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四百七十四話 頭に残っていた

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「これからもっと激しくなりそうだな」

アシュラコングの戦闘のスイッチが入っていなかった訳では無い。
ただ、それでもザハークの前蹴りによって闘争心が燃え上がった。

「ウホォォォォォォオオオーーーーーーーッ!!!!」

「あれは、ドラミング……ドラミングってもしかして!!」

ソウスケは即座に鑑定をアシュラコングに使用。
そしてスキル欄にドラミングが載っている事を確認する。

「……ゴリラ系のモンスター特有の動きですね」

「ドラミングだ。ドラミングというスキルを有していなくても、そういった動きを元々持っている……いや、それとも生まれた時から既に持っているのかもな」

ドラミング、スキルとして発動することで自身のスタミナの消費速度を上げて身体能力を向上させる。他にも相手を威嚇する効果もあるが……ザハークには無意味。それどころか、余計に戦意を高める結果になった。

そして一番大きいな効果として、拳により攻撃の威力の増加。

(腕が六本あるアシュラコングにとってはこれ以上ない武装効果だな。流石にザハークもあの一撃を食らったら大ダメージは確実だ)

そして再び壮絶な肉弾戦が始まる。
ザハークはもう脚を惜しむことなく使い、アシュラコングの六つの拳に対応している。

だが、やはり拮抗した状況が続いている。

「はぁーーー……他にやりようがあるくせに、本当に真っ向からの肉弾戦が好きなんだな」

「えっと、それはどういうことですか?」

「そのままの意味だよ。ザハークは肉弾戦だけじゃなくて武器を使って戦う事も出来る。武器は……大剣が一番使い慣れているかな。あいつの力を考えれば二刀流で戦う事も出来る」

それはそれで凄い事なのだが、ザハークの本当に凄いところはそこでは無い。

「それと、あいつは魔法が使えるんだよ」

「そ、それは・・・・・・もしかしてメイジに目覚めているのですか???」

「いや、そんな事は無いだろうな。そっちの方向に才能があったとしても、今はまだオーガの希少種ってだけだ。というか……メイジがあんな肉弾戦をしていたらおかしくないか」

「……そ、それもそうですね」

確かにオーガにメイジやウィザードが存在する。
だが、メイジやウィザードは今ザハークが行っている程の肉弾戦を行うことは出来ない。

「希少種というのは……それだけ普通の個体とは異なる才能を持っている、という事です。その気になればザハークは無詠唱で魔法を発動することが出来る」

「む、無詠唱で!?」

ソウスケの言葉にリアスだけではなく、セリスとカレアもあり得ないといった表情になるが……これは紛れもない事実であり、ザハークの才と努力の積み重ねによる結果だ。

「そうだ、三人からすればあり得ないと思うだろうけど……現にあいつはそれを行える。ダンジョン内で起こるモンスターパーティーですら、階層にもよるけど浅い階層なら一人で対処出来るだろう。水魔法に関しては特に腕が立つ」

その理由はソウスケ自身も解っていないが、それはソウスケが持つ水龍の蒼剣が影響している。
だが、ソウスケがそれを知るのはもっと後になってから……。

「だから、もっと戦い方には幅があるんだけど……根っからのインファイターなのか、それともああいう戦いが大好きなのか……ミレアナはどう思う?」

「両方かと思われます」

「だよなぁ~~~~……でも、そんな戦い方をしていても、勝ってしまうんだろうなって期待を持たせてくれる」

なんてソウスケが考えていると、ザハークは急にその場から大きく飛びのいた。
そして自身の周囲に無数のウォーターボールを生み出し、隙間をつくって連撃を行う。

「……急にどうしたのでしょうか」

「俺にも良く解ら……三人共、もしかしたらザハークはリアス達の為に戦い方を変えたのかもしれない」

「そ、そうなのですか!!! セリス、カレア!!」

「「はい!!」」

リアスが二人と自分に気合を入れなおし、再びメモを取り始める。

(インク式の筆って本当に面倒だろうなぁ……そこら辺のマジックアイテムも考えておくか? それにしても、ザハークは今回の依頼内容をちゃんと覚えていたんだな)

基本的には護衛だけで良いのだが、深く考えればアシュラコングの接近戦以外での対処方法も知っておきたいのがリアス達の本音だった。
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