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八百三十話 背負っているからこそ
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後方に下がり、斬撃刃や刺突を放って体勢を崩すという選択肢はあった。
せの選択肢が浮かばない程、伊達に歳を取ってない。
だが……渋いおじ様の騎士としての心がその選択肢を取ることを許さなかった
後方で上司の選択肢を見ていたヤンキー騎士は、そんな選択肢を取った上司を……バカだと思いながらも、その人らしいという感情が湧いてきた。
(悔しいが、俺の実力はまだあの人に届いてない……あの人なら、絶対に)
自分が負けてしまった一敗を取り返してくれる。
そんな期待を寄せた瞬間、視界が切り崩れた。
「ッ!!?? ……はっ?」
というのは、ただの錯覚。
いくらレガースが優れた侍、剣豪であったとしても、空間を斬ることは流石に出来ない。
「良き闘志だった。騎士道を貫いた剣豪よ」
刃を鞘に納めながら言い終わると同時に、止まった渋いおじ様系騎士の体に横一閃の傷が生まれ、その場に崩れ落ちた。
「お、お疲れ様です、レガースさん」
「はっはっは! いやぁ~、本当に疲れたよ。ソウスケ君が造ってくれたこの名刀、残焔がなければ無傷で倒すのは無理だったよ」
サラッとソウスケの株を持ち上げるレガースだが、本人の耳にはあまり褒め言葉が入ってなかった。
(いやいやいや……や、ヤバ過ぎない、か? 本当に線だけしか見えなかった)
レガースの居合一閃に寒気、衝撃を感じたのはソウスケ本体、分身だけではない。
ソウスケのパーティーメンバーであるミレアナとザハークも同じく、過去最大級の衝撃を受け……エイリスト王国側の戦闘者たち、ルクローラ王国の騎士たちにも多大な衝撃を与えた。
「……っ、しゃあああああああああ!!!! お前ら、これで二勝が確定したぞ!!!!!!!」
勝利が確定してから約十秒後、一人の戦闘者が声を上げ……ようやくエイリスト王国側の戦闘者たちは自分たちの勝利を確信し、喜び始めた。
心中、冒険者たちは全員どうやってレガースを自身のパーティーに誘おうと考えているが、一先ず騎士や傭兵たちも含めて勝利を祝う。
「お前たち、馬鹿な真似をしようなどと考えるなよ」
その言葉は自分たちの勝利を祝うエイリスト王国側の戦闘者たち……に向けられた言葉ではなく、渋いおじ様系騎士を殺されたことで怒りや憎しみ、殺意に満ちているルクローラ王国の者たちへ向けられた言葉。
声の主は、いち早くその感情に気付いたソウスケ分身。
「お前らが約束を破ってその気になるってなら……そっちの大将含めて、全員死んでも文句を言うなよ」
ソウスケ分身が戦意を放つと同時に、ミレアナやザハーク、先程まで大盛り上がりしていた者たちも戦意を放って対抗。
「すまない。彼に世話になった者が多くてな」
「そうか。だが、これは戦争だ。もし……戦争が終わってから後ろの剣豪に手を出してみろ」
先程までの純粋な戦意の上に、全力の殺気が加算。
本体と分身に別れているとはいえ、放つ圧は分散されない。
「お前ら……国ごと潰すぞ」
「………………肝に銘じておこう」
たった一人が宣言した言葉。
一人で国を潰す事など不可能。
ただの脅し言葉……そんな事は解っている筈なのに、本能が震える。
本当に国を潰さずとも、機能停止に追い込まれるまで暴れるのではないかと、そう思わせる存在感。
これから戦うジェリファー・アディスタはこれから望む戦闘に、自身の全てを懸けると誓った。
「では、やろうか」
「……解った」
ソウスケ分身としては、これ以上殺り合う必要はあるのかという思いが、ほんの少しだけあった。
しかし、ルクローラ王国の代表として前に出てきた女性騎士は、文字通りルクローラ王国を背負っている。
もう自身が勝ったところで結果は覆らないと解っていても、逃げる道理はない。
