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八百三十八話 始まる前に
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「ん~~~……頭痛い」
昼と夜、一日に二回宴会を行った翌日、ソウスケは普段よりも早く……吞み過ぎによる頭痛の影響で目を覚ましてしまった。
「おはようございます、ソウスケさん」
「おぅ。おはよう、ミレアナ。ミレアナは……あんまり頭痛くない感じか?」
「多少の頭痛は感じますが、今からダンジョンに潜ると言われても支障はありません」
「はは、さすがに学術都市に居ても、今日はダンジョン探索を遠慮したい気分だ」
決して悪くはなかった。
やはり冒険者同士の宴というのは楽しいと思えたが……珍しく飲み食いの連続で疲れを感じていた。
「でも、ザハークは今からでも全然潜れるんだろうな」
「そんな状況の探索もまた一興、なんて考えそうですね」
「はっはっは!! 眼に浮かぶな」
一先ず着替えて朝食を食べ終えたソウスケたちは、先日の様にまた吞んで食って騒ぐのではなく、礼服が売っている店へと向かった。
王城での褒美の受け取りなどの為に、先日三人と同様に呑んで食っていた冒険者たちも、痛い頭を無視して礼服
を探していた。
(礼服なんて適当で良いんだが……一応、それなりの店に行かないとな)
自分はどうでも良いが、仲間が身に付ける服はそれなりの物を用意しないと……というのがソウスケの精神。
しかし、それはソウスケだけではなく、他二人も同じ考えだった。
「この店……だよな?」
ソウスケは宿屋の店員に礼服を売っている店を尋ねた。
店のランクはそれなりで構わないと伝えたの。
それは紛れもなくソウスケの本心なのだが……宿屋の店員は失礼があってはならないと思い、王都でトップスリーに入る店を教えた。
「おい、あの面子は……もしかして」
「あ、あぁ。確かにそうだな」
店の前にそれなりの戦闘力を有している警備員を配置するなど、それなりの店では用意出来ない安心感。
そんな警備員二人がソウスケたちの元へやって来た。
「ソウスケさん、たちですよね。どうぞ、中へご案内します」
「あ、はい」
流れで入店すると答えてしまい、結局王都でトップスリーに入る店で買い物をすることが決まった。
すると警備員の一人が速足で何処かへ消えてしまい……数十秒後には警備員ではない妙齢の男性が現れた。
「ソウスケ様、ミレアナ様、ザハーク様。私、セイルと申します」
「どうも」
「もしよろしければ、お買い物の品についてアドバイスをさせて頂ければと思い、お声をかけさせていただきました」
「……よろしくお願いします」
自分にあまりセンスはないと思っているため、ソウスケは雰囲気のある従業員、セイルに任せることにした。
当然に、ミレアナとザハークも同意。
三人は貴族ではない。豪商の関係者でもない。
しかし……今まで何十年とアドバイザーを続けてきたセイルは、かつてない程の緊張感を持ちつつも、吊り上がりそうになる笑みを必死で堪えていた。
彼もまた、戦闘者でいうところの笑いながら死線を乗り越えようと、一歩踏み出せる強者。
「せ、セイルさん。ちょっと待ってくれ、俺としては単純なクロのタキシードとかで良いと思ってるんですけど」
「いえ、ソウスケ様にはこちらの赤いタキシードがお似合いです。私もソウスケ様たちの武勇伝は耳にしております」
調べれば意外とぽんぽん出てくる者であり、率直に言って化け物だと断言出来る。
そんな奇跡が重ね合わさった様な存在に、ただ店の利益になるような行動など、取れるはずがない。
やはりソウスケと言えば、レヴァルグといった炎の名槍を使用した攻撃が印象強く、さっそくネタを仕入れた吟遊詩人たちは特にレヴァルグの戦闘心を強調し、人々にソウスケの武勇伝を伝えていた。
「ど、どうだ。二人とも」
一応勧められるがままに赤がメインのタキシードを試着。
