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二十七話 何らかの形で返したい

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夕食を食べて風呂に入った後、アラッドは寝る前に考え事をしていた。

「……やっぱり、何かしらの形で返した方が良いよな」

寝る前に少々考え事をしていた。
グラストだけではなく、父親であるフールも自分が騎士の道に進んで大成することに期待していた。

だからといって、フールはアラッドに騎士への道を強制するようなことはしない。

「俺がドラングと比べて強くても、モンスターと戦う許可をくれたのはやっぱり特別扱いだし……モンスターと戦うからって俺が戦いやすい剣を用意してくれたし……」

自分が転生した環境は恵まれている。
そして父は自分の我儘を聞いてくれた。

自分はそんな父が期待する道とは違う道に進もうとしている。
ならば、少しでも父であるフールに恩を返そうと思った。

(ただ、騎士になる道以外でどうやって恩を返すか……やっぱり金、か? でも俺がモンスターを倒して手に入れられる金なんてたかが知れてるしな)

遭遇したモンスターを全て倒しているアラッドだが、森の浅い場所でしか狩りをしていないので、一日に稼げる金額はそう多くない。

短いスパンで狩りに出かけているので日に日に金は貯まるが、侯爵家の当主であるフールからすれば大した金額ではない。

「狩り以外で稼ぐ方法……そんなのあるか? 今の俺が金を稼げる方法はモンスターを狩って素材と魔石を売る。それ以外には何かを造って売る……ポーションはそれなりに造れるようになったけど、売ってもそこまで大した金額にはならない……いや、モンスターの素材や魔石を売るよりは稼げるか?」

ポーションやマナポーションは主にモンスターと戦う冒険者に需要がある。
冒険者はモンスターと戦うことがメインである死と隣り合わせの職業。

それなりに儲かる仕事なので、ポーションには高値が付く。
とはいえ、それでも現時点でアラッドが造れるポーションの質ではたかが知れている。

「狩りで稼ぐは現時点で論外……なら、やっぱり何かを造って稼ぐしか方法はないよな……あまり技術がない俺が作れるなにか……あっ」

ここで一つ、アラッドは金になるかもしれない案を思い付いた。
この世界に転生してからアラッドは本物の剣、魔法、スキルといった前世にはなかった技術や存在に意識を惹かれていた。

なので前世と比べて重要な違いを忘れていた……それは、圧倒的な娯楽の少なさ。
ゲームやスマホ、テレビは当然ない。

漫画などもないので、日本からの転生者であれば普通は暇すぎる娯楽の無さなのだ。

(でも、ゲームやスマホを造る力なんて俺にはない……というか、あぁいうのは会社が作った物を遊ぶから楽しいんだ。俺でも作れるような……そうか、そういうのがあったか!!!)

子供の頃にはよく遊んでいたが、成長するにつれてあまり遊ばなくなる物……そう、ボードゲーム。
それならアラッドでも製作は可能。

「よし、明日は森に入ってモンスターを狩る日だから帰りに塗料を買おう。この世界にそういうのがあるとは一度も聞いたことがない。であれば、大きな金になる筈だ」

これなら父に恩を返せるかもしれない。
そう思ったアラッドのテンションは急激に上がった。

だが、今日も一日がっつり動いたのでベッドに入れば直ぐに睡魔が襲い……目が覚めれば朝になっていた。

「……頑張ろう」

朝は眠い。
しかし先日の夜、一つの目標を立てたアラッドの心はやる気の炎で満ちていた。

朝食を食べ終わると直ぐに屋敷を出て森に出発。
兵士たちと一緒に行動しながらも、遭遇したモンスターは全てアラッドが倒していく。

「流石ですね、アラッド様。もうDランクのモンスターを倒せるんじゃないですか?」

「……レベルも十になったし、不可能ではないと思う。ただ、父さんに特別許可を貰ってモンスターと戦ってる訳だから、あんまり無茶は出来ないんだよ」

心配も欠けたくないので、もう少しレベルが上がるまでは浅い場所で狩りを続けようと決めている。

「まぁ、遭遇したら倒すけどな……仮に、Cランクのモンスターと遭遇したらお前らの力を借りるけど」

糸は汎用性が非常に高い。
それは身に染みて理解しているが、相手がCランクのモンスターともなれば兵士たちの力を借りないと不味い。

「任せてください!」

「アラッド様の盾と剣になりますよ!!」

「私は魔法で吹き飛ばしますね」

モンスターを狩りに行くたびに兵士とメイジと一緒に行動するので、必然的にアラッドは多くの者たちと仲良くなっていた。

「頼りにしてる……どうやらまた客が来たいみたいだな」
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