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七百八十七話 無能は立たないでくれ
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王都から派遣された三十代後半の騎士。
その騎士を遠目で見たソウスケは、少し安心していた。
(ちゃんと戦える人っぽいな)
騎士にとって、戦争とは武勲を上げる場所。
そう考える者は少なくない。
その考え自体は悪い訳ではなく、そういった場であるのも間違いない。
しかし、立場だけの無能が上に立とうとすれば、下が苦労するのは目に見えている。
クズが上に立たれるのは嫌だ。
それは騎士であっても、同じ考えを持つ。
(覇気もあるし、俺たちを粗末にはしないだろう……多分)
失礼に値するので、特に視てはいないため、指揮官の中身など解らない。
解からないが、一応信用出来るだろうと判断。
これから戦争に参加する兵士や騎士、冒険者たちへの鼓舞も慣れており、心を奮い立たせてくれる。
とはいえ、この場に取集された戦闘者たち、全員が最前線に参加する訳ではなく、ファードを守るために残る者たちもいる。
当然……ソウスケたちは最前線へ参加する。
指揮官である騎士は、冒険者ギルドの方から冒険者たちに資料を受け取っており、それを元に編成を考えている。
(……あの三人が、噂の冒険者たちか)
壇上の上で演説を終えた後、指揮官は遠目から見えたソウスケたちについて、本当に自身の采配間違っていなかったのか? と考えてしまった。
視る眼はある。
故に、鬼人に近いオーガと普通のエルフとは異なる存在感を放つ女性には、確かな強さを感じた。
だが……その二人の上に立つリーダーである少年には、二人と同等な力強さを感じなかった。
(極端に力を隠すのが上手いタイプか? ギルドからの情報では、あの少年に愚か者が絡むたびに、仲間の二人が対応していたようだが……しかし、決して侮ってはならないという報告もあった)
学術都市の冒険者ギルド職員たちは、他のギルド職員たちと比べて、深くソウスケの実力を感じ取り、把握していた。
実際に見たわけではないが、目撃証言や実績が多く、その点だけを見れば実力を疑う要素はない。
上手く実力を把握出来ない。
その点に関しても、高い実力を持っている証拠なのだと判断していた。
(……彼も、兵士や騎士たちと同じであると願おう)
戦争に参加した。
ランクゆえに拒否出来なかったのかもしれないが、それでも参加したことに変わりはない。
つまり、戦場という過酷な環境で、死ぬ覚悟があるということ。
彼にその意思の強さがあると信じ、指揮官はなすべき仕事に戻った。
「ソウスケさん、体のコンディションは問題ありませんか?」
「あぁ、バッチリだ。朝食べたご飯も、良い感じに消化されてる」
既にフォードの外に出て、軽く準備体操をするソウスケ。
分身のスキルを使っている影響で、いつものベストパフォーマンスは出せないが、それでも今の身体能力にはそれなりに慣れた。
加えて、普段は付けないようなマジックアイテムも装備している為、現在の戦闘力にそこまで不安はない。
「おっ、良いマジックアイテムを付けてんな」
「学術都市の上級者向けダンジョンを潜れば、宝箱から手に入りますよ」
「かぁ~、簡単に言ってくれるな。あそこ、四十層以降は平気でAランクモンスターが出るんだろ」
「そうですね……確かに、探索中に数回ぐらいは遭遇しましたね」
「……お前ら、良く生きてこられたな」
スラウザーマンモス、ガルム、溶岩竜など、確かに複数のAランクモンスターを発見、戦闘してきた。
「旨味も多いですからね」
「そりゃそうだろうな……俺らも、今回の戦争が終わったら行ってみるか」
死亡フラグ……と思えなくもない言葉を零したBランクの冒険者。
しかし、ソウスケは男の言葉を茶化すことはなく、真剣に生きて帰ろう……短い期間とはいえ、関わった味方の者たちは生かしたい。
