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二十二話 猪突猛進過ぎる
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「なぁ、まだやる」
「ふ、ざけんな!!! 続けるに決まってんだろ!!!!」
一分間ほどアラッドが攻め、一旦バックステップで下がった。
どう考えても自分との差をドラングは知った。
そう思ったのだが、ドラングから全く諦める気配が感じられない。
(俺は一歩も動かず対処した。ドラングは俺の斬撃に押されてどんどん下がった。もう十分差は解かった思うんだけどな……)
一か月前と比べて、ドラングは強くなった……というのはいまいち分からない。
前回は一瞬で終わらせてしまったので、ドラングがどれぐらい強いのか判らなかったので、前の模擬戦からどれほど強くなったのかアラッドは知らない。
だが、それでもなんとなく努力してドラングも一歩ずつ前に進んでいるのは分かった。
しかしそれでも、どうしようもない差を一瞬で埋めることは出来ない。
「まだ、終わってねぇんだよ!!!」
木剣を左手に持ち替え、右手に火の魔力を集中させる。
元々属性魔力の適性はあり、最近になって身体強化と同じく火魔法を習得した。
そしてその勢いに乗り、ファイヤーボールを習得。
発動まで五秒ほどかかり、ようやく手のひらから火球が撃ちだされた。
「ファイヤーボール!!!!」
それは立派なファイヤーボールだった。
途中で力尽きて消えることはなく、軌道が逸れることはない完璧なファイヤーボール。
このまま飛んでいけばアラッドの胸に直撃し、髪に火の粉が移れば髪がチリチリになってしまうかもしれない。
「ファイヤーボール」
だが、そんな立派なファイヤーボールに対してアラッドもファイヤーボールで返した。
二つのファイヤーボールをぶつかり合い、そのまま消滅した。
相殺という結果になり、周囲の兵士たちはホッと一安心した。
しかしファイヤーボールを放ったドラングはまさかの結果に驚愕していた。
「な、なんでお前がファイヤーボールを使えるんだよ。しかも……」
「なんでって言われても、俺も火魔法を習得してるからな」
火魔法に関しては随分前に習得しており、スキルレベルは三まで成長していた。
元々魔力操作の腕が高いこともあり、攻撃魔法の発動まで五秒も掛からない。
ファイヤーボールを使った。そして発動するまでの時間が一秒程度。
その事実にドラングは驚かずにはいられなかった。
「……なぁ、ドラング。俺は少しの間だけど、モンスターと戦って倒してるんだ。だから当然、レベルが上がってる。身体能力と魔力量が成長してるんだよ」
「ッ!! ず、ズルいぞ!!!!!!」
知っていて当然だとアラッドは思っていたが、ドラングは今の今まで完全に頭からその事実が抜けていた。
まさかの返答が帰って来て、アラッドは言葉には出さなかったが「えぇ~~~~~~~」と心の中で呟いてしまった。
(今までそれを知らずに戦ってたのか? てっきりレベルが上がった俺にも勝てる自信があったから勝負を挑んできた思ってたんだが……いくらなんでも猪突猛進すぎないか?)
義弟の考え無し過ぎる部分に思わずため息を吐いた。
「えっとだな……なら、左手は使わないで戦った方が良いか?」
「ふざけんな!!!! 調子に乗るんじゃねぇッ!!!!!!」
(おいおいおい、なら俺はどうしたら良いんだよ?)
