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友達は……いない?
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「そういえば、一応訊こうと思ってたんだけど、ティール君たちは今後どうするつもりなんだい」
「今後ですか……とりあえず波状試練を最下層まで攻略して、その後は特に考えてませんけど、面白そうな場所に向かおうと思ってます」
「面白そうな場所、か。良いね、実に冒険者らしい予定だ」
ヒツギの先輩であるジェンだけではなく、紫獅の誓いのトップも……ティールが冒険者ギルド以外の組織に属する気がないという事は把握していた。
加えて、自分のところのメンバーが嫌われているということもあり、絶対に無理だと解ってはいるが、ジェンに一応勧誘してくれと頼んでいた。
(いや~、マスター……これはどう考えても無理ですよ~~)
心の中でクランのトップに謝るジェン。
「やっぱり、面白そうな場所というと、別のダンジョンかい?」
「……他のダンジョンも気になりますけど、この国にしかない面白そうなところとかあれば……まぁ、なければ国外に行っても良いかなって思ってます」
ティールは、アキラがこの国に……大陸にいられるリミットを知っている。
だからこそ、自身が生まれた国以外の場所に向かってでも、アキラに冒険者としての生活を楽しんでもらえればと考えていた。
「国外にも、か…………だとすれば、獣人族やエルフたちが治める国に行ってみるのもありかもしれないね」
「他種族が治める国、ですか……確かに、それは面白そうですね」
「獣人が治める国なんかは、君たちは強いから活動しやすいと思うよ」
獣人が治める国は実力主義なところがあるため、ジェンの言う通りティールたちほどの実力を持っていれば、他種族ではあるが活動しやすい国ではある。
(国外、か……ありだな。でも、そうなると中々帰ってこれなくなりそうだから、また一度実家に帰ろうかな)
いざとなれば長時間、高速で移動し続ける手段はあるが、国を跨げば戻ってくるのに時間が掛かるのは間違いなかった。
「獣人の国、か……元気な奴が多くいそうで、楽しそうなイメージがあるな」
ラストの中で、獣人族と言えば以前共にBランク昇格試験を受けた獅子人族の青年、バゼスの印象が強く残っている。
ちょっとバカで人に迷惑を掛けるところはあるが、ラストからすれば憎めないバカという印象があり、バゼスが持つ戦闘力もBランク昇格試験を受けるのに相応しいものがあると認めていた。
「あっ、でも……ん~~~~~」
「どうかしましたか?」
「……ティール君って、意外と貴族の友達が多いでしょ」
「貴族の友達、ですか? ………………友達は、そこまで多くないというか、思い浮かぶ限り、一人しかいませんが」
記憶を必死で掘り起こすが、友達と言える人物はいなかった。
関係としては師弟の様なものではあるが、ヴァルター・フローグラが個人的に友人と言えなくもない? と思ったティール。
「そうだったのかい? まぁ、知人はいるでしょ」
「そうですね。知人は多少います」
「これまでのティール君の行動を考慮すれば、まず大多数の貴族たちが、ティール君を引き込むことは無理だと思いはすると思うんだ。であれば、自然な流れでティール君はどこで冒険しようとも、どの国に向かおうとも冒険者ギルド以外の組織に属することはないと予想出来る」
「……これから先も、そのつもりでいますが」
「うん、まだほんの少ししか君と話してないけど、その言葉に嘘はないと解る。でもね、大人達は勝手に色々と考えて、色々と予想しちゃうんだ」
「つまり、マスターを他国に奪われるかもしれないことを危惧するようになる、という事か」
「その通りです、ラストさん」
苦笑いを浮かべながら正解だと伝えるジェン。
何故苦笑いを浮かべているかと言うと……ティールがあまりにも嫌そうな顔をしてるからである。
(はは、まぁこういった顔になるよね………………本当に、話通りまだ青年になってない少年とは思えない。ただ、彼はまだ子供……そして、一人の人間だ)
大きな力を持っているからこそ、悪い方向に感情を爆発させてはならない。