その傲慢で不遜とも思われかねない意志を抱き、戦争へと臨む。
その騎士を遠目で見たソウスケは、少し安心していた。
(ちゃんと戦える人っぽいな)
騎士にとって、戦争とは武勲を上げる場所。
そう考える者は少なくない。
その考え自体は悪い訳ではなく、そういった場であるのも間違いない。
しかし、立場だけの無能が上に立とうとすれば、下が苦労するのは目に見えている。
クズが上に立たれるのは嫌だ。
それは騎士であっても、同じ考えを持つ。
(覇気もあるし、俺たちを粗末にはしないだろう……多分)
失礼に値するので、特に視てはいないため、指揮官の中身など解らない。
解からないが、一応信用出来るだろうと判断。
これから戦争に参加する兵士や騎士、冒険者たちへの鼓舞も慣れており、心を奮い立たせてくれる。
とはいえ、この場に取集された戦闘者たち、全員が最前線に参加する訳ではなく、ファードを守るために残る者たちもいる。
当然……ソウスケたちは最前線へ参加する。
指揮官である騎士は、冒険者ギルドの方から冒険者たちに資料を受け取っており、それを元に編成を考えている。
(……あの三人が、噂の冒険者たちか)
壇上の上で演説を終えた後、指揮官は遠目から見えたソウスケたちについて、本当に自身の采配間違っていなかったのか? と考えてしまった。
視る眼はある。
故に、鬼人に近いオーガと普通のエルフとは異なる存在感を放つ女性には、確かな強さを感じた。
だが……その二人の上に立つリーダーである少年には、二人と同等な力強さを感じなかった。
(極端に力を隠すのが上手いタイプか? ギルドからの情報では、あの少年に愚か者が絡むたびに、仲間の二人が対応していたようだが……しかし、決して侮ってはならないという報告もあった)
学術都市の冒険者ギルド職員たちは、他のギルド職員たちと比べて、深くソウスケの実力を感じ取り、把握していた。
実際に見たわけではないが、目撃証言や実績が多く、その点だけを見れば実力を疑う要素はない。
上手く実力を把握出来ない。
その点に関しても、高い実力を持っている証拠なのだと判断していた。
(……彼も、兵士や騎士たちと同じであると願おう)
戦争に参加した。
ランクゆえに拒否出来なかったのかもしれないが、それでも参加したことに変わりはない。
つまり、戦場という過酷な環境で、死ぬ覚悟があるということ。
彼にその意思の強さがあると信じ、指揮官はなすべき仕事に戻った。
「ソウスケさん、体のコンディションは問題ありませんか?」
「あぁ、バッチリだ。朝食べたご飯も、良い感じに消化されてる」
既にフォードの外に出て、軽く準備体操をするソウスケ。
分身のスキルを使っている影響で、いつものベストパフォーマンスは出せないが、それでも今の身体能力にはそれなりに慣れた。
加えて、普段は付けないようなマジックアイテムも装備している為、現在の戦闘力にそこまで不安はない。
「おっ、良いマジックアイテムを付けてんな」
「学術都市の上級者向けダンジョンを潜れば、宝箱から手に入りますよ」
「かぁ~、簡単に言ってくれるな。あそこ、四十層以降は平気でAランクモンスターが出るんだろ」
「そうですね……確かに、探索中に数回ぐらいは遭遇しましたね」
「……お前ら、良く生きてこられたな」
スラウザーマンモス、ガルム、溶岩竜など、確かに複数のAランクモンスターを発見、戦闘してきた。
「旨味も多いですからね」
「そりゃそうだろうな……俺らも、今回の戦争が終わったら行ってみるか」
死亡フラグ……と思えなくもない言葉を零したBランクの冒険者。
しかし、ソウスケは男の言葉を茶化すことはなく、真剣に生きて帰ろう……短い期間とはいえ、関わった味方の者たちは生かしたい。
その傲慢で不遜とも思われかねない意志を抱き、戦争へと臨む。
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