あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

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次は、どうする

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「マスターたちの方はどうだった」

「強かったよ。本当に集中し続けてたから」

ヴァルの一撃によってマウンテンベアが自分たちの方向に飛来していたことには気づいていたティール。

普段のティールであれば、魔法を発動して止めようとする。
ただ、今回に関してはラストが追い付いてどうにかしてくれなければ、天猿が放つ攻撃魔法を対処し続けながら、なんとか脚で止めようと思っていた。

「動きながら魔法を発動するのには自身があったんだけどね…………多分、そこら辺の技術は少し上をいかれてるかな」

ティール一人では勝てない……という訳ではない。
天猿と一対一で戦うのであれば、それこそティールにとって本気を発揮出来る戦況。

ただ……天猿はティールが集中し続けなければならないほどの絨毯魔法を発動し続けながら、刀を振るうアキラの相手をしていた。

「そうか……マスターにそこまで言わせるとはな。やはり、世界は広いということだな」

「そうだな。私としても、それを強く感じた」

「? そうなんですか。正直、今回の戦いでは途中からアキラさんが天猿を追い詰めてたと思うんですけど」

最終的に勝負を決めたのはティールが放った斬撃だったが、それでも共に戦っていたティールから見て、天猿を追い詰めていたのは間違いなくアキラだった。

「……途中からは、良い戦いが出来ていたかもしれない。ただ、それでも……そこに辿り着くまで、時間が掛かった」

天猿はとにかく身軽であった。

剣技の腕に関してはアキラの方が上ではあるものの、フットワークなどは天猿の方が一枚上手。
加えて、基本的に自分に向けて飛んでくる攻撃、アキラに向けて放たれる攻撃魔法をティールが落して落して落し続けていたが、それでも幾つかは対応出来ずにアキラの元へ向かってしまう。

無論、それらの攻撃を斬り裂けないアキラではないが、あれだけ動き回りながら、更に後衛のティールに魔法攻撃を行いながらも、自分に魔力の刃を振り下ろすだけじゃなく……攻撃魔法まで放つ天猿のスペックに心が圧倒されてしまった。

「一度戦ったのだから、二戦目は上手く戦えるだろうと問われれば……難しいだろうな」

「本当に強かったですからね。それに、今度は上手く引き離せるか解らないですもんね」

「うむ……色々と思うところはあるが、まずそこが大事な点だと感じた」

「それに関しては、俺も同感だな。組んだ方が強いのだろう……であれば、まずは分断するのが最優先だ」

強者と戦うことに強い喜びを感じるラストにしては、珍しく弱気な考え。

とはいえ、パーティーによって意見は分かれるが、ティールたちは二人以上で一体のモンスターと戦うことがあまり得意ではない。

アキラはこれまで多くのパーティーと臨時で組んでモンスターと戦った事があるため、それなりに他者の動きに合わせる力がある。
だが、それでも決して二人以上で戦うことに慣れている戦闘者たちからすれば、決して合わせるのが上手いとは言えない。

ラストは元々上手くないということもあり、本人もそれを自覚している。
だからこそ、下手にコンビネーションが試される状況で戦うのは愚策だと、天猿やマウンテンベアが相手にその土俵で戦うべきではない。

そんなラストたちの考えは……正しかった。

「それじゃあ……次は、どうする」

「マウンテンベアと天猿のタッグの話か」

「うん。確率で言えば、そっちと戦う方が高いからね」

久しぶりに、集中し続けなければならない状況を強いられた。
ある程度ラストとヴァルの戦況も把握していたが、細かくは解っていなかった。

そんな戦況を体験しても……ティールは再びマウンテンベアと天猿のタッグに挑むことに関して、恐れはなかった。

「……色々と試すとなれば、今度のボス戦で俺が天猿の強さを感じる必要があるな」

「それじゃあ、その方向でいこうか」

再度、マウンテンベアと天猿というボスモンスターに挑む。

そんな話を聞いて……鼻で笑い、ティールたちにバカ絡みしようとする者は……この酒場には一人もいなかった。
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