上 下
2 / 1,012

二話 その道以外は興味無い

しおりを挟む
ある程度自由に動けるようになったアラッドだが、屋敷の中を自由に移動できるだけで、屋敷の外には滅多に出ない。

一日のサイクルとしては、朝起きてから朝食を食べ、父親に勝ってもらった木剣を使って素振りとスタミナ強化のランニングを行う。

この世界でどのようにして生きるか。
それはアラッドの中で大体決まっており、その為には強さが必要だった。

朝食後の特訓が終われば昼食を食べ、今度は二時間ほど文字の読み書きや計算、国の歴史などについて学ぶ。
ほぼ同じ時期に生まれた第二夫人の息子である四男、ドランクは大いに苦戦しているが、今よりも幼い頃から母親に本を読んでもらい、前世の記憶があるアラッドにとって難しいとは感じなかった。

計算を覚える速さには家庭教師も脱帽するほどの結果を残した。
将来は学者になる道もあるだろうと言われたが、アラッドはそれは真正面から拒否した。

「俺は冒険者になる」

母の影響を受けたというのが大きいが、自分が目指せる未知の中で冒険者という職業が一番人生を楽しめると感じだ。

昼過ぎの勉強が終われば、すぐさま魔法の特訓に移る。
とはいえ、アラッドはまだ魔力操作を中心に特訓を行っており、攻撃魔法などの特訓を行う時間はあまり多くない。

ただ、属性というのを一般人よりも深く理解しているアラッドは魔法スキルを覚えるのが異常に早かった。

火、土、水、風、雷。
この五大属性を己の才能だけで習得出来る者は圧倒的に少ない。

いや、ほぼいないと言って良いだろう。
だが……アラッドが習得した経緯を考えるに、属性がどの様な特徴を持っているのか。
それを深く理解することで魔法スキルを幼いながらに習得した。

この事実に実の母であるアリサは大感激し、アラッドを高い高いしながら何度もその場をぐるぐると回った。
ハーレムを実現させたイケメン侯爵、フールはもしかしたら将来は宮廷魔術師になるかもしれないと思い、胸を高鳴らせた。

しかしまさかの展開に第一夫人であるエリアと第二夫人であるリーナが焦りを感じ……ることはなかった。
アラッドは義理の母であるエリアやアリサにも礼儀正しく、常に将来は母の様に冒険者になりたいと口にしていた。

だが、それでもエリアの息子であるパージブル家の長男、ギーラスとリーナの息子である四男、ドランクは大きな焦りを感じていた。

ドランクはほぼ同じ時期に生まれたアラッドに強さで負けたくないという子供らしい焦りだが、ギーラスはもしかしたらアラッドにパーシブル侯爵家、次期当主の座を奪われるのではと内心疑っていた。

(早くモンスターと戦ってみたいな)

ギーラスの焦りは完全に杞憂であり、アラッドはパーシブル侯爵家の次期当主の座など全く興味がなかった。

魔法関係の特訓が終われば夕食を食べ、その後は再び体力づくりと素振り。
子供の体でやり過ぎと思われるかもしれないが、それは誰も強制していない。
アラッドが自分の意志で一日三回の訓練を続けている。

パーシブル家に仕える使用人や兵士、騎士たちは頑張り過ぎなアラッドに休んだ方が良いと伝えるが、止めることはない。

(同世代の奴らよりも先に進んでおかないと)

魔法は属性を深く理解しているからこそスキルを習得出来たが、才があるかはまた別の話。
天才と呼ばれる者たちに負けたくないという強い思いもあり……月日は流れ、毎日厳しい特訓を重ねたアラッドはついに五歳となった。

この世界で五歳になるというのは特別な意味がある。
丁度五歳になった日に、人は何かしらのスキルを得る。

そのスキルは他人が持つスキルと比べ、質が少々違う。

同じ剣技のスキルであっても、技を発動する際の補正に差があるなど、同じスキルを持つ者との才の差を表す証拠となる。

ただ、全員が全員五歳の日にスキルを得られるわけではない。
故に……貴族の令息令嬢はは五歳の日にスキルを得られるか否で今後進める道が変わる可能性がある。

そして五歳の誕生日を迎えた夜、アラッドは糸というスキルを得た。
しおりを挟む
感想 465

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...