10 / 984
十話 さすがにもう一人いた方が良い
しおりを挟む
フールとの会話が終わり、訓練場に戻る途中……アラッドは内心、モンスターと戦える機会を得たことにかなりテンションが上がっていた。
(……言ってみるものだな。本当にモンスターと戦える様になるなんて……ヤバい、超テンション上がってきた)
まだ実戦経験がゼロのアラッドだが、低ランクのモンスターであれば倒せる自信があった。
(兵士二人を連れての行動だけど……低ランクのモンスターが相手なら、全部俺が相手にする。魔力の総量はそれなりに多くなってきたし、雑魚相手なら夕方まで相手をしていても大丈夫……の筈だ)
実際にモンスターと戦ったことはないので、万が一にも問題はないと断言は出来ない。
しかし、やはりそれなりに戦えるという自信はあった……主にその自信はエクストラスキル、糸から溢れていた。
(早速明日の朝から街の外に出てモンスター戦える……今日の夜は寝られないかもしれないな。寝る少し前まで動いておこう。そうすれば眠れるかもしれない)
明日遠足に行く小学生の様な気分になっているが、そんな自分を仕方ないと思ってしまう。
リアルでモンスターと遭遇し、己の手で倒す。
こういった世界に転生した際に、一度はその経験を味わってみたいと思っていた。
(夜寝られなくて、明日の朝寝ぼけ状態ってのは良くないし、しっかり汗をかいとかないと)
明日のことを考えながら訓練場に入ると、そこではアリサが兵士たちを相手に無双していた。
「ほらほら、もう少し粘りなさい!! そして小さな隙でもいいから見つけるのよ!!」
「は、はい!!!」
隙を見つけなさい。そう言いながらもアリサの連撃は止まらない。
(いや、母さん……どう考えてもその兵士が隙を見つけて反撃に移ることは無理だと思うんだけど)
パーシブル家の者を守る兵士として、当主の奥様に勝てなくてどうする……と、思う者は周囲の兵士たちの中にはいない。
元Bランク冒険者だったアリサ。
フールの第三夫人になってからも、兵士たちの訓練に参加するのは当たり前。
偶に実戦の勘を鈍らせない為に森の中に入り、モンスターを討伐することもある。
「……母さんはもう少し手加減を覚えた方が良さそうだな」
「私も同意見ですね。そんなことをアリサ様に直接言えませんが」
「グラストさん……いや、別に言っても良いと思いますよ。母さんは後輩の育成とかに目を向ける前に父さんの奥さんになったので、あんまり上手く手加減できないんですよ。あれだと、あまり兵士の鍛錬にはならないかと」
「……やはりアラッド様は他の子と比べて見ている視点が違いますね……話は変わりますが、何か良いことでもありましたか?」
普段からあまりポーカーフェイスを崩さないアラッドの口端がやや上がっている。
それだけで何かアラッドにとって良いことがあったのは明らか。
「えぇ、良いことがありましたよ。父さんからの褒美として、兵士二人が同行するなら森の中に入ってモンスターと戦ってもいいという許可を貰いました」
「ッ!!!! それは……誠ですか」
「はい。しっかり許可を貰いました。明日の朝から討伐に向かいます。今はかなり気持ちが高ぶっているので、明日寝不足にならないように寝るギリギリまで動いておこうと思っています」
「そうですか……」
本来であれば、兵士二人が同行するとはいえ五歳の子供をモンスターと戦わせることはない。
だが、グラストの眼から視てもアラッドの実力がずば抜けているのは解る。
(武の才があるギーラス様でもモンスターとの実戦は十歳の誕生日を迎えてから。その条件はルリナ様とガルア様も変わらない……しかし、アラッド様にはそれを覆すだけの力がある、ということですか)
特別扱いをする当主の気持ちは解る。
だが、さすがに兵士二人は少ないと思った。
(あまりぞろぞろと歩けば、丁度良い獲物が逃げる……それを考えると、せめて一人……魔法メインで戦う者を加えた方が良さそうでだな)
これに関しては後でフールに必ず進言しようと決めた。
