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十九話 絶望的に広がっていく

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「冒険者になるまでまだまだ時間はある。それを考えれば、そういう体質も悪くないかもな」

雨の日は流石にモンスター狩りには向かわず、家の中で素振りやシャドー、魔力操作に時間を費やす。
ただ、一か月の大半をモンスター狩りに使っていれば、感覚的にはスムーズにレベルが上がっていると感じてもおかしくない。

ただ、この場で初めてアラッドの体質を知った三人は心の中でドラングに対して合掌を送った。

(いや~~~、まさかアラッド様が特異的なな体質だったとは……強くなるとは思ってたっすけど、これは俺が想像してるよりも強くなりそうっすね。ドラング様には申し訳ないっすけど、多分一生追いつけないっすね)

(この特異体質を知れば、レベルを上げる意欲が失せる者もが殆どらしいが……アラッド様は違う。デメリットは気にせず、メリットを明らかに気に入っていらっしゃる。どう考えても他家の子供より早いペースで実戦を積み続ければ、将来的には当主様を超える可能性もあるはず……ただ、そうなればまぐれでもドラング様が勝てる可能性が完全に消えてしまう)

(アラッド様は本当に向上心の塊ですね。私なら心が折れてしまいそうですが……現時点で低ランクとはいえ、モンスターを余裕で倒してしまう力量を考えれば、他人よりもレベルを上げるのが苦に感じないのかもしれませんね。冒険者になっていったいどのような偉業を残すのか……今から楽しみです。しかしこの調子で強くなり続ければ、ドラング様がアラッド様に勝つ可能性は生まれるのでしょうか?)

仮にアラッドとドラングが五年後に真剣勝負を行った場合、結果どうなるのか。
三人の答えは満場一致でアラッドの圧勝だった。

ドラングが怠け者だとは思っていない。
毎日剣技の訓練に打ち込み、最近では魔法に関しても訓練を始めていた。

だが、絶対に勝ちたいと思っている相手の実力と向上心が高過ぎる。

相手が悪い。そうとしか言えない壁が二人の間にはあった。

「おっ、薬草発見。採集しよう」

フールにモンスターを狩る途中で薬草やマナ草を採集すると伝えると、雑草や毒草などと間違えないようにと鑑定の効果が付与されたランク二のモノクルを渡された。

これを使うことで、間違えることなく目的の物を採集できる。

「根元から切らないように……よし」

根元から採ってしまうと生えなくなるので、今後のことを考えると絶対に根ごと引き抜いてはならない。

「アラッド様、お客さんが来たっすよ」

「そうみたいだな」

ランクFモンスター、ハウンドドッグが二体現れた。
口から涎を垂らし、四人を襲う気満々……だがアラッドも返り討ちにする気満々だった。

「来いよ犬っころ」

「「ガルルゥアッ!!!」」

二匹は吠えるとその場から駆け出し、自分たちを挑発したアラッドに狙いを定めた。

襲い掛かるタイミングが少々ズレており、アラッドにとっては好都合な状況だった。
スキル、咬みつきを発動して咬合力を強化。

咬みつかれると、アラッドの防御力では刃が体に食い込んでしまう。
しかしハウンドの咬みつきが届くよりもアラッドが先に動き、身体強化を使用してひょいっと躱して空中で蹴りをぶち込んだ。

「ガブッ!?」

蹴りをぶち込まれたハウンドドッグはそのまま飛ばされ、もう一体のハウンドドッグに激突。
二体の咬みつきが決まることはなく、蹴られた一体はスレッドサークルによって首を切り落とされた。

「さて、残りはお前一体だな」

「ッ!!!!!」

同族が殺されようと怯むことはなく、果敢に再度飛び込んで咬みつきを実行。
しかしその攻撃は一度見ているので、アラッドは即座に対処した。

(やっぱり母さんより動きが遅いし、対処しやすいな)

咬みつきをしゃがんで躱すと、下から拳に魔力を纏ってアッパーをかました。
見事に顎を砕かれ、そのまま勢いに乗って体が回転し、衝撃で脳が揺れていた。

ギリギリ生きている状態ではあるが、その隙を逃さずロングソードで喉を刺し、止めを刺した。

「学習しない奴らだな。まぁ、咬みつき以外に使える技は爪技ぐらいだと思うけど」

既にブラウンウルフ戦で爪を使った攻撃方法は学習しているので、どちらにしろハウンドドッグが勝つ道筋は無かった。
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