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三百九十九話 読めない雰囲気

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「……ちなみになんですけど、ミレアナに勧誘してきた冒険者ってどれぐらい強いんですか?」

「Cランクの中でも上位に入る実力はあるかと。パーティーのバランスも取れています」

「中々優秀なパーティーって事ですね」

バランスが取れている、それだけで冒険者のパーティーとして優秀な部類に入る。
出会う敵によって、パーティー内の攻撃手段が一つに固まってしまっていたら、一気に最悪な状況へと追い込まれる。

「でも、Cランクなら……結構問題無いと思いますよ」

「えっと、確かにミレアナさんも従魔のオーガもランク通りの実力では無いと思いますが、油断出来ない面子かと」

「ミレアナは、元々強くて技術も飛び抜けています。それにエルフのイメージ通り弓と魔法が得意ですが、それだけしか出来ない訳じゃ無い。それに……ザハークは解ていると通り、普通じゃ無い」

そもそもな話、モンスターが人の言葉を話している時点で普通では無く異常だ。

「ザハークは俺と会話出来る。それなら、俺がザハークに一般的なモンスターが覚えない様な技術を教える事が出来るんですよ。あいつは、ただ暴れて破壊する事しか能が無い普通のオーガでは無いんですよ」

ソウスケの言葉にギルド職員は息をのむ。
いつもその実力を見ているであろうソウスケの言葉に確かな重みがあった。

それどころか、ソウスケから発せられる雰囲気が少し変わったことに職員は気付く。

(さっきまでと、雰囲気が……違う。さっきまではランク相応な雰囲気だったが、今は……読めない)

元は冒険者であった職員はある程度なら対象の実力が解る。
ミレアナとザハークが強い事も知っていた。だがそれでも完璧に連携が取れるCランクの四人には敵わないのではと思った。

そして目の前のソウスケ、一気に得体のしれない存在へと変わる。

「おっ、なんか大きな歓声が聞こえましたね」

ギルドに到着し、二人は直ぐに模擬戦等に使われる訓練場へと向かった。
すると何かを多くの冒険者が囲んでおり、中心で何が起こっているのかが分からない。

「ちょっとしたお祭り騒ぎだな」

その場でジャンプして何がどうなってるのかを確認する。

すると、円の中には平然とした表情で立っているミレアナとザハーク。そしてまともに動けそうにない四人の冒険者が倒れていた。

(まっ、そうなるよな)

Cランクの中でも上位に入る実力。それは確かに冒険者全体は見ればそこそこ高い実力を持っていることになる。
しかしそれでもソウスケが今まで倒してきた強敵を倒せるかといえば、答えは否。

ソウスケが初めて強敵だと認識したモンスターであるダンジョンのラスボスであったワイバーンを倒すことが出来ない。

「すみません、ちょっと通して貰って良いですか」

「あん? おっ……確かにお前さんは向こうに行った方が良さそうだな。おいお前ら、この小さな大将を通してやれ!!」

後ろの方で観戦していた男の声が聞こえた冒険者達は一斉にその方向に目を向け、面白そうな物を見る目をしながら道を開けた。

「ありがとうございます」

一言礼を言い、ソウスケはミレアナ達の元へ歩く。

「よう、なんか随分派手にやったな」

「申し訳ありません。そいつらが随分と嘗めた事を言うものでしたので」

(は、ははは。完全にキレてるな。言葉遣いがいつもよりちょっと荒い)

言葉としては些細な変化。しかし雰囲気はいつもと全く違い、まるでミレアナのを中心に台風でも起こりそうなほど静かな怒りが溜め込まれていた。

「俺も同意見だ。こいつらは自分のクランが大きいからと、自分達の実力を過大評価していた。実際は大したことないのにな。ただ口だけは一丁前だった」

(なるほどなるほど、ミレアナと似たよう感じでその一丁前の口に怒ってるんだな)

ザハークとミレアナ、この二人を怒らせての模擬戦。
ソウスケからすれば自殺志願と何も変わらなかった。
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