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三十三話 バカなのかと思ってしまう

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「すいません、変な声が出てしまいました」

「いや、気にする事はない。僕もアラッドぐらいの歳なら思わず変な声を出してしまうよ」

売上金の一部として、アラッドの懐には一億マギー以上入ったと洋紙には記されていた。

(儲かるとは思っていたが、まさか一か月程度で一億以上も……この歳で白金貨を自分で稼いだのは俺ぐらいじゃないか?)

自惚れではなく、事実としてこの世界で自らのアイデアで五歳児の間に白金貨一枚を稼いだのはアラッドが初であった。

リバーシは現在百万個以上売れているが、まだまだ手にしていない者は多い。
アラッドが生まれた国以外で販売されるのも時間の問題なので、まだまだアラッドの懐には金が入り続ける。

加えて、貴族や豪商は少しでも豪華なリバーシを買って自分の力を周囲に誇示しようと考えているので、特注のリバーシも飛ぶように売れている。

そして洋紙に記入されている金額とは別に、もう一つの洋紙が入っていた。

「アラッド、これは君の懐だけに入った金額が記入されている洋紙だよ」

「? こちらに全部入っているのではないですか?」

「こっちの洋紙には固定化されているリバーシが売れた金額だよ。こっちはアラッドが直々に作ったリバーシの売り上げが合計された分だよ」

アラッドがトレントの木で作ったリバーシを国王は金貨五十枚で買い取った。
新し娯楽とはいえ、作るのに必要な素材の値段を考えれば、破格の値段と言えるだろう。

そしてトレントの木を使ってアラッド自ら作るリバーシの値段は金貨五十枚と設定された。
アラッド自ら作った印として、ボードの裏にはロングソードと炎が交わるマークが記されている。

豪華な素材を使用して作られたリバーシを持つこと以外に、権力者は制作者であるアラッド直々に作ったリバーシを手に入れるのが一つのステータスとなっている。

リバーシの制作者がアラッドだと公開はされていない。
だが、毎月のように契約によって七割の権利を支配しているリグラットの元にアラッドが作ったリバーシを売って欲しいという内容の手紙が何十通、何百通と届く。

それを申し訳なさそうな表情でリグラットはアラッドに伝えるが、本人としては特に問題はなかった。
さすがにリバーシを作る為だけに一日を潰す様なことはしないが、勉強等で学ぶことはなくなったのでその時間を利用してせっせとリバーシを作っていく。

ただ、あまりにもアラッドが作ったリバーシを望む物が多く、中には払う金額を増額するから優先して作って欲しいと申請する者までいた。

その結果、本来の値段である倍の金額……金貨百枚。すなわち白金貨一枚で申請した者たちには優先的に売られることになった。

(…………バカだろ)

洋紙には普通の値段で買い取った者の人数と、わざわざ倍の値段を払って買い取った者の人数が記されていた。
白金貨一枚でリバーシを買い取った人数を見て、アラッドは心の中で思わず呟いしまった。

(白金貨一枚といえば、日本円に換算すれば一億円だぞ一億円!!! トレントの木は確かにそこら辺の木と比べれば素材価値は高い。ただ、それでも金貨五十枚ですらかなりの設定額なのにあのリバーシに白金貨一枚を使うとか……やっぱりアホだろ)

アラッドが作ったリバーシを買い取った人数などが記されている容姿に記入されている金額を見て、アラッドは倒れそうになった。

「…………父さん、この洋紙に記入されている金額は誠なのですか?」

「事実だね。そっちの洋紙に記入されている金額はアラッドに直接頼んだ依頼だから、リバーシを買うために払った金額が全てアラッドの懐に入ってくる僕は妥当な金額だと思うよ」

現在、アラッドにはリグラットからまだまだアラッド自身が作ったリバーシの購入を求められている。
故に、こちらもまだまだ注文が届き、アラッドの懐に金額が入り続ける。

「アラッド……どうする? なんか色々買ってみるかい? それだけのお金があれば土地を買うことすら容易だと思うよ」

アラッドがリバーシの一件で稼いだ額は既にパーシブル家に入ってくるリバーシの権利を大きく超えていた。
その金額に関してフールはどうこうしようとは思えない。

アラッドが馬鹿ではないということも知っているので、その金額を管理しようとも思っていない。
全てアラッドが自由に使うのが一番良いと思っていた。

さて、そんなアラッドは洋紙に記入されている金額を何に使えば良いか全く分からず、執務室から出るまで頭の中が真っ白になっていた。
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