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七百五十七話 勝てない部分があった

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(……な、長いな)

既にザハークとオールドオーガが戦い始めてから五分を超えており、ザハークの実力を考えると、かなりの長時間戦闘と言える。

これに関しては、ザハークがかなり手を抜いている……という訳ではなく、本当にオールドオーガの実力が旅抜けている。

以前戦った赤毛のアシュラコングや、クリムゾンリビングジェネラル以上の実力。
下手に魔法を使えば意識の隙間を突かれ、あっさり狩られそうな予感がするため、剣技や体術も得意だけど魔法も動きながら行えるよ! といったザハークのアドバンテージが使えない。

(手を抜いている様には、思えませんね)

再度、決して弱くはないモンスターが襲ってくるが、二人はそれらを速攻で対処し、ザハークの邪魔にならない様に動く。

そんな護衛中にチラッと二体のバトルに目を向けるが、やはり遊んでいる様には思えない。

(ザハークのスタミナはモンスターということもあって、私やソウスケさんよりも多い。しかし、相手も同じモンスター……もしかしたら十分を超える長い戦闘に……いえ、二十分を超える可能性すらありそうですね)

ミレアナの予想は、まさにその通りになり……直ぐに戦闘時間が十分を超えた。

戦闘中、ザハークはただ闇雲に大剣を振るっている訳ではない。
オールドオーガの動きを分析し、次の一手を予測。
そして次に自分が繰り出す一手で勝負を決めよう……と、必死でオールドオーガの太刀筋を見極めようとしている。

ヴァルガングの様に予想出来ない体勢から攻撃が繰り出されるようなことはなく、ある程度戦闘を続ければその太刀筋は読めてくる。

しかし、それを見極めようとしているのはザハークだけではない。

(オールドオーガ、か。伊達に、歳は取っていない、という訳だな!!)

ザハークがオールドオーガの太刀筋を見極めようとするように、オールドオーガも同じことをしていた。

故に、戦闘はパワーや反射速度よりも、読み合いが重要になり始めた。
読み合いはこれまでの経験値がものを言う。

それを考えると、一見オールドオーガの方が有利に思われる。
しかし、ザハークも普段の狩りや、ダンジョンでモンスターを相手にした数を考えると、決してオールドオーガに劣っていない。

強敵との戦闘経験に限れば、ザハークの方が勝っている可能性すらあり得る。

少し離れた場所から戦いをチラッと見ているソウスケも、ザハークが経験で負けているとは思えなかった。

(でも……それでも、マジで戦ってるザハークが押しきれないのか。本当に凄いな)

互いに数回ほど大剣術、刀術のスキル技を使用している為、互いのダメージはゼロではない。
しかし、何分も戦っていれば、回復力が高いため、完全に治ってしまう。

加えて、そのスキル技を両者とも脳内にインプット。
そうなってしまうと、二度同じ技を食らうことはなく、両者もそれを理解しているので、現在は純粋に剣技による勝負が続いている。

(大きくても太刀なんだから、ザハーク作の大剣を斬り合ってれば、刃が欠けていくと思うんだが……自己修復の効果を持ってそうだな)

互いの武器が丈夫ということもあり、武器破壊という手段は使えない。

ただ……オールドオーガにも、オールドな部分はあった。
それは、スタミナ。

人間と同じく、歳を取ったオーガは通常の戦闘ならいざ知らず、ザハークの様な超強敵とのバトルは過酷に変わりない。
普通の戦いよりも集中力を消費し、それがスタミナの消費速度にも影響。

その結果、戦闘が始まってから十五分が経過した頃、ついにオールドオーガの太刀筋が鈍った。

「ハッ!!!!!」

その僅かな鈍りを見逃さず、炎を纏って気合一閃。

オールドオーガは胴体に魔力を集中させたが、それでも左斜めに大きな太刀傷が入った。
心臓こそ斬り裂いていないものの、胸骨や内臓、肋骨などを深く斬り刻んだ。
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