あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

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衝撃

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「ふむ。ヒツギが君に敬意を持っている、か…………僕としても、二人と同じであり得なくはないと思うよ」

「っ……そうなんですね。でも、俺としては、そうなる理由が解らなくて、今結構もやもやしてます」

ティールが自分に頼り、相談してくれている。

おそらく珍しい事だろうと思い、ジェンはティールのもやもやを解消する為に、頭をフル回転させる。

「………………まず、ヒツギにとって、ティール君という存在は、大きな大きな衝撃だった」

「俺の事を調べてから、という事ですか?」

「そうなるね。いや……そうしなければ、気付けなかった。それもまた、一つの大きな衝撃と言えるだろう」

調べなければ気付けなかった。
それは……冒険者として、強者の匂いを嗅ぎ分ける嗅覚が足りないことを意味する。
視る眼が足りない、精度が低い……地上で、街中であったからこそまだ良かったものの、モンスターを相手に間違えれば、待っているのは基本的に死である。

確かに、ティールは見た目で強さを示せるタイプではない。

それでも、ヒツギより戦闘力が劣る者であっても、その不気味さに気付く者はいる。

「本当は強い。なのに、その本当の部分に気付けなかった。冒険者としては、これは致命的だ」

「ですね」

「ティール君がその時素なのか、それとも擬態してたのかは解らないけど、気付けなかったヒツギが悪いからね。そして、ティール君が己の身を犠牲にしながらも、強敵に立ち向かい、打倒してた。やっぱり、そこが大きな衝撃だと僕は思う」

(……現金な奴、と思うのは多分違うんだろうな)

実は強い、実は同業者を退かせ、自分の身一つで強敵に挑んだ。
それを知ったからこそ、態度を……見方を変える。

ティールは、随分と手のひら返しが早いなと思ったが、ジェンの話しぶりからして、ヒツギはそれに当て嵌まらない様に感じた。

「自分の身を犠牲にする。正義感のある人であっても、それは簡単に行えるわけじゃない。どれだけ最低限……目の前の強敵を相手に、一矢報いれる実力がなければ、その勇気は霧散してしまう」

「強敵に背を向けて、逃げてしまうってことですか?」

「多分ね。どれだけ正義感があったとしても、本能が勝ってしまう。逃げろ、お前じゃ勝てない、逃げて生きるんだと……よっぽど自分の命に興味がない人じゃない限り、そんな選択は取れないよ」

ブラッディ―タイガーと対峙した際、ティールには同世代よりも圧倒的に上の身体能力に多数のスキル、ベテラン冒険者たちに品質の武器を有していた。

ジェンの言う、勝機があるパターンに当てはまる。
だが……世の中、自分の正義感に酔っているのか、本当に頭のネジが十本ほど外れてるのか、どう考えても無駄死にすると解っていながら挑むバカがいる。

「…………天然なのか、洗脳なのか、それとも酔ってるかの三種でしょうか」

「ふふ、あっはっは!!!! やっぱりティール君は賢いね。そうだね、その三種類の人は、そういう行動が自然に取れるだろうね……っと、話しが逸れちゃったね。とりあえずある程度の勝機を持っていたとしても、死ぬ可能性が十分にある戦いに挑み、ティール君は見事勝利を掴み取った。まさに、英雄に相応しい勝利だ」

「英雄って……大袈裟ですよ」

「……ティール君はあまり気にしてないかもしれないけど、そういうところも、知れば知るほどヒツギの中で君の評価が上がってる点だと思うよ」

なんで、という言葉は出てこなかった。
何故なら、それはティールがこれまで何度も仲間や、知り合った人たちから伝えられた内容だったから。

「俺が謙虚だから、ですか」

「その通り。僕もそこそこティール君の情報を仕入れたけど、君……本当に偉ぶった話が出てこないんだ。今だって、英雄って呼ばれることに戸惑いと遠慮を感じた」

その通りだった。
実際のところ、ティールとしても悪い気はしない。
悪い気はしないのだが、ただ……それよりも恥ずかしいという気持ちが上回ってしまう。

「ヒツギは英雄や勇者に憧れる心はまだまだ少年!! って感じの奴じゃないけど、そういう人に対してやっぱり憧れや敬意といった感情を持ってる。だから、ラストさんやアキラさんの考えは合ってると僕は思うよ」

「…………」

決して、ティールは決して説教された訳ではない。
ただ……なんとなく、自分の感覚の方が変だったのかと思い知らされ、少しテンションが落ち込む。

そんな中でも、料理を食べる手だけは止まらなかった。
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