ジェンは貸し、恩を売ろうなどといった考えを抜きにし、クランのトップであるマスターに話すだけ話してみようと思った。
「今後ですか……とりあえず波状試練を最下層まで攻略して、その後は特に考えてませんけど、面白そうな場所に向かおうと思ってます」
「面白そうな場所、か。良いね、実に冒険者らしい予定だ」
ヒツギの先輩であるジェンだけではなく、紫獅の誓いのトップも……ティールが冒険者ギルド以外の組織に属する気がないという事は把握していた。
加えて、自分のところのメンバーが嫌われているということもあり、絶対に無理だと解ってはいるが、ジェンに一応勧誘してくれと頼んでいた。
(いや~、マスター……これはどう考えても無理ですよ~~)
心の中でクランのトップに謝るジェン。
「やっぱり、面白そうな場所というと、別のダンジョンかい?」
「……他のダンジョンも気になりますけど、この国にしかない面白そうなところとかあれば……まぁ、なければ国外に行っても良いかなって思ってます」
ティールは、アキラがこの国に……大陸にいられるリミットを知っている。
だからこそ、自身が生まれた国以外の場所に向かってでも、アキラに冒険者としての生活を楽しんでもらえればと考えていた。
「国外にも、か…………だとすれば、獣人族やエルフたちが治める国に行ってみるのもありかもしれないね」
「他種族が治める国、ですか……確かに、それは面白そうですね」
「獣人が治める国なんかは、君たちは強いから活動しやすいと思うよ」
獣人が治める国は実力主義なところがあるため、ジェンの言う通りティールたちほどの実力を持っていれば、他種族ではあるが活動しやすい国ではある。
(国外、か……ありだな。でも、そうなると中々帰ってこれなくなりそうだから、また一度実家に帰ろうかな)
いざとなれば長時間、高速で移動し続ける手段はあるが、国を跨げば戻ってくるのに時間が掛かるのは間違いなかった。
「獣人の国、か……元気な奴が多くいそうで、楽しそうなイメージがあるな」
ラストの中で、獣人族と言えば以前共にBランク昇格試験を受けた獅子人族の青年、バゼスの印象が強く残っている。
ちょっとバカで人に迷惑を掛けるところはあるが、ラストからすれば憎めないバカという印象があり、バゼスが持つ戦闘力もBランク昇格試験を受けるのに相応しいものがあると認めていた。
「あっ、でも……ん~~~~~」
「どうかしましたか?」
「……ティール君って、意外と貴族の友達が多いでしょ」
「貴族の友達、ですか? ………………友達は、そこまで多くないというか、思い浮かぶ限り、一人しかいませんが」
記憶を必死で掘り起こすが、友達と言える人物はいなかった。
関係としては師弟の様なものではあるが、ヴァルター・フローグラが個人的に友人と言えなくもない? と思ったティール。
「そうだったのかい? まぁ、知人はいるでしょ」
「そうですね。知人は多少います」
「これまでのティール君の行動を考慮すれば、まず大多数の貴族たちが、ティール君を引き込むことは無理だと思いはすると思うんだ。であれば、自然な流れでティール君はどこで冒険しようとも、どの国に向かおうとも冒険者ギルド以外の組織に属することはないと予想出来る」
「……これから先も、そのつもりでいますが」
「うん、まだほんの少ししか君と話してないけど、その言葉に嘘はないと解る。でもね、大人達は勝手に色々と考えて、色々と予想しちゃうんだ」
「つまり、マスターを他国に奪われるかもしれないことを危惧するようになる、という事か」
「その通りです、ラストさん」
苦笑いを浮かべながら正解だと伝えるジェン。
何故苦笑いを浮かべているかと言うと……ティールがあまりにも嫌そうな顔をしてるからである。
(はは、まぁこういった顔になるよね………………本当に、話通りまだ青年になってない少年とは思えない。ただ、彼はまだ子供……そして、一人の人間だ)
大きな力を持っているからこそ、悪い方向に感情を爆発させてはならない。
ジェンは貸し、恩を売ろうなどといった考えを抜きにし、クランのトップであるマスターに話すだけ話してみようと思った。
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