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七百九話 声は……掛けられない
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ワードたちと別れてからソウスケたちは四十層のボス部屋を目指し、普段通り降りていき……丁度夕食ぐらいの時間に部屋の前に到着した。
道中ではCランクのモンスターとしか遭遇せず、ザハークとしては少々物足りない道中だった。
「ふふ、ザハーク。夕食の前に少し俺と模擬戦するか?」
「良いのか?」
「あぁ、少し汗を流しても良いだろ。という訳でミレアナ、夕食の準備を任せても良いか」
「えぇ、勿論です。栄養満点の夕食を用意しておきます」
「楽しみにしている」
ソウスケは亜空間の中からマグマサーペントやフレイムリザードの肉や、地上で買っておいた野菜や果物を適当に渡し、ボス部屋前のセーフティーポイントから少し離れた場所に移動。
「今、あいつら模擬戦するとか言ってたよな」
「そ、そうだな……え、マジ? なんで?」
「てか……今従魔のオーガ? 普通に人の言葉喋ってたよな……あっ! そういえば……」
三つもダンジョンがある学術都市には学術都市を拠点としているクランの冒険者以外にも、他の街から腕試しでやって来る冒険者達も当然いる。
そしてそんな冒険者達にも少年だけどバチバチに戦える人族と、同じエルフでも別格の美貌とスタイルを持つクールなエルフのお姉さん。
最後に鬼人族の様に見えなくもないが、実際はオーガで何故か人の言葉を喋る個体……の三人組がいる。
そんな話が彼らの耳にも入っており、何人かはそんな人族の少年と鬼人族に見えるオーガの模擬戦を観戦しに向かった。
「な、なぁ。声かけてみるか」
「止めとけって。地上で上から目線で絡んだバカがぶっ飛ばされた話しらないのか」
「えっ……いや、ここに来れる冒険者なら当然っちゃ当然か……うん、止めとこう。ボス戦前に怪我を負うとか馬鹿過ぎるしな」
「それが賢明だ」
夕食の調理を行うミレアナに声を掛けようとした男がいたが、もう一人の男性冒険者によって殴られる……もしくは極寒の目を向けられ、余計なダメージを負わずに済んだ。
「……ソウスケさん、あれは良いのか?」
「ん? 別に良いんじゃないか。邪魔しようって感じじゃないし、別に模擬戦を観られたところでって話だろ」
「それもそうか」
「んじゃ、使うのは素手だけな」
「分かった」
呼吸を整えた二人がゆったりと構え……まずはソウスケから動いた。
ジャブをフェイントに使い、右ストレートをぶち込む。
しかしザハークはそれを見切り、左手で右ストレートを受け止めた。
少し押し込まれたが大きなダメージはなく、そのまま右足で下段蹴りを放つ。
それをソウスケは軽くジャンプして回避したが……その隙を狙ってザハークの正拳が飛んでくる。
だが、そうなるであろうことを読んでいたソウスケは両腕をクロスしてガード。
それでもザハークの正拳は空中ということもあり、ソウスケを後方へと吹き飛ばした。
「ちょっと痺れたな」
そう呟きながらも表情は変わらず、接近してきたザハークの手刀を躱し、回し蹴りを横腹に叩きこむ。
そんな感じで二人は周囲からモンスターが寄ってくるかもしれないが……そんな可能性を無視してスキルや魔力、ロングソードや槍などの武器を使わずに戦い続けた。
「おいおい……嘘だろ。ちょっと強過ぎないか?」
「あっちのオーガは当然として、あの少年……こんなに強かったのか?」
ソウスケがザハークとミレアナの力を使ってここまで降りてきた寄生虫……とは思っていない。
それなりに戦闘で役立つ何かを持っているんだろうと思っていた。
しかし、素手での戦いで仲間のオーガを相手にここまで戦えるとは、誰一人として予想していなかった。
「少年の方もスキルとかマジックアイテム……魔力も使ってねぇよな」
「……基礎が身に付いているな」
観戦者の中にはナックルなどを身に着けて戦う者もおり、ソウスケの技量に感心していた。
