スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
上 下
30 / 1,058

三十話 それだけで構わない

しおりを挟む
「商品として売る、か……そうだね。確かにこのゲーム……リバーシは売れる。ナダックはどう思う?」

「自分もこれは売れると思います。アラッド様、これは木と塗料だけで作ったんですよね」

「はい。木と塗料だけで作りました。貴族や豪商から要望があれば鉱石や宝石を使った特注品を作ればいい……けど、一般人が使うぶんには木と塗料だけで問題無いかと」

「……フール様、これは絶対に商品として売るべきです!! 現時点で財政難という訳ではありませんが、アラッド様はお作りになったリバーシを懇意にしている商会から売れば懐か暖かくなるのは確実かと」

ナダックはざっと……本当にざっとリバーシを商品として売り、パーシブル家に入ってくる利益を考えると頭が沸騰しそうになった。

「そうだね……是非ともそうしよう。だが、商品として売り出す前に決めないといけないことがある。これを作ったのはアラッドだ。売ることによって発生する金額のうち、何割を権利として受け取るのか」

この世界にも著作権に近いものが存在する。
故に、もしかしたらフールに恩を返せるかもしれないと思って作ったリバーシの売り上げによっては、子供で億万長者になることも不可能ではない。

「えっと……その権利というのは一般的に何割ぐらいなんですか?」

「こういった物に関しては大体四割から五割が相場だね」

リバーシを売れば大金が入ってくるのは容易に想像できる。
だが、フールはパーシブル家がそれを受け取っても良いのか迷っていた。

商品として売り出すまでは大人であるフールたちの力が必要だ。
ただ……フールはこの一時間近くでリバーシにどっぷりとハマった。

こんな面白いゲームと自分たちが商品にするまでの労力……それが釣り合っているとは思えなかった。

しかしアラッドも同じようなことを考えていた。
今回リバーシを作ったのはフールに対する恩を返すため。

だが、今後のことを考えると多少なりともお金は欲しい。

「それでは、三割を権利として主張します。そのうち、二割はパーシブル家に入れてください」

それがアラッドの答えだった。

「あ、アラッド様。もう少し自分の権利を主張しても良いのですよ。このリバーシというのは素晴らしい娯楽です」

「その通りだよ、アラッド様。これは絶対に売れる確証できる。権利として五割を主張しても通るよ」

二人の言う通りではあるのだが、アラッドの考えは変わらなかった。

「いえ、それで十分ですよ」

「……そうか。アラッドがそういうなら、言う通りにしよう。しかし、パーシブル家の取り分が二割でいいのかい?」

「えぇ、勿論です。元々パーシブル家に利益をもたらすかと思って作った娯楽なので」

「君は、本当に大人びてるね……有難う。その気持ち、大事にさせてもらうよ。このリバーシは少し預からせてもらっても良いかい?」

「はい、大丈夫です」

伝えたい事を伝え、上手くことが進んだアラッドは上機嫌な様子で執務室から出た。

「……まだ時間はあるし、いくつか作るか」

まだまだ木も塗料もあるので、庭に戻ったアラッドは五台ほどリバーシを作ってから訓練に戻った。

そして夕食を食べ終えたあと、第一夫人であるエリア。第二夫人であるリーナ。血の繋がった母であるアリサに一台ずつリバーシを渡した。
既にこれがどのような娯楽なのか聞いているので、三人は早速側近のメイドたちを相手にゲームを始めた。

「グラストさん、これ」

「……アラッド様。これはいったいどのような物なのでしょうか」

騎士や兵士たち用に一台渡すが、グラストはまだリバーシがどのような娯楽なのか聞いていなかった。
なのでサラッと遊び方を教え、実際に一ゲーム行う。

結果、当然アラッドが勝利した。

「こんな感じで、最後の色が多い方が勝ちって感じ」

「これは……実に面白い娯楽ですね」

「そう言ってもらえると嬉しいです。父さんにも渡しているので、後日商品として売り出されます。ただ、現時点はこの家の人しか持っていません」

「な、なるほど。そのような物を……有難く頂戴します」

「順番を守って遊んでくださいね」

グラストと別れたアラッドは最後にギーラスの部屋へと向かった。
しおりを挟む
感想 467

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

処理中です...