そんな気持ち、誇り、騎士道精神、覚悟を察し……今一度、ソウスケ分身もふんどしを締め直す。
せの選択肢が浮かばない程、伊達に歳を取ってない。
だが……渋いおじ様の騎士としての心がその選択肢を取ることを許さなかった
後方で上司の選択肢を見ていたヤンキー騎士は、そんな選択肢を取った上司を……バカだと思いながらも、その人らしいという感情が湧いてきた。
(悔しいが、俺の実力はまだあの人に届いてない……あの人なら、絶対に)
自分が負けてしまった一敗を取り返してくれる。
そんな期待を寄せた瞬間、視界が切り崩れた。
「ッ!!?? ……はっ?」
というのは、ただの錯覚。
いくらレガースが優れた侍、剣豪であったとしても、空間を斬ることは流石に出来ない。
「良き闘志だった。騎士道を貫いた剣豪よ」
刃を鞘に納めながら言い終わると同時に、止まった渋いおじ様系騎士の体に横一閃の傷が生まれ、その場に崩れ落ちた。
「お、お疲れ様です、レガースさん」
「はっはっは! いやぁ~、本当に疲れたよ。ソウスケ君が造ってくれたこの名刀、残焔がなければ無傷で倒すのは無理だったよ」
サラッとソウスケの株を持ち上げるレガースだが、本人の耳にはあまり褒め言葉が入ってなかった。
(いやいやいや……や、ヤバ過ぎない、か? 本当に線だけしか見えなかった)
レガースの居合一閃に寒気、衝撃を感じたのはソウスケ本体、分身だけではない。
ソウスケのパーティーメンバーであるミレアナとザハークも同じく、過去最大級の衝撃を受け……エイリスト王国側の戦闘者たち、ルクローラ王国の騎士たちにも多大な衝撃を与えた。
「……っ、しゃあああああああああ!!!! お前ら、これで二勝が確定したぞ!!!!!!!」
勝利が確定してから約十秒後、一人の戦闘者が声を上げ……ようやくエイリスト王国側の戦闘者たちは自分たちの勝利を確信し、喜び始めた。
心中、冒険者たちは全員どうやってレガースを自身のパーティーに誘おうと考えているが、一先ず騎士や傭兵たちも含めて勝利を祝う。
「お前たち、馬鹿な真似をしようなどと考えるなよ」
その言葉は自分たちの勝利を祝うエイリスト王国側の戦闘者たち……に向けられた言葉ではなく、渋いおじ様系騎士を殺されたことで怒りや憎しみ、殺意に満ちているルクローラ王国の者たちへ向けられた言葉。
声の主は、いち早くその感情に気付いたソウスケ分身。
「お前らが約束を破ってその気になるってなら……そっちの大将含めて、全員死んでも文句を言うなよ」
ソウスケ分身が戦意を放つと同時に、ミレアナやザハーク、先程まで大盛り上がりしていた者たちも戦意を放って対抗。
「すまない。彼に世話になった者が多くてな」
「そうか。だが、これは戦争だ。もし……戦争が終わってから後ろの剣豪に手を出してみろ」
先程までの純粋な戦意の上に、全力の殺気が加算。
本体と分身に別れているとはいえ、放つ圧は分散されない。
「お前ら……国ごと潰すぞ」
「………………肝に銘じておこう」
たった一人が宣言した言葉。
一人で国を潰す事など不可能。
ただの脅し言葉……そんな事は解っている筈なのに、本能が震える。
本当に国を潰さずとも、機能停止に追い込まれるまで暴れるのではないかと、そう思わせる存在感。
これから戦うジェリファー・アディスタはこれから望む戦闘に、自身の全てを懸けると誓った。
「では、やろうか」
「……解った」
ソウスケ分身としては、これ以上殺り合う必要はあるのかという思いが、ほんの少しだけあった。
しかし、ルクローラ王国の代表として前に出てきた女性騎士は、文字通りルクローラ王国を背負っている。
もう自身が勝ったところで結果は覆らないと解っていても、逃げる道理はない。
そんな気持ち、誇り、騎士道精神、覚悟を察し……今一度、ソウスケ分身もふんどしを締め直す。
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