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五百六十六話 爆速的には上がらない

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「ドラゴンか……ワイバーンとかじゃなくて、マジのドラゴンだろ」

「そうだな。ワイバーンは少し前に倒したことがあるけど……マジの本気って感じじゃなかった気がする」

「ワイバーン相手のマジの本気じゃなくて勝てる……そこがまず凄いよな」

「その時は武器に助けられてた部分が大きかった」

蛇腹剣の応用性は高く、奥の手を使用すれば一撃の威力は半端なく高い。
ワイバーン戦を迎えるまでは強敵と思える強敵と戦っていなかったので、あのボス戦がソウスケにとって最初に向かえた壁。

「謙遜するなって。確かにソウスケ君が使ってる武器は強力だが、それだけじゃない。単純な身体能力の高さは技術力、柔軟な発想。それらがお前の基礎的な力だろ。あの時使ってた……蛇腹剣、だったか? あれを使わなくてもある程度のモンスターとは真正面から戦えるだろ」

「……まぁ、一応な」

剣だけではなく、体術と魔法も並ではない。
寧ろ肉弾戦は若干楽しんで戦っている。

「だろ、だからもっと自分の実力を誇るべきだ。てか、ランクも一気に上げてしまえよ。ソウスケ君たちなら、一気にBランク……いや、Aランクに上がれるだろ」

「……私はソウスケさんが望むなら、上げるべきだと思います。その……私たちの組み合わせを第三者からみれば、やはり必然的に視線が集まります」

「ま、まぁ確かにそれはそうだな……うん、そうだな」

一人は装備を身に着けていれば冒険者に思えるが、装備を外せばどこにでもいるギリギリ成人してるかも? と思えるような男。

もう一人はハイエルフという非常に珍しい種族の超絶美人であり、街を歩けば男の視線を意図せずに引き寄せる。

最後の一人は鬼人族に見えるが、立派な希少種のオーガ。そのいかつい見た目でソウスケやミレアナに絡もうとする馬鹿を人睨みで追い返す眼力を持つ。

第三者から見れば、どう考えても異色のパーティーに思えるだろう。

(一気にランクを上げる、か……そうだな。レグルスとレーラがいるんだし、もうそこら辺は気にしなくて良いか。まだそこまで後ろ盾がある状態とは言えないけど、俺にちょっかい出そうとした奴らが死ねば、警戒して下手に俺たちに手を出そうとする馬鹿は減るだろ)

ソウスケが契約した悪魔、レグルスとレーラ。
二人ならば情報収集や屋敷に侵入して権力者を殺すことも簡単に実行出来てしまう。

「そうだな……あんまり爆速的に上がるのはあれだけど、ギルドの方から昇格試験を受けないかって言われたら、受けてみようかな」

「おっ、やっぱりそうだよな。冒険者はランクを上げてなんぼだ!!! ソウスケ君なら一年以内には……いや、それはちょっと難しいか? でも実力的には既にAランク級だしな」

「ん? やっぱあれか……色々と駆け上がるには問題があるんだな」

「俺もあんまり詳しい話は知らないけど、色々と条件をすっ飛ばしてランクアップするのは難しいって聞いたことがある。ソウスケ君たちの実力ならそういう条件をすっ飛ばしても良いと思うんだけどな」

実力だけでいえば、ソウスケたちの実力は既にAランクの中でもトップクラス。
そこに武器の性能が加われば、数少ないSクラスに入る。

「……ソウスケさんなら、一年以内に必要な実績を達成出来ますよ」

「はっはっは!!! それもそうだな。ここのダンジョンだけじゃなくて、他のダンジョンも攻略してるみたいだし……上がるのも時間の問題って感じか」

「そこまで一気に上がるつもりはないけどな。それに、ランクが上がれば貴族から厄介な依頼を受けるかもしれないだろ」

「そういう依頼を受けるのも、冒険者の醍醐味だろ」

「いや、そうかもしれないけど……俺はなるべく自由に生きたいからさ」

何にも縛られず、自由に生きたい。
そこだけはソウスケの中で譲れない大きな感情。

「自由に生きる、か……それは確かに冒険者にとって重要なところだな」

「だろ。ランクを上げるにしても、そこは保証してほしいところだ……まっ、今はランクを上げるよりも鍛冶作業に集中するけどな」

明日の授業が終われば、臨時教師としての仕事も終わる。
翌日からは鍛冶ギルドで鍛冶場を借り、ザハークと一緒に黙々と武器作りを行う。

それを考えると、不思議とランクアップに関してモヤモヤとした気持ちが晴れてきた。
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