(……言ってみるものだな。本当にモンスターと戦える様になるなんて……ヤバい、超テンション上がってきた)
まだ実戦経験がゼロのアラッドだが、低ランクのモンスターであれば倒せる自信があった。
(兵士二人を連れての行動だけど……低ランクのモンスターが相手なら、全部俺が相手にする。魔力の総量はそれなりに多くなってきたし、雑魚相手なら夕方まで相手をしていても大丈夫……の筈だ)
実際にモンスターと戦ったことはないので、万が一にも問題はないと断言は出来ない。
しかし、やはりそれなりに戦えるという自信はあった……主にその自信はエクストラスキル、糸から溢れていた。
(早速明日の朝から街の外に出てモンスター戦える……今日の夜は寝られないかもしれないな。寝る少し前まで動いておこう。そうすれば眠れるかもしれない)
明日遠足に行く小学生の様な気分になっているが、そんな自分を仕方ないと思ってしまう。
リアルでモンスターと遭遇し、己の手で倒す。
こういった世界に転生した際に、一度はその経験を味わってみたいと思っていた。
(夜寝られなくて、明日の朝寝ぼけ状態ってのは良くないし、しっかり汗をかいとかないと)
明日のことを考えながら訓練場に入ると、そこではアリサが兵士たちを相手に無双していた。
「ほらほら、もう少し粘りなさい!! そして小さな隙でもいいから見つけるのよ!!」
「は、はい!!!」
隙を見つけなさい。そう言いながらもアリサの連撃は止まらない。
(いや、母さん……どう考えてもその兵士が隙を見つけて反撃に移ることは無理だと思うんだけど)
パーシブル家の者を守る兵士として、当主の奥様に勝てなくてどうする……と、思う者は周囲の兵士たちの中にはいない。
元Bランク冒険者だったアリサ。
フールの第三夫人になってからも、兵士たちの訓練に参加するのは当たり前。
偶に実戦の勘を鈍らせない為に森の中に入り、モンスターを討伐することもある。
「……母さんはもう少し手加減を覚えた方が良さそうだな」
「私も同意見ですね。そんなことをアリサ様に直接言えませんが」
「グラストさん……いや、別に言っても良いと思いますよ。母さんは後輩の育成とかに目を向ける前に父さんの奥さんになったので、あんまり上手く手加減できないんですよ。あれだと、あまり兵士の鍛錬にはならないかと」
「……やはりアラッド様は他の子と比べて見ている視点が違いますね……話は変わりますが、何か良いことでもありましたか?」
普段からあまりポーカーフェイスを崩さないアラッドの口端がやや上がっている。
それだけで何かアラッドにとって良いことがあったのは明らか。
「えぇ、良いことがありましたよ。父さんからの褒美として、兵士二人が同行するなら森の中に入ってモンスターと戦ってもいいという許可を貰いました」
「ッ!!!! それは……誠ですか」
「はい。しっかり許可を貰いました。明日の朝から討伐に向かいます。今はかなり気持ちが高ぶっているので、明日寝不足にならないように寝るギリギリまで動いておこうと思っています」
「そうですか……」
本来であれば、兵士二人が同行するとはいえ五歳の子供をモンスターと戦わせることはない。
だが、グラストの眼から視てもアラッドの実力がずば抜けているのは解る。
(武の才があるギーラス様でもモンスターとの実戦は十歳の誕生日を迎えてから。その条件はルリナ様とガルア様も変わらない……しかし、アラッド様にはそれを覆すだけの力がある、ということですか)
特別扱いをする当主の気持ちは解る。
だが、さすがに兵士二人は少ないと思った。
(あまりぞろぞろと歩けば、丁度良い獲物が逃げる……それを考えると、せめて一人……魔法メインで戦う者を加えた方が良さそうでだな)
これに関しては後でフールに必ず進言しようと決めた。
261
お気に入りに追加
6,083
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる