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二十一話 文句が出ない形にする
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「それでは……始め!!!!」
グラストが模擬戦開始の合図を行い、模擬戦が始まった……が、二人とも直ぐには動かなかった。
ドラングは前回の様にアラッドが高速で動き、自分を仕留めに来るかもしれないと思い、最近習得した身体強化を使って身構えていた。
だが、今回のアラッドはドラングとの模擬戦を速攻で終わらそうとはしなかった。
中段に構えたまま動かず、ドラングが攻勢に出るのを待っている。
開始してから十秒ほど経ち、アラッドから動く気配を感じなかったのでドラングはこのままでは決着が着かないと思い、自ら斬り掛かった。
「はぁぁああああああっ!!!!」
上段から振り下ろされる一閃。
五歳児にしては形になっている一撃。
この動きだけで普段からドラングの訓練風景を見ている者たちは、ドラングが成長したのを感じる。
だが、その一撃をアラッドは木剣で受け止めた。
「ッ!! く、そおおおおおおっ!!!!!」
そのまま押し込もうとするが、一向に押し込むことができない。
圧し潰すことは不可能だと判断し、ドラングは一歩引いて今度は横、斜め、下からと連撃でアラッドを攻める。
剣技のスキルを習得した者は自然と太刀筋が良くなる。
そこにドラングの日頃の努力が加わり、仮にこれが同年代の令息と行われた戦いであれば……相手に何もさせずドラングが勝利したかもしれない。
だが、アラッドからすればドラングの剣筋は十分目で追えるものだった。
(……ブラウンウルフやハウンドドッグよりも遅いな。いや、あいつらはレベル一じゃないからドラングの動きが遅く感じるのは当たり前か)
自分に降りかかる斬撃に木剣を当て、全ての斬撃を防いでいく。
木剣と木剣がぶつかり合う音が響く。
その音だけ聞いていれば互角の勝負が行われていると思うかもしれない。
だが、周囲で観ている兵士たちは目の前で行われている模擬戦が互角の勝負でないことは直ぐに分かった。
「……さすがアラッド様だな」
一人の兵士がそう呟いた。
アラッドは模擬戦が始まってから一歩も動いていない。
つまり、その場から一歩も動かずにドラングの剣を捌いているのだ。
レベル差があるとはいえ、他人よりも剣の才があるドラングの斬撃をいつも通りの表情で捌く……兵士が無意識にそう呟いてしまうのも仕方ないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
最初は勢いがあった連撃も次第に衰え……一分ほど経ったところで、ドラングの動きは一旦止まった。
いくら才能があり、普段から鍛えている貴族の令息であっても、まだ五歳。
一分も全力で動き続ければスタミナが切れてしまった。
それに対し、アラッドはただドラングの斬撃を捌いていただけなので、特に疲れた表情は見えない。
「おい、なんで攻めてこねぇんだよ」
「なんでって……まずは相手の出方を観察するべきかなと思って」
実際はあまりそんなことを考えてはいない。
あまりにも早く勝負を終わらせれば、ドラングがその決着に納得しないかもしれないと思い、まずはドラングに思う存分攻めさせたのだ。
「観察も終わったし、次は俺の番ってことで良いんだよな」
そう言い終えると、アラッドは慎重に動いた。
自分とアラッドとドラングでは勝負にならない。
そんなことは戦う前から解っている。
レベルが上がったことで身体能力がかなり上がった。
それは実戦でモンスターと接近戦を行う度に感じる。
故に、慎重に動かなければならない。
骨折程度で済めば良い。
だが、今のアラッドが全力で振るえば木剣といえど、ドラングを殺してしまう可能性がある。
そんな結果は望んでいないので、ドラングがどれぐらいの速度なら付いて来れるかを確認するため、最初はなるべくゆっくり木剣を振る。
(もう少し速く振っても大丈夫そうだな)
ドラングが反応出来るか否かを確かめながら徐々に剣速を上げていき、先程とは全く逆の光景となった。
ただ一つ違うのが……アラッドは一歩も動いていなかったが、ドラングは徐々に後ろに押されていた。
防御に関しても習っているので、ミスをして食らうことはない。
