャンプでギリギリ躱す。

「マジか……今のは決まったと思ったんだけどな」

「ワゥッ!!!!」

しかしクロはメタルリザードの動きを完全に読み、いつの間にか後方へ移動し、見事尻尾を自慢の爪で斬り裂いた。

「ッ!!!!」

これでメタルリザードの武器が一つ消えた。
ドラゴンの中には再生のスキルを有している個体がいるが、メタルリザードは得ていなかった。

だが、斬られた尾の部分から流れる血の量はそこまで多くなく、まだまだ動ける。

「ふっ、やっ!! おらッ!!!!」

今まで安全に戦ってきたが、そろそろ仕留めようと決めたアラッドのスピードが一段階アップ。
四足歩行のメタルリザードには攻撃手段が少ない。

尾は斬られ、残るは咬みつきに爪と体当たり。
しかしこれらは現在の状況で放つには少々隙が大きい。

メタルリザード一体に対し、クロとアラッドが攻める。
アラッドがまだ子供だからこそ、的が小さい。

的が小さいくせに、動きだけは自分を翻弄する速さと力を持っている。
一番の武器はブレス。
これさえ決まれば絶対に勝てるという自信がメタルリザードにはあった。

だが、ブレスを放つには少しの為が必要になる。
その隙を溜める時間を戦っている一人と一体が許すのか? 許すはずがない。
そして仮にブレスを放てたとしても、アラッドとクロが直線状にいなければ手痛いカウンターを食らってしまう。

以上の理由から、メタルリザードは渾身のブレスを放つことが出来ない。
しかしメタルリザードには爪と尾、咬みつきに体当たり以外にも放てる技があった。

あるのだが、苦手だという意識があってあまり実戦では使ってこなかった。
今放っても失敗するかもしれない。

だが……そんなことを考えてる余裕はない。

「ガァアアアアァァアアアアアアッ!!!!」

上半身を起こし、思いっきり地面に叩きつける。
その瞬間、無数の鉄の槍が地面から生える。

「おわっ!? あ、あっぶな」

後ろに下がっていたアラッドとクロはギリギリのタイミングで上空に跳び、アイアンランスを回避。
あと一歩遅ければ足が貫かれて機動力を失っていたかもしれない。

しかし!! 寸でのところで回避に成功。
そして空中で体を捻って鉄の槍を酒て着地。
一気に終わらせる……そう思った瞬間、二人に背筋が凍る寒気が襲った。

「クロ! 俺の後ろに下がれ」

「ワゥ!」

アラッドたちが空中に跳び、そして着地。
その数秒の間にメタルリザードの溜が完了した。

(上等! 叩き斬ってやる!!!)

鋼鉄の剛剣に最大火力を纏い、ブレスが飛んでくると同時に振り下ろす。

「フレイムバッシュ!!!!!」

刃に火の魔力を纏っての一撃。
そしてスキル技、バッシュを使っての一撃はメタルリザードに当ればその体を斬り裂くことができる。

だが、メタルブレスに対しては斬撃の勢いで少し押し返したが、それでは止まらなかった。
このままでは二人が危ない。

さすがにもう割って入らなければならい。
そう思った三人は技を放ち、ブレスを少しでも弾き飛ばそうと動き出した。

しかし……フレイムバッシュだけでは止められないと最初からアラッドは分かっていた。
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