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三百十七話 誘う匂い

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ザハークを加えての夕食は特に面倒事が起こる事も無く、三人とも談笑しながら終える事が出来た。
ここ数日で宿に泊まっている者達は外見が一般的に美人と呼べる者と比べて頭一つか二つ抜けているミレアナに声を掛けたところで、相手にされないという事は解っている。

しかし新しく宿に泊まりに来た者はこの街に見た目はまだ成人したての者と、抜群のスタイルと美貌を持つエルフに見た目が鬼人族に近いオーガの従魔が一緒に行動しているという話は聞いた事があっても、目の前のソウスケとミレアナがその内の二人だとは直ぐに判断できない。

その為、ザハークが店の中にやって来るまでミレアナに声を掛けようか迷っている者は少なからずいた。
勿論下心を持っている者達だ。

だが、声を掛ける間にザハークが席に座った事でミレアナに声を掛けようと思っていた者達はその迫力に気圧され、ナンパする事を諦めた。

ザハークの顔は分類的にはイケメンになるが、その中でも厳つい方になる。
なので長身と真っ赤な皮膚とその顔でチキンな男達の頭は直ぐに正常に戻った。

そして部屋に戻ったソウスケとミレアナはベッドの上でのんびりと寛いでいた。

「これからもう二回、最下層のボスに挑むんですよね」

「ああ。やっぱり通常種のパラデットスコーピオンの素材も欲しい、そのスキルや能力も奪っておきたい」

「ならもう一度パラデットスコーピオンの上位種と戦う事になれば、死体は蛇腹剣に吸収させますか?」

既にパラデットスコーピオンの上位種の素材や魔石は手に入れてる。
ただ、魔石に関しては真っ二つに綺麗に斬れてしまっているが。

「そう、だな・・・・・・もうワンセットあって損は無いと思うが、逆に蛇腹剣に喰わせるチャンスだってそうそう無い訳だからな。ただ、ダンジョンに潜るのは明後日からだ。今日と明日一日はゆっくりする。ミレアナもゆっくり休んでくれ」

「わかりました。ゆっくり休みますね」

そう答えたミレアナは自然な流れでソウスケの頭を自分の膝へ持っていく。
ソウスケは少し恥ずかしく感じながらも、その心地良さに瞼を閉じてしまう。
そして起きた時には珍しく十時を過ぎており、それから風呂に入って寝る事になった。

翌日、予定通りにソウスケとミレアナは別々に行動する。
ザハークに関しては一日じっとしているのは暇だろうと思ったソウスケと一緒に行動している。

「ザハークと二人ってのは珍しいな」

「そうだな。ところでソウスケさん、今日はどこかに行く予定はあるのか? ダンジョンには行かないのだろう」

「おう、今日は休息だ。ダンジョンには行かずのんびりと街を散策だ」

「そうか・・・・・・まぁ、それも一興か。む、美味そうな匂いがする」

「確かに。あの屋台からするな。よし、ちょっと寄り道だ」

朝食をとってあまり時間が経っていないというのに食欲を誘う匂いの元へ釣られるように二人は一つの屋台へと向かった。

そして少しの間順番を待ち、手に入れた肉サンドをソウスケは二つにザハークは五つほど食べる。

肉はフォレストオーガの上位種の肉が使われており、それだけでも美味い。
しかし肉に付いているタレが更に追い打ちをかける様に舌刺激する。
辛い者が苦手な者には少し辛く感じるかもしれないが二人には全く問題無く、あっという間に食べ終わってしまう。

「・・・・・・美味かった」

「ああ。確かに美味かった。肉も美味かったが、タレが更に肉の味を引き出していたというべきか」

「そんな感じだったな。って、あれはジーラスさんとバルスさん」

二人の存在に気が付いたソウスケは手を振って声を掛ける。
ソウスケが視界に入った二人も直ぐ近くにザハークがいるという事で直ぐにソウスケだと確信した。

「あの時ぶりですね。今は休息中ですか?」

「おう、体が鈍らない様に適度に動かしているけど、それでも無茶はしない程度にだ」

「今はのんびりと休息を楽しんでいるって最中だ。ところでお前らはあれから探索を続けたんだろ。どこまで行ったんだ?」

「そうですね・・・・・・ちょっと場所を変えませんか?」

「おう、勿論良いぜ」

二人は直ぐにソウスケ達が大勢の人がいる場所では話せない内容だと解り、自分達が知っているあまり客がいない店へと向かう。
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