そして約ニ十分後……二人の模擬戦が終わるまで、観戦者たちは時を忘れて二人の模擬戦に見入っていた。
道中ではCランクのモンスターとしか遭遇せず、ザハークとしては少々物足りない道中だった。
「ふふ、ザハーク。夕食の前に少し俺と模擬戦するか?」
「良いのか?」
「あぁ、少し汗を流しても良いだろ。という訳でミレアナ、夕食の準備を任せても良いか」
「えぇ、勿論です。栄養満点の夕食を用意しておきます」
「楽しみにしている」
ソウスケは亜空間の中からマグマサーペントやフレイムリザードの肉や、地上で買っておいた野菜や果物を適当に渡し、ボス部屋前のセーフティーポイントから少し離れた場所に移動。
「今、あいつら模擬戦するとか言ってたよな」
「そ、そうだな……え、マジ? なんで?」
「てか……今従魔のオーガ? 普通に人の言葉喋ってたよな……あっ! そういえば……」
三つもダンジョンがある学術都市には学術都市を拠点としているクランの冒険者以外にも、他の街から腕試しでやって来る冒険者達も当然いる。
そしてそんな冒険者達にも少年だけどバチバチに戦える人族と、同じエルフでも別格の美貌とスタイルを持つクールなエルフのお姉さん。
最後に鬼人族の様に見えなくもないが、実際はオーガで何故か人の言葉を喋る個体……の三人組がいる。
そんな話が彼らの耳にも入っており、何人かはそんな人族の少年と鬼人族に見えるオーガの模擬戦を観戦しに向かった。
「な、なぁ。声かけてみるか」
「止めとけって。地上で上から目線で絡んだバカがぶっ飛ばされた話しらないのか」
「えっ……いや、ここに来れる冒険者なら当然っちゃ当然か……うん、止めとこう。ボス戦前に怪我を負うとか馬鹿過ぎるしな」
「それが賢明だ」
夕食の調理を行うミレアナに声を掛けようとした男がいたが、もう一人の男性冒険者によって殴られる……もしくは極寒の目を向けられ、余計なダメージを負わずに済んだ。
「……ソウスケさん、あれは良いのか?」
「ん? 別に良いんじゃないか。邪魔しようって感じじゃないし、別に模擬戦を観られたところでって話だろ」
「それもそうか」
「んじゃ、使うのは素手だけな」
「分かった」
呼吸を整えた二人がゆったりと構え……まずはソウスケから動いた。
ジャブをフェイントに使い、右ストレートをぶち込む。
しかしザハークはそれを見切り、左手で右ストレートを受け止めた。
少し押し込まれたが大きなダメージはなく、そのまま右足で下段蹴りを放つ。
それをソウスケは軽くジャンプして回避したが……その隙を狙ってザハークの正拳が飛んでくる。
だが、そうなるであろうことを読んでいたソウスケは両腕をクロスしてガード。
それでもザハークの正拳は空中ということもあり、ソウスケを後方へと吹き飛ばした。
「ちょっと痺れたな」
そう呟きながらも表情は変わらず、接近してきたザハークの手刀を躱し、回し蹴りを横腹に叩きこむ。
そんな感じで二人は周囲からモンスターが寄ってくるかもしれないが……そんな可能性を無視してスキルや魔力、ロングソードや槍などの武器を使わずに戦い続けた。
「おいおい……嘘だろ。ちょっと強過ぎないか?」
「あっちのオーガは当然として、あの少年……こんなに強かったのか?」
ソウスケがザハークとミレアナの力を使ってここまで降りてきた寄生虫……とは思っていない。
それなりに戦闘で役立つ何かを持っているんだろうと思っていた。
しかし、素手での戦いで仲間のオーガを相手にここまで戦えるとは、誰一人として予想していなかった。
「少年の方もスキルとかマジックアイテム……魔力も使ってねぇよな」
「……基礎が身に付いているな」
観戦者の中にはナックルなどを身に着けて戦う者もおり、ソウスケの技量に感心していた。
そして約ニ十分後……二人の模擬戦が終わるまで、観戦者たちは時を忘れて二人の模擬戦に見入っていた。
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