だが、反撃する隙がない。
そんな状況が一分ほど続いた。
グラストが模擬戦開始の合図を行い、模擬戦が始まった……が、二人とも直ぐには動かなかった。
ドラングは前回の様にアラッドが高速で動き、自分を仕留めに来るかもしれないと思い、最近習得した身体強化を使って身構えていた。
だが、今回のアラッドはドラングとの模擬戦を速攻で終わらそうとはしなかった。
中段に構えたまま動かず、ドラングが攻勢に出るのを待っている。
開始してから十秒ほど経ち、アラッドから動く気配を感じなかったのでドラングはこのままでは決着が着かないと思い、自ら斬り掛かった。
「はぁぁああああああっ!!!!」
上段から振り下ろされる一閃。
五歳児にしては形になっている一撃。
この動きだけで普段からドラングの訓練風景を見ている者たちは、ドラングが成長したのを感じる。
だが、その一撃をアラッドは木剣で受け止めた。
「ッ!! く、そおおおおおおっ!!!!!」
そのまま押し込もうとするが、一向に押し込むことができない。
圧し潰すことは不可能だと判断し、ドラングは一歩引いて今度は横、斜め、下からと連撃でアラッドを攻める。
剣技のスキルを習得した者は自然と太刀筋が良くなる。
そこにドラングの日頃の努力が加わり、仮にこれが同年代の令息と行われた戦いであれば……相手に何もさせずドラングが勝利したかもしれない。
だが、アラッドからすればドラングの剣筋は十分目で追えるものだった。
(……ブラウンウルフやハウンドドッグよりも遅いな。いや、あいつらはレベル一じゃないからドラングの動きが遅く感じるのは当たり前か)
自分に降りかかる斬撃に木剣を当て、全ての斬撃を防いでいく。
木剣と木剣がぶつかり合う音が響く。
その音だけ聞いていれば互角の勝負が行われていると思うかもしれない。
だが、周囲で観ている兵士たちは目の前で行われている模擬戦が互角の勝負でないことは直ぐに分かった。
「……さすがアラッド様だな」
一人の兵士がそう呟いた。
アラッドは模擬戦が始まってから一歩も動いていない。
つまり、その場から一歩も動かずにドラングの剣を捌いているのだ。
レベル差があるとはいえ、他人よりも剣の才があるドラングの斬撃をいつも通りの表情で捌く……兵士が無意識にそう呟いてしまうのも仕方ないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
最初は勢いがあった連撃も次第に衰え……一分ほど経ったところで、ドラングの動きは一旦止まった。
いくら才能があり、普段から鍛えている貴族の令息であっても、まだ五歳。
一分も全力で動き続ければスタミナが切れてしまった。
それに対し、アラッドはただドラングの斬撃を捌いていただけなので、特に疲れた表情は見えない。
「おい、なんで攻めてこねぇんだよ」
「なんでって……まずは相手の出方を観察するべきかなと思って」
実際はあまりそんなことを考えてはいない。
あまりにも早く勝負を終わらせれば、ドラングがその決着に納得しないかもしれないと思い、まずはドラングに思う存分攻めさせたのだ。
「観察も終わったし、次は俺の番ってことで良いんだよな」
そう言い終えると、アラッドは慎重に動いた。
自分とアラッドとドラングでは勝負にならない。
そんなことは戦う前から解っている。
レベルが上がったことで身体能力がかなり上がった。
それは実戦でモンスターと接近戦を行う度に感じる。
故に、慎重に動かなければならない。
骨折程度で済めば良い。
だが、今のアラッドが全力で振るえば木剣といえど、ドラングを殺してしまう可能性がある。
そんな結果は望んでいないので、ドラングがどれぐらいの速度なら付いて来れるかを確認するため、最初はなるべくゆっくり木剣を振る。
(もう少し速く振っても大丈夫そうだな)
ドラングが反応出来るか否かを確かめながら徐々に剣速を上げていき、先程とは全く逆の光景となった。
ただ一つ違うのが……アラッドは一歩も動いていなかったが、ドラングは徐々に後ろに押されていた。
防御に関しても習っているので、ミスをして食らうことはない。
だが、反撃する隙がない。
そんな状況が一分ほど続いた。
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