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八百五十六話 縛られたくない
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(この人がヤンガース先輩を倒して、ジェリファーさんを倒した黒衣の死神の知人……)
ソウスケにスカウトの話を持ち掛けた女性、フランの正体はソフィア・エルマーデス。
貴族令嬢、王宮内で書類仕事を行うタイプではなく、バリバリ戦場で働く女性騎士。
そして黒衣の死神……もとい、決着を決める最後の決闘でソウスケ(分身)が戦った女性騎士、ジェリファー・アディスタに憧れを抱く……ファンに近い存在。
(ヤンガース先輩を倒したことも驚きだけど、こんな子供の知人がジェリファーさんを…………やっぱり、どうしても疑ってしまうわね)
ソフィアは今回の戦争には参加していなかった。
本人は戦争に参加して仲間たちと共に戦果を上げる気満々だったのだが……当然な話として、試合ではなく戦争であるため、死ぬ可能性が大いにある。
互いに国家を滅ぼしたいという意志を持って戦っている訳ではない為、優秀な人材を全て投入することは出来ない。
優秀な若手であっても、対人戦に優れたベテラン戦士と遭遇してしまっては、寧ろ死ぬ確率の方が高い。
故にソフィアは今回の戦争に参加出来なかった。
参戦することを止められたという事は、それだけ将来を期待されている人材であるという証明にもなるが……本人がその決定に納得してるかは別問題だった。
「嬉しい申し出と言うか待遇だと思うんですけど、お断りさせてもらいます」
「……こちらとしては、今すぐ決めていただこうとは思っていません」
「そうですか。でも、俺としては冒険者ギルド以外、どこかに属そうとは思っていないので」
商人ギルドと鍛冶ギルドにも多少世話にはなっているが、そちらは特にソウスケをどうこうしようとは考えていない。
「…………安定した収入はいらない、ということでしょうか」
このスカウトに対して、そもそもソフィアは決して小さくない不満を抱いていた。
何故自国の冒険者、兵士、騎士の多くを殺した人物をスカウトしなければならないのか。
調べれば、ソウスケが貴族出身ではなく、一応平民出身ということは解っているので、ひき肉に関しては大した問題ではない。
しかし、遭遇した敵国部隊の連中は即座に潰して殺し、少しでも同じ部隊の仲間に危機が及ばない様にと心がけながら動いていたソウスケ(本体)は……レヴァルグの投擲もあって、大勢の戦闘者たちをあの世に送ってきた。
戦争が起これば多くの者が死ぬというのは至極当然。
そんな事はソフィアも理解しているが……それはそれ、これはこれという問題。
「正直な話、あまり国とかそういう存在に縛られたくないというのと、他の同業者たちの前で言うと不満を買ってしまうんですけど、特にお金には困ってないんですよ」
「…………」
報酬を丸っきり否定されては、スカウトとして……もう何も出来ない。
ソフィアは全く気が乗らないが、仕事の一つということもあり、簡単に投げ出すわけにはいかない。
(せ、先輩は女の武器を使うのもひ、一つの手だと言ってたけど……それは、やはり騎士として……)
接待……と言う名のそういうやり方はあるが、だとしてもソウスケがルクローラ王国に属するかは別問題。
そういう事をしてもらえるなら、歳頃のソウスケとしては大喜びだが、たった一度のそういう事で信念……そう言えるほど堅く真っ当なものではないが、これまでの生き方を変えるつもりはない。
「それに、その……ルクローラ王国の国民を疑うような言葉になってしまいますけど、多分俺がそちらに行けば大勢の方々に狙われますよね」
「ッ……」
急所に強攻撃を食らったような顔になるソフィア。
スカウトという立場としては絶対にないですと言わなければならないのだが、そもそも今回のスカウトに関しては、騎士団の内部からも反対の声が上がっていた。
そういった事情を知っているソフィアは……咄嗟に否定する言葉が出てこなかった。
ソウスケにスカウトの話を持ち掛けた女性、フランの正体はソフィア・エルマーデス。
貴族令嬢、王宮内で書類仕事を行うタイプではなく、バリバリ戦場で働く女性騎士。
そして黒衣の死神……もとい、決着を決める最後の決闘でソウスケ(分身)が戦った女性騎士、ジェリファー・アディスタに憧れを抱く……ファンに近い存在。
(ヤンガース先輩を倒したことも驚きだけど、こんな子供の知人がジェリファーさんを…………やっぱり、どうしても疑ってしまうわね)
ソフィアは今回の戦争には参加していなかった。
本人は戦争に参加して仲間たちと共に戦果を上げる気満々だったのだが……当然な話として、試合ではなく戦争であるため、死ぬ可能性が大いにある。
互いに国家を滅ぼしたいという意志を持って戦っている訳ではない為、優秀な人材を全て投入することは出来ない。
優秀な若手であっても、対人戦に優れたベテラン戦士と遭遇してしまっては、寧ろ死ぬ確率の方が高い。
故にソフィアは今回の戦争に参加出来なかった。
参戦することを止められたという事は、それだけ将来を期待されている人材であるという証明にもなるが……本人がその決定に納得してるかは別問題だった。
「嬉しい申し出と言うか待遇だと思うんですけど、お断りさせてもらいます」
「……こちらとしては、今すぐ決めていただこうとは思っていません」
「そうですか。でも、俺としては冒険者ギルド以外、どこかに属そうとは思っていないので」
商人ギルドと鍛冶ギルドにも多少世話にはなっているが、そちらは特にソウスケをどうこうしようとは考えていない。
「…………安定した収入はいらない、ということでしょうか」
このスカウトに対して、そもそもソフィアは決して小さくない不満を抱いていた。
何故自国の冒険者、兵士、騎士の多くを殺した人物をスカウトしなければならないのか。
調べれば、ソウスケが貴族出身ではなく、一応平民出身ということは解っているので、ひき肉に関しては大した問題ではない。
しかし、遭遇した敵国部隊の連中は即座に潰して殺し、少しでも同じ部隊の仲間に危機が及ばない様にと心がけながら動いていたソウスケ(本体)は……レヴァルグの投擲もあって、大勢の戦闘者たちをあの世に送ってきた。
戦争が起これば多くの者が死ぬというのは至極当然。
そんな事はソフィアも理解しているが……それはそれ、これはこれという問題。
「正直な話、あまり国とかそういう存在に縛られたくないというのと、他の同業者たちの前で言うと不満を買ってしまうんですけど、特にお金には困ってないんですよ」
「…………」
報酬を丸っきり否定されては、スカウトとして……もう何も出来ない。
ソフィアは全く気が乗らないが、仕事の一つということもあり、簡単に投げ出すわけにはいかない。
(せ、先輩は女の武器を使うのもひ、一つの手だと言ってたけど……それは、やはり騎士として……)
接待……と言う名のそういうやり方はあるが、だとしてもソウスケがルクローラ王国に属するかは別問題。
そういう事をしてもらえるなら、歳頃のソウスケとしては大喜びだが、たった一度のそういう事で信念……そう言えるほど堅く真っ当なものではないが、これまでの生き方を変えるつもりはない。
「それに、その……ルクローラ王国の国民を疑うような言葉になってしまいますけど、多分俺がそちらに行けば大勢の方々に狙われますよね」
「ッ……」
急所に強攻撃を食らったような顔になるソフィア。
スカウトという立場としては絶対にないですと言わなければならないのだが、そもそも今回のスカウトに関しては、騎士団の内部からも反対の声が上がっていた。
そういった事情を知っているソフィアは……咄嗟に否定する言葉が出てこなかった。
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