上 下
675 / 702

最短で最良

しおりを挟む
「ぬぅううあああああッ!!!!!」

「ゴバっ!!!???」

ラストはややボロボロになりながらも、アドバースコングの懐に入り、渾身の一撃を心臓部に叩きこんだ。

「っ!!?? っ、ァ…………」

ラストが放った拳は見事にアドバースコングの胸部にめり込んでおり、心臓を破壊した。

「はぁ、はぁ……ふぅーーーーーーーー」

「お疲れさん、ラスト。結構ボロボロになったな」

「ふっ、そうだな。強かった……そして、我ながらバカな戦い方をしたとは思うが、後悔はない」

「だろうな。でも、ちゃんとポーションは飲んでくれよ」

青痣だけではなく、骨に日々が入っていた。
一か所だけではなく複数個所にヒビが入っており、ラストはここ最近の戦いで一番ダメージを負っていた。

しかし、打撃戦が得意なアドバースコングに打撃戦で勝負を挑めば、そうなるだろうと容易に予想出来る。
寧ろ、アドバースコングの攻撃力を考えれば、ヒビどころか完全に折られて戦線離脱もやむを得ないという状態になってもおかしくなかった。

「あぁ………………ふぅーーー……相変わらずポーションは不味いな。ところで……そいつは、いつぞやのヴァルガング……だよな?」

薄々、なんとなくではあるが、アドバースコングとの戦闘中に気付いていた。

「そうだ。ヴァルって名前にした」

「呼びやすくて良いな。ただ……どうして今呼んだんだ?」

「ほら、まだ人の手が付いてないダンジョンを見つけてダンジョンコアを探すなら、戦力というか、数が足りないかもしれないみたいな話をしただろ」

「……したかもしれないな。それで、いざ実際に共に行動する前に、ダンジョンで共に探索して、感覚を養うということか」

「そういう事」

Bランクモンスターであるヴァルガングと共に行動するということは、それだけ戦闘の機会が減ってしまう。

だが、ラストは子供ではない。
事前に共に行動する、もしくは共に戦う経験があった方が、目的地を探索する際にスムーズにいく。
それぐらいは解るため、文句はなかった。

「そうか……よろしく頼む、ヴァル」

「ワゥ」

ヴァルはラストとも盟約を結んでおり、元から仲良く行動するつもりであった。

「ヴァルは、既にアキラには慣れてるのか?」

「みたいだな。アキラさんが強いからかな」

「その可能性が高そうだな」

強さこそが判断基準。
その点に関して、ラストは特に疑問に思うことはなく、薄情だと思うこともなかった。

「んじゃ、見張りよろしくな」

血抜きを行い、ササっとアドバースコングの死体を解体していく。

「っ……ワゥ」

「いるのか」

「ワゥ」

ラストの問いに応え、ヴァルは当然の様に前に出た。
そして……木影からフォレストウルフの姿が現れると同時に、ヴァルも地面を蹴った。

「瞬殺、といったところか」

「そうだな。優れた脚力と見事な急所への攻撃だった」

アドバースコングの血の匂いに釣られて現れたフォレストウルフの数は三体。

フォレストウルフはCランクのモンスターであり、決して弱くはない。
寧ろダンジョンの下層に生息しているモンスターということもあり、地上に生息している大半のフォレストウルフよりも高い戦闘力を有している。

だが、ヴァルが三体を仕留めるまでに、十秒も掛からなかった。
最初の一体は喉を噛み千切り、二体目は爪撃を躱し、カウンターの爪撃を叩き込んだ。
そして最後の一体の咬み付き回避し、空中で思いっきり踏みつけ……そのまま頭部を粉砕した。

どれも首、頭部といった急所を狙った最短んして最良の一撃を叩き込み、戦いを終わらせた。

「ワゥ!!」

「ん? ……あぁ、良いんじゃないか」

ヴァルの仕留めた一体をそのまま食らいたいという要望に、ラストは食って良いぞと許可を出した。

仕留めたのはヴァル自身であり、フォレストウルフの素材は波状試練の下層を探索していれば、いくらでも出会う。
そのため、ラストはティールに確認を取らずに食べても構わないと返した。


「生で食ったのか? 腹が減ってたなら、ちゃんと調理してやったのに」

当然、ティールがその件でラストに怒鳴ることはなかった。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

村人からの貴族様!

森村壱之輔
ファンタジー
リヒャルトは、ノブルマート世界の創造神にして唯一神でもあるマリルーシャ様の加護を受けている稀有な人間である。固有スキルは【鑑定】【アイテムボックス】【多言語理解・翻訳】の三つ。他にも【火・風・土・無・闇・神聖・雷魔法】が使える上に、それぞれLvが3で、【錬金術】も使えるが、Lvは2だ。武術も剣術、双短剣術、投擲術、弓術、罠術、格闘術ともにLv:5にまで達していた。毎日山に入って、山菜採りや小動物を狩ったりしているので、いつの間にか、こうなっていたのだ。

私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵
ファンタジー
スキルが全ての世界。 十歳になると、成人の儀を受けて、神から『スキル』を授かる。 スキルによって、今後の人生が決まる。 当然、素晴らしい『当たりスキル』もあれば『外れスキル』と呼ばれるものもある。 聞いた事の無いスキル『クエスト』を授かったリゼは、親からも見捨てられて一人で生きていく事に……。 少し人間不信気味の女の子が、スキルに振り回されながら生きて行く物語。 一話辺りは約三千文字前後にしております。 更新は、毎週日曜日の十六時予定です。 『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しております。

処理中です...