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四百三十一話 解る人には解かる

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「よし、これで全員集まったな」

集合時間には今回の偵察隊メンバーが全員集まり、誰一人遅刻することは無かった。
そして目的地までは……馬車では無く徒歩で向かう。

ゴブリンが発見された場所を考えれば行きの途中までは馬車で向かっても良い距離なのだが、ギルドからは徒歩で向かうように指示が出ている。

(別に俺としては良いんだけど、他の奴らは疲れないのか?)

今回一緒に行動するメンバーの中には安物だが鎧の一部を身に付けている者や、野営の為のテントやその他の道具を背負っている者もおり、ソウスケはなかなか辛そうに見えた。

「ソウスケ君は中々余裕そうですね」

「まぁ……そんな荷物は持ってないですからね」

切り札である蛇腹剣は指輪の形になっており、現在のお気に入りであるコボルトキングの素材を使ったグラディウスを携帯し、その他には直ぐにポーションを取り出すためのホルスター。

後は短剣が詰められたポーチなどを持っているだけで実に身軽な装備だ。

シャリアは少しだけソウスケの防御面が心配になる。

「ソウスケ君はあまり防御は気にしないタイプなんですか? あまり防御系の装備はしていませんが」

「そうですね。俺は基本的に攻撃は躱してしまうのが最善だと思ってるんで」

「それは戦うスタイルにもよりますが、一理ありますね。ただ……もしかして他の道具は仕舞ってるんですか?」

最後の方は小声になり、周囲にはあまり聞こえない様な声量でソウスケ達が身軽な理由について尋ねた。
仕舞っている。身軽なソウスケ達に対してそれは収納袋を持っているのかという問い。

それを直ぐに理解したソウスケは小さく頷く。

「少し前にちょっと用事があってそこそこ大きいダンジョンに行ったんですよ。そこで偶々運良くって感じですね」

「おぉ~~~~~!!! それはそれは羨ましいですね!!」

シャリア達も収納袋は一つ持っているが、それは盗賊団を他のパーティーと倒した時に偶々手に入れた物だった。
それはそれでラッキーな出来事なのだが、まだダンジョンに入ったことが無いシャリアとしてはソウスケの話は夢があるものだった。

「やっぱりダンジョンは夢がたくさんありますか?」

「そうですねぇ……確かに夢はたくさんあると思いますよ。ただ、ハズレもちょいちょいありましたけど」

ソウスケ達が手に入れた宝箱の中身は全てがお宝だったという訳では無く、その階層に見合わない武器や道具も入っていた。
なのでダンジョンには夢だけが詰まっているという訳では無い。

「後……まぁ、街の外もダンジョンの中も同じような感じで、同業者には気を付けた方が良いって感じですかね」

「……そうですか。それはまだダンジョンを経験していない私達にとって有難い情報です。ありがとうございます」

「いえいえ、これぐらい当たり前の情報ですから」

周囲で他のメンバー達と話しているEランクの冒険者達は未だにソウスケの事を良く思っていないが、それでもまだ自分達も体験したことが無いダンジョンの話には興味津々であり、聞き耳を立てていた。

だが、耳に入った情報に対して背筋が震えた。

確かに同業者にそう簡単には心を許してはならない。
先輩冒険者達からそう教えられたが、それでもその言葉を完全に解っていなかった。

それでもソウスケの言葉を聞いたシャリアの表情が真剣なものだったこともあり、同業者には注意しなければならない。
そういった感情がアーガス達に生まれた。

しかしだからといって直ぐに周りにいる同期やレアレス達を疑うようなことは無く、また直ぐに二人の会話に耳を澄ませる。
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