ズルいと言われたので、ハンデも付けようと思ったがあっさりと拒否されてしまった。
だが、少しでもハンデを付けないと勝負にならないので木剣を右手だけ使ってドラングの相手をする。
両手と片手で剣を振った場合、両手で振った方が威力と重さが増す。
それは武器を剣を使うものであれば常識なのだが……アラッドは頭上から振り下ろされるドラングの斬撃を防いでいた。
「なんで……それで止められるんだよっ!!!!!」
「レベル差があるからとしか言えないな」
アラッドの体が超魔法使いよりであれば、仮にレベル八でも身体強化を使用したドラングと剣の戦いでは互角になるかもしれない。
だが、アラッドの肉体は接近戦と魔法戦も行える万能型。
そのアラッドがレベル八となれば、レベル一であるドラングが身体強化を使用しても勝てないのは道理であった。
「ふ、ざけんな!!! 続けるに決まってんだろ!!!!」
一分間ほどアラッドが攻め、一旦バックステップで下がった。
どう考えても自分との差をドラングは知った。
そう思ったのだが、ドラングから全く諦める気配が感じられない。
(俺は一歩も動かず対処した。ドラングは俺の斬撃に押されてどんどん下がった。もう十分差は解かった思うんだけどな……)
一か月前と比べて、ドラングは強くなった……というのはいまいち分からない。
前回は一瞬で終わらせてしまったので、ドラングがどれぐらい強いのか判らなかったので、前の模擬戦からどれほど強くなったのかアラッドは知らない。
だが、それでもなんとなく努力してドラングも一歩ずつ前に進んでいるのは分かった。
しかしそれでも、どうしようもない差を一瞬で埋めることは出来ない。
「まだ、終わってねぇんだよ!!!」
木剣を左手に持ち替え、右手に火の魔力を集中させる。
元々属性魔力の適性はあり、最近になって身体強化と同じく火魔法を習得した。
そしてその勢いに乗り、ファイヤーボールを習得。
発動まで五秒ほどかかり、ようやく手のひらから火球が撃ちだされた。
「ファイヤーボール!!!!」
それは立派なファイヤーボールだった。
途中で力尽きて消えることはなく、軌道が逸れることはない完璧なファイヤーボール。
このまま飛んでいけばアラッドの胸に直撃し、髪に火の粉が移れば髪がチリチリになってしまうかもしれない。
「ファイヤーボール」
だが、そんな立派なファイヤーボールに対してアラッドもファイヤーボールで返した。
二つのファイヤーボールをぶつかり合い、そのまま消滅した。
相殺という結果になり、周囲の兵士たちはホッと一安心した。
しかしファイヤーボールを放ったドラングはまさかの結果に驚愕していた。
「な、なんでお前がファイヤーボールを使えるんだよ。しかも……」
「なんでって言われても、俺も火魔法を習得してるからな」
火魔法に関しては随分前に習得しており、スキルレベルは三まで成長していた。
元々魔力操作の腕が高いこともあり、攻撃魔法の発動まで五秒も掛からない。
ファイヤーボールを使った。そして発動するまでの時間が一秒程度。
その事実にドラングは驚かずにはいられなかった。
「……なぁ、ドラング。俺は少しの間だけど、モンスターと戦って倒してるんだ。だから当然、レベルが上がってる。身体能力と魔力量が成長してるんだよ」
「ッ!! ず、ズルいぞ!!!!!!」
知っていて当然だとアラッドは思っていたが、ドラングは今の今まで完全に頭からその事実が抜けていた。
まさかの返答が帰って来て、アラッドは言葉には出さなかったが「えぇ~~~~~~~」と心の中で呟いてしまった。
(今までそれを知らずに戦ってたのか? てっきりレベルが上がった俺にも勝てる自信があったから勝負を挑んできた思ってたんだが……いくらなんでも猪突猛進すぎないか?)
義弟の考え無し過ぎる部分に思わずため息を吐いた。
「えっとだな……なら、左手は使わないで戦った方が良いか?」
「ふざけんな!!!! 調子に乗るんじゃねぇッ!!!!!!」
(おいおいおい、なら俺はどうしたら良いんだよ?)
ズルいと言われたので、ハンデも付けようと思ったがあっさりと拒否されてしまった。
だが、少しでもハンデを付けないと勝負にならないので木剣を右手だけ使ってドラングの相手をする。
両手と片手で剣を振った場合、両手で振った方が威力と重さが増す。
それは武器を剣を使うものであれば常識なのだが……アラッドは頭上から振り下ろされるドラングの斬撃を防いでいた。
「なんで……それで止められるんだよっ!!!!!」
「レベル差があるからとしか言えないな」
アラッドの体が超魔法使いよりであれば、仮にレベル八でも身体強化を使用したドラングと剣の戦いでは互角になるかもしれない。
だが、アラッドの肉体は接近戦と魔法戦も行える万能型。
そのアラッドがレベル八となれば、レベル一であるドラングが身体強化を使用しても勝てないのは道理であった。
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