本人が思っていた以上に似合ってることもあり、ミレアナとザハークは無意識に拍手を送っていた。
昼と夜、一日に二回宴会を行った翌日、ソウスケは普段よりも早く……吞み過ぎによる頭痛の影響で目を覚ましてしまった。
「おはようございます、ソウスケさん」
「おぅ。おはよう、ミレアナ。ミレアナは……あんまり頭痛くない感じか?」
「多少の頭痛は感じますが、今からダンジョンに潜ると言われても支障はありません」
「はは、さすがに学術都市に居ても、今日はダンジョン探索を遠慮したい気分だ」
決して悪くはなかった。
やはり冒険者同士の宴というのは楽しいと思えたが……珍しく飲み食いの連続で疲れを感じていた。
「でも、ザハークは今からでも全然潜れるんだろうな」
「そんな状況の探索もまた一興、なんて考えそうですね」
「はっはっは!! 眼に浮かぶな」
一先ず着替えて朝食を食べ終えたソウスケたちは、先日の様にまた吞んで食って騒ぐのではなく、礼服が売っている店へと向かった。
王城での褒美の受け取りなどの為に、先日三人と同様に呑んで食っていた冒険者たちも、痛い頭を無視して礼服
を探していた。
(礼服なんて適当で良いんだが……一応、それなりの店に行かないとな)
自分はどうでも良いが、仲間が身に付ける服はそれなりの物を用意しないと……というのがソウスケの精神。
しかし、それはソウスケだけではなく、他二人も同じ考えだった。
「この店……だよな?」
ソウスケは宿屋の店員に礼服を売っている店を尋ねた。
店のランクはそれなりで構わないと伝えたの。
それは紛れもなくソウスケの本心なのだが……宿屋の店員は失礼があってはならないと思い、王都でトップスリーに入る店を教えた。
「おい、あの面子は……もしかして」
「あ、あぁ。確かにそうだな」
店の前にそれなりの戦闘力を有している警備員を配置するなど、それなりの店では用意出来ない安心感。
そんな警備員二人がソウスケたちの元へやって来た。
「ソウスケさん、たちですよね。どうぞ、中へご案内します」
「あ、はい」
流れで入店すると答えてしまい、結局王都でトップスリーに入る店で買い物をすることが決まった。
すると警備員の一人が速足で何処かへ消えてしまい……数十秒後には警備員ではない妙齢の男性が現れた。
「ソウスケ様、ミレアナ様、ザハーク様。私、セイルと申します」
「どうも」
「もしよろしければ、お買い物の品についてアドバイスをさせて頂ければと思い、お声をかけさせていただきました」
「……よろしくお願いします」
自分にあまりセンスはないと思っているため、ソウスケは雰囲気のある従業員、セイルに任せることにした。
当然に、ミレアナとザハークも同意。
三人は貴族ではない。豪商の関係者でもない。
しかし……今まで何十年とアドバイザーを続けてきたセイルは、かつてない程の緊張感を持ちつつも、吊り上がりそうになる笑みを必死で堪えていた。
彼もまた、戦闘者でいうところの笑いながら死線を乗り越えようと、一歩踏み出せる強者。
「せ、セイルさん。ちょっと待ってくれ、俺としては単純なクロのタキシードとかで良いと思ってるんですけど」
「いえ、ソウスケ様にはこちらの赤いタキシードがお似合いです。私もソウスケ様たちの武勇伝は耳にしております」
調べれば意外とぽんぽん出てくる者であり、率直に言って化け物だと断言出来る。
そんな奇跡が重ね合わさった様な存在に、ただ店の利益になるような行動など、取れるはずがない。
やはりソウスケと言えば、レヴァルグといった炎の名槍を使用した攻撃が印象強く、さっそくネタを仕入れた吟遊詩人たちは特にレヴァルグの戦闘心を強調し、人々にソウスケの武勇伝を伝えていた。
「ど、どうだ。二人とも」
一応勧められるがままに赤がメインのタキシードを試着。
本人が思っていた以上に似合ってることもあり、ミレアナとザハークは無意識に拍手を